
下田氏が室長を務める三井物産 デジタル総合戦略部 ユーザーエクスペリエンス改革室は、連結対象も含めて従業員数が約4万人に上る三井物産グループのうち、約1万6000人の従業員向けにITサービスを提供している。
パソコンやスマートフォンといった端末の他、業務に使用する各種アプリケーションも提供。様々なソリューションの中から、利用しやすく、生産性向上に結びつくと思われるものを、製品・サービスのトレンド調査やPoC(概念実証)に基づいて同室が選定している。
一方で、提供したサービスを効率よく使用してもらうため、ユーザーエクスペリエンス改革室は、使い方に関する研修や情報発信といった従業員サポートも行っている。
主なシステムやアプリケーションの操作方法についてはFAQを整備し、イントラネット上に各種マニュアルもアップロードして、使い方に困ったときには従業員がいつでも確認できる環境を整えてきた。「室名の通り『ユーザーエクスペリエンス改革』という使命に沿って、煩わしい製品・サービスの操作から従業員を解放するあらゆるサポートを提供しています」と下田氏は語る。
しかし、そうした取り組みの中でも、いくつかの課題があった。その一つが「情報の検索性」に関する課題である。
ユーザーエクスペリエンス改革室の努力によって、従業員が使用するサービスのマニュアルの大半はイントラネット上にアップされたが、それぞれがばらばらに保管されているので、従業員は、欲しい情報がどこにあるのかを探すだけでひと苦労していた。
「あちこち探したけれど結局見つからず、仕方がないのでサポートデスクに電話やメールで問い合わせをするといったことが日常化していました。探すだけでもかなりの時間の無駄ですし、最終的にサポートデスクに頼らざるを得ないとなると、サポートする側の負担も大きくなります。サポートデスクへの問い合わせ件数は多いときで月1万件を超え、ユーザー側とサポート側の両面において、効率化のための仕組みが求められていました」と下田氏は振り返る。
そこで下田氏は、すべてのサービスのマニュアルが検索できる「従業員ポータル」の構築を発案。その基盤として採用したのが、ServiceNowのIT Service Managementだった。
ServiceNowのIT Service Managementは、文字通り、従業員へのITサービスを効率化するためのソリューションだ。従業員からの問い合わせや、各種申請、トラブルへの対応依頼などを一元的に受け付け、サービスを提供できるのが大きな特徴である。
同様のソリューションは他にもあるが、ユーザーエクスペリエンス改革室がServiceNowのIT Service Managementを選んだのは、グローバルで広く利用されており、信頼性が高いことが決め手の一つであった。
「実は、当社の米国法人が以前からServiceNowのIT Service Managementを利用しており、非常に使い勝手の良いサービスであるということは聞いていました。しかも、三井物産はグローバルに事業拠点を展開しており、当室がITサービスを提供する従業員も世界中にいるので、グローバルスタンダードなソリューションを選んだほうが良いと判断したのです」と、下田氏は選定の経緯について振り返る。
20年初めに導入を本格検討し、そこから半年ほどPoCを実施してIT Service Managementの機能や使い勝手などを検証した。「実際に使ってみると、話に聞いていた以上にUI/UXが優れており、FAQや情報検索、問い合わせなどの機能がすべてワンポータルに集約されるので、使い勝手も非常に良いことが分かりました。そこで、PoC終了とほぼ同時に導入を決定。3カ月ほどの構築期間を経て、21年4月にIT Service Managementをベースとする従業員ポータルを開設しました」(下田氏)。
完成した従業員ポータルのホームページが下の写真である。「何かお困りですか?」というタイトルの下に検索窓を設け、ここに知りたい内容を入力すれば、その結果がネット検索と同じように一覧表示される。
また検索窓の下には、左から「FAQを見る」「申請をする」「パスワードリセット」「問い合わせをする」という頻度の高いアクションに対応する4つのボタンを設けた。従業員の手間をなるべく減らし、必要な情報やサービスにすぐにアクセスできるようにするためだ。
下田氏は、「『効率化』というテーマを徹底追求して、ページのデザインにはかなりこだわりました。おかげで、非常に分かりやすく、シンプルなデザインに仕上がったのではないかと思います」と語る。