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建設業のデジタル化は次のステージへ 変革する文化をつくる大林組のDX

月間4500件の電話問い合わせで
パンク寸前のサポートデスク

五十嵐氏
株式会社オーク情報システム
ICT事業第二部
コールセンターサービス部 部長
五十嵐治世
1982年、大林組入社。現在のデジタル推進室の前身となる電子計算センターに配属。工事請負に係る情報共有サービスOC-COMET、電子調達のための総合調達システムの開発・運用などを担当。運用では大林組ECサポートセンターの設立に関与、現状に至る。2019年4月よりオーク情報システムに出向(現職)。

 大林組がサポートデスク業務の変革を目指したのは2018年5月のことである。

 いち早く業務のデジタル化を推し進めていた大林組では、社内で使用されるシステムの数も年々増え続けていた。「システム数は300以上にも上り、その数の増加とともに、社内外のユーザーからの問い合わせ件数も膨大になっていました」と振り返るのは、サポートデスクを担当する大林グループの情報システム会社 オーク情報システムの五十嵐治世氏である。

 サポートデスクに寄せられる問い合わせは月間約6000件。しかも、その約4分の3に当たる約4500件は電話によるもので、人員の限られたサポートデスクによる対応はパンク寸前だったという。

 「メールやWebフォームでも問い合わせができるようになっていたのですが、どうしてもすぐにかけやすい電話が中心になっていました。しかも、時間帯によってはアクセスが集中して、待たせてしまうことが大きな課題でした」(五十嵐氏)

 当時は、システム関連の問い合わせ、タブレット端末や携帯電話に関する問い合わせ、その他の問い合わせと、サポート窓口が3つに分散しており、電話番号やメールアドレスもバラバラであった。ユーザーは、問い合わせ内容に応じて問い合わせ先を意識しなければならず、間違って別の窓口に問い合わせた場合は、問い合わせし直す必要があった。

 さらに、問い合わせへの回答が保留となった場合、その後、どこまで確認作業が進んでいるのか把握できないことも大きな課題であった。問い合わせたユーザーだけでなく、受けたサポートデスク側も進捗状況の把握に時間がかかることも珍しくなかった。

 五十嵐氏は、「すでに日本の大手企業がServiceNowのIT Service Managementを導入してサポートデスク業務を改善した事例を紹介され、これなら当社の課題解決にも役立つはず、と心強く感じました」と語る。

IT Service Management導入後のサポートデスク

IT Service Management導入後のサポートデスク
3つあった問い合わせ窓口を、1つの専用ポータルに集約。専用ポータル経由の問い合わせでは、まずFAQがナレッジとして表示されるようにした。

約8割の問い合わせを
自己解決できる体制を構築

 ServiceNowのIT Service Managementは、電話中心のサポートデスクサービスを根底から変えることが期待できるソリューションだ。ユーザーはネット検索をするように、問い合わせ内容を専用ポータルから入力するだけ。入力内容に応じて、その答えに近いと思われるFAQの回答がナレッジとして一覧表示され、求めている答えがヒットすれば、その場で自己解決することができる。

 「求める答えが得られなければ、専用ポータルのWebフォーム(以下、Webフォーム)に問い合わせ内容を入力して、オペレーターからの回答を待つことになりますが、問い合わせのための確認作業がどこまで進んでいるのかということも画面上で逐一確認できるので、待たされているというストレスを感じることもありません」(堀内氏)

 また、電話が集中する時間帯にはつながりにくくなるが、Webフォームによる問い合わせなら、時間帯を問わずいつでも受け付けることができる。

 大林組は、このIT Service Managementを使って、緊急を要する問い合わせ以外はWebフォームによる問い合わせにシフトすることにした。FAQも集約し、300以上あるシステムのうち、とくに問い合わせの多い50ほどのシステムに絞って1500件ほどのナレッジを作成。これによって、問い合わせの約8割の自己解決を目標とする体制を整えた。

 一方、3つあった電話の窓口を1つの電話番号に集約することも進め、「窓口が多くて、どこに連絡したらいいのか分からない」というユーザーの声に対応していく。

 堀内氏は、IT Service Managementについて「ゼロから開発することなく、あらかじめ用意されている機能の設定を変更する、いわゆるノーコード開発により理想の流れ(プロセス)を簡単に構築できるのが非常に便利だと感じました」と評価する。

 開発を始めた当時は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークによる作業を余儀なくされたが、20年7月には要件定義から設計・修正・データ移行などを完了。テスト運用期間を経て本稼働した。