日経ビジネス電子版Special

大企業の経営層や急成長企業こそが直面する「承認作業疲れ」という病 Sansanが実践したワークフロー改革

「人ベース」ではなく
「タスクベース」で承認権限を設定

 Sansanは、2019年3月にServiceNowのワークフローへの移行を決定した。本山氏による移行提案について、経営層からは異論もなく、スムーズに了承されたという。

 「承認作業が集中し、意思決定のスピードが遅くなりかねない状況は、経営陣らも日ごろから危機感を持っていました。それが抜本的に解決できる方法だったので、むしろ積極的に進めてほしい、と背中を押してもらいました。また、ServiceNowのワークフローは、稟議に必要な機能はすべて実装されているのでとても安心しました。例えば、兼務兼職対応、一斉同報、承認者の追加、一段階差し戻し、通知・連絡など、日本企業特有の複雑な稟議プロセスにも対応できています」と本山氏は語る。

 ServiceNowの開発のしやすさを生かして、Sansanは、申請から承認までのフローが円滑に回りやすくなるような仕組みをいくつも構築した。

 まず大前提としたのは、承認する側を「人」をベースとするのではなく、承認する「内容(タスク)」ベースで基本設計することであった。これは、Sansanのような急成長企業そして大企業にありがちな兼務兼職に対応するためである。

 「成長とともに組織がどんどん大きくなると、どうしても一時的に1人の役員や管理職が複数の部門・部署の長を兼務兼職せざるを得なくなります。これに柔軟に対応するには、人をベースに承認権限を割り振るよりも、タスクベースで割り振るほうが合理的だろうと考えたのです」と本山氏は説明する。

 一つ一つのタスクについては、複数の承認者を割り当てるグループを作り、申請が行われると、その情報がグループ内のすべての承認者に一斉同報される仕組みも作った。グループ内の誰かが承認すれば、決裁が下りる仕組みである。

 「承認者を複数にすれば、業務負荷を分散することができますし、同じタスクでも、申請内容によっては、承認するのにふさわしい人が異なる場合もあります。そこでタスクグループの全員に申請情報を発信し、内容を検討してもらったうえで、適切な人が承認するという仕組みにしました」(本山氏)

 さらに、一つの承認が終わると、それにひもづく次の承認プロセスが自動的に動き出すという流れも作った。例えば、購買契約に関する承認が下りると、その支払いのための承認プロセスが動き出すといった仕組みである。

 「ゆくゆくは、連携できる承認プロセスの流れはすべて自動化して、承認作業の大幅な省力化を図りたいと考えています。結果として、企業の成長スピードを妨げない理想のワークフローが実現するはずです」と本山氏は語る。

Sansanが活用しているServiceNow のワークフロー機能

Sansanが活用している ServiceNow のワークフロー機能

単なる業務効率化のためのツールではなく
成長に欠かせないプラットフォーム

 ServiceNowのワークフローへの移行によって、Sansanは、目に見えるいくつかの業務効率化の成果を得ることもできた。

 一つは、最も利用頻度の高かった申請フローの集約による作業負担の軽減である。

 Sansanは、以前のワークフローで約50種類の申請フローを用意していたが、そのうち最も利用頻度が高かったのは購買申請と、その購買品の契約申請の2つであった。

 「本来なら、一つのフローにまとめてしまってもよいはずですが、それぞれの入力項目数や処理のステップ数が多すぎるため、以前のワークフローでは集約できなかったのです。長年、何とかしたいと思っていましたが、開発しやすいServiceNowのワークフローに移行したおかげで、ようやく一本化することができました」(本山氏)

 その結果、2つ合わせて月間200件以上あった申請件数を、約半分の100件近くまで減らすことができたという。

 また、Sansanでは、経費精算用のワークフローを勘定系のシステムに連携させて会計処理を行っているが、以前のワークフローではデータ交換がスムーズに行われず、経理担当者に余分な負荷がかかっていた。ServiceNowのワークフローに移行してからはデータがスムーズに流れるようになり、担当者の負担が大きく軽減された。

 ちなみにSansanは、ワークフローのほかに、ServiceNowのITSM(ITサービスマネジメント)も利用している。ユニークなのは、社内SNS上に設けたIT関連の問い合わせ窓口とITSMとを連携させている点だ。問い合わせ窓口に「システムの不具合をチェックしてほしい」などといった書き込みがあると、その情報がすぐさまITSMに送られ、問い合わせ対応のためのチケットが起票されるという仕組みを構築した。

 本山氏は、「ワークフローについても、同じような自動化の仕組みを積極的に採り入れて、承認作業の軽減や、スムーズな業務処理の流れを実現していきたいと考えています」と語る。

 Sansanのような急成長企業や事業拡大をする大企業にとって、承認作業の省力化、迅速化は、さらなる成長を実現するために欠かせない重要な要素の一つだ。

 本山氏は、「その意味でServiceNowのワークフローは、単なる業務効率化のためのツールではなく、ビジネスを回し、成長を続けるために欠かせないプラットフォームだといえます。今後は、蓄積される利用状況の分析によって使い勝手をさらに高め、よりよくプロセスが回るような環境を整えていきたいですね」と語った。