
TSSの新しいシステム運用プラットフォームの検討には、およそ1年を要した。サービス選定に際しては、同社の機能要件を満たし、ITサービスマネジメントツールにおいて、世界的シェアや導入実績、提供機能の豊富さ、将来の拡張性に優れているものを選んでいった。
ポイントとなったのは、国際的に信頼できるサービスであることだ。グローバルにサービスを展開する同社にとっては、不可欠の条件だった。多数のサービスの中から、まずオンプレミスも含めた5つのサービスに絞り、そこから各ベンダーの提案も受けながらコストと機能を含めて詳細に検討を進めた結果、ServiceNowのCustomer Service Managementを選定した。ServiceNowに決めた理由について、海老原氏は、次のように語る。
「当時はまだ、国内企業でServiceNowの利用がそれほど多くなかったと思いますが、グローバルでの実績や調査会社の評価、将来の拡張性を基準に選びました。私が一番良いと思ったのは、製品としての思想がしっかりしているところです。他のソリューションは、特定の機能に特化しているものが多いのですが、ServiceNowはカバレッジが非常に広く、従業員の業務をすべて変えていくという考えに立ったプラットフォームであるところが魅力です。お客様に提供する際には、様々な要望が入りますが、それに対して柔軟に応えることができると思いました」
北村氏も、「当社のマネージドサービスにどう付加価値を付けていくのかを検討しています。ServiceNowのプラットフォームのコンセプトであれば、TSSがこれまで提供してきた運用ナレッジを取り入れて、新しいサービスを開発することができるのではと感じました」と話す。
Customer Service Managementの導入に際しては、先行して社内のITのサポートに利用するところから始めた。顧客に提供する前に、グループ内で本番環境を試すべきだと考えたのだ。
TISインテックグループは多くの企業の集合体で、グループの従業員数は約2万人に達する。そのため、業務システムも各社で異なる部分がある。また、ここ数年、グループ内で共通で利用しているクラウドサービスも多い。合計すると40近くあるシステムの使い方の問い合わせが、グループの運用部門であるTSSには寄せられており、対応に追われるようになっていた。その問い合わせ窓口を、Customer Service Managementのポータルに集約した。
この効果はすぐに表れた。社内ポータルは21年2月に稼働したが、それまでTSSにはシステムに関する電話とメールの問い合わせが月平均500件ほど来ていた。それが3月以降は、電話、メールの問い合わせが明らかに減っているという。
「導入前後の3カ月間の件数を見ていると、70%は減っています。その分、Customer Service Managementのほうに問い合わせがシフトしていることになりますが、問い合わせをナレッジとして登録していけば、ユーザーがそれを見てセルフサービスで解決できるケースが増えます。最終的に、問い合わせの件数自体を減らしていくという本来の目的に向けて動き始めたと言えます」(海老原氏)
海老原氏は、サービスポータルが稼働しても、すべての問い合わせをポータルで受けようとは思っていない。「従来のサポートのレベルを落としてはいけないので、電話でなければ聞けないことは、引き続き電話で受け付けます。簡単な質問は、オンラインでナレッジを参照すれば解決できるようになれば、電話対応の余力も生まれ、難しい案件にはより親身なサポートができるようになると思います」と話す。
サポートの自動化やセルフサービス化と、人の手を必要とするサポートのレベルを両方とも引き上げていくのが、海老原氏の狙いである。
現在、サポートポータルは社内ネットワークからのみアクセスが可能だが、今後は、スマートフォンなどモバイル機器からのアクセスにも対応する予定だ。また、ナレッジが蓄積されることで、AIが問い合わせ内容を分析し、チャットボットで自動的に解答を生成するなど、Customer Service Managementの機能を生かしたポータルの進化も進めていく考えである。
「Customer Service Managementには、質問をフォームに入れ始めると、それに関係する過去の問い合わせやFAQの一覧がプルダウンで出てくる機能があります。利用が進めばその一覧の中身を見るだけで、問い合わせたかったことがその場で解決する場合もあると思います。利用者は問い合わせがしたいわけではないので、少しでも業務を止めずに問題が解決できるこうした機能はぜひ活用していきたいと思います」(海老原氏)