日経ビジネス電子版 Special

建設業のデジタル化は次のステージへ 変革する文化をつくる大林組のDX

業務効率向上と負担軽減の実現で
サポートサービスの質が向上する

 この他にも大林組は、IT Service Managementで構築したサポートデスクの専用ポータルに、社内の主要なシステムの稼働状況が一覧できる仕組みも取り入れた。正常に稼働しているシステムには「青信号」、メンテナンス中や不具合が生じているシステムには「赤信号」がともるという仕組みである。

 システムが正常に作動しないとき、ユーザーは専用ポータルでこの一覧を見れば、システムごとの状況を確認できる。「赤信号」が表示されてシステムそのものが動いていないことが分かれば、「メンテナンス中かもしれない」ということで問い合わせの件数は減る。「青信号」であっても、「自分の操作方法に誤りがあるのかもしれない」ということで、まずはナレッジを確認する。この二段構えによって、Webフォームによる問い合わせの件数は大きく減るはずだ。

 「まだ導入して数カ月で、社内周知が行き届いていないこともあり効果が徐々に出始めている段階ですが、電話による問い合わせが減少傾向にあるのは確かです。かといって、Webフォームによる問い合わせが劇的に増えているわけでもないので、システム稼働状況の信号表示やナレッジによって『自己解決』できているケースが増えていると推測しています」と堀内氏は語る。

 今後の目標としては、かつては月間約6000件の問い合わせのうち、4500件もあった電話による問い合わせを1000件前後にまで減らし、自己解決を約2000件、残りはWebフォームによる問い合わせを約3000件のバランスにしていきたいという。

五十嵐氏

 また、オペレーター側のメリットとしては、「インシデントへの対応記録から、そのままナレッジが作成できるのがIT Service Managementの非常に便利な点です」と五十嵐氏は評価する。これによって自己解決できるインシデントが増えれば、ユーザーの業務効率が上がるだけでなく、問い合わせに対応するオペレーター側の負荷も軽減する。その分、他の問い合わせへの対応に費やす時間が増えるので、サポートサービスの質が向上するという好循環が生まれるのである。

 五十嵐氏は、「IT Service Managementにはサポート業務の報告書に必要な各種の分析レポートを自動作成する機能もあるので、今後はそれを活用しながらサービスの質をもっと高めていきたいですね」と語る。また、現在は別の電話システムの管理機能により問い合わせ対応状況をモニター画面に表示しているが、ServiceNowでは電話やWebフォームによる問い合わせ手段にかかわらず同様にインシデント管理でき、3つのサポートデスクの対応状況を一元管理できることから、「いずれは一元化した問い合わせ状況をダッシュボードに見える化することで、問い合わせの多いサポートデスクの負荷分散も実現したい」(五十嵐氏)と、将来的な展望も見据えている。

IT Service Management導入による数値目標

IT Service Management導入による数値目標
ServiceNow導入後の目標としては、電話による問い合わせを月間約1000件に減らし、ナレッジによる自己解決、Webフォームによる問い合わせ件数を増やすことを目指している。

ServiceNowの特性を生かして
さらなる進化を目指す大林組

堀内氏

 大林組は、サポートデスク業務の他にも、ServiceNowのプラットフォームと連携して社内のITサービスを改善する計画を進めている。すでに動き出しているのが、ユーザーが使用するパソコンやタブレット端末、携帯電話などの調達申請手続きへの対応だ。

 堀内氏は、「すでに社内で開発したシステムがありますが、機能追加・仕様変更などに時間を要していることからServiceNowへの置き換えを検討しています」と説明する。

 さらに、システムやサーバーの構成管理データベース(CMDB)や、ITプロジェクトの進捗状況の管理システムについても、ServiceNowにリプレースする計画だ。

 その理由について、堀内氏は「使い勝手の良さに加え、1つのプラットフォーム上ですべてのシステムのデータやプロセスがシームレスに連携することにメリットを感じているからです」と語る。

 例えば、サポートデスクではIT Service ManagementにCMDB内の情報を活用すれば、メンテナンス中のシステムや不具合が生じているシステムの情報を、そのままサポートデスクの専用ポータル上に「青信号」「赤信号」などで表示することができる。

 「現在は、システム稼働状況を手作業でCMDBに登録し、信号を表示させていますが、ServiceNowのCMDBに連携して自動表示させるように準備を進めています」(堀内氏)

 堀内氏が、1つのプラットフォームですべてのプロセスが完結する仕組みの魅力を実感したのは、ServiceNowの本社がある米サンタクララのExecutive Briefing Centerに招待され、実際に体験する機会があったからだという。

 「ServiceNowは、既存の複数プラットフォームを束ね、1つのプラットフォーム上で業務プロセスをエンド・トゥ・エンドで完結させる『Platform of Platforms』という考え方を提唱しています。当社のITサービスも、ゆくゆくはそうした統合性を持ったサービスを目指していきたいですね」と語る。

 その上で、「ヘルプデスクサービスの運用が始まったばかりですが、当面はその機能を十分に使いこなし、既存のプロセスを根本から変えていくことに力を注ぎます。ServiceNowには、これからもより効果的な使い方のアドバイスをお願いしたいですね」と堀内氏は期待を込めて語った。

IT Service Management 従業員が作業している場所にとらわれることなく生産性を高め、新たな体験を提供します。
イメージ