
グループ内のCustomer Service Managementの展開と並行して、一部の顧客企業へのサービスデスク機能の提供を開始した。最初の顧客は、TISが提供するサービスの利用企業で、サービスの問い合わせ対応窓口として顧客ポータルを新規に設定し、提供を始めた。
こうした社内、社外への導入実績を経て、21年4月、MSCCでServiceNowをお客様のインターフェイスとなるポータルに採用。監視や自動化などの各種運用機能と結合させ、運用のベストプラクティスをパッケージ化し、顧客への提供を開始した。まだ発表から間もないが、同社にはすでに多数の問い合わせが来ているという。
「お客様から、クラウドによる運用ポータルの提供への関心が高いことが分かりました。自社の社内問い合わせにおいて、メールや電話でのやり取りに苦労をされている企業が多いと推察しています。そうした機能をクラウドで実現するベストプラクティスと言えるServiceNowが登場して、切り替えたいと考える企業が多いのだと思います」(海老原氏)
TIS自身がServiceNowのユーザーとして社内ポータルを立ち上げ、成果を出していることは、同社の顧客企業でServiceNowを利用したいと考える企業にとっても心強いパートナーとして映る。そのことが知られてきたことで、ServiceNowの導入支援を依頼されることも増えつつあるという。
「人が対応しなくてもいい問い合わせ対応は、システムに任せていき、本来するべきプロフェッショナルなサポートに集中すべきだと考えています。お客様にとっても、簡単な問題は、わざわざ問い合わせなくても答えが分かるほうが早く、お客様の本来の業務に専念できます」(海老原氏)
TISの北村氏が所属する事業部門では、顧客企業から個別の開発案件を受注し、クラウド上に構築して提供している。また企業のSOC(セキュリティオペレーションセンター)の構築など、セキュリティ関連のシステム開発と運用も行っている。
これまでは顧客ごとに、別々の開発体制を取っていた。そのため、共通する開発要素があってもそれぞれで構築しており、業務の効率を上げることが難しかった。そして、サービスが稼働してからは顧客企業ごとに専用のサポート窓口を設けて、専任の担当者を付けているケースが多かった。
北村氏はこの状態を変えたいと考えている。「個別最適の開発と運用の体制はできるだけ共通化・標準化したいと思っています。当社の中期経営計画にも掲げられている事業戦略に沿う形で、『TISインテックグループとして持っている開発、クラウド運用、セキュリティのノウハウ』を先進技術をもって1つに集約し、『顧客の期待を先回りできる運用サービスをスピーディに提供する』というコンセプトでサービス開発を始めています。ServiceNowはその情報とノウハウを持ち寄るプラットフォームと捉えており、本格的な取り組みを加速させているところです」。
その際、TSSが持つ運用ノウハウは、強力なアドバンテージになる。
「プラットフォームが共通化できることで、これまで当社が個別に提供してきたサービスの運用を大きく効率化できると考えています。例えば、お客様がシステム情報を当社のプラットフォームに上げておくだけで最新の脆弱性情報と突合して自動でパッチを当ててくれるし、そのステータスも管理できれば、手作業に頼っていた労働集約な運用から顧客も運用者も解放されますよね」(北村氏)
さらに、北村氏はサービス企画の立場として、スピード感が重要だと考えている。
「従来、顧客のシステム開発では運用工程も含めウォーターフォール型で行ってきましたが、要件をまとめて開発に取りかかるまでに時間がかかりすぎます。その間にお客様の事業環境が変わってしまい、システムができた頃には顧客ニーズとアンマッチな部分が出てしまうことはあり得ます。ServiceNowは、プログラミング不要で業務プロセスを構築する仕組みを持っているので、その点でも期待しています」。
また、同社ではこれまで案件ごとにサービスを作り込むことに力を注いできたことで、事業部間のつながりが希薄だったという。ServiceNowは、そこに横串を刺すことができると北村氏は期待する。「部署ごとにとどまっていた知恵をプラットフォームに吸い上げることで、組織の壁を壊し、企業文化も変えていくことができると考えています」
SIerとしてより付加価値の高いサービス、サポートを提供できなければ、生き残ることができない。そのためには、可能な限り自動化、効率化を進めると同時に、グループのノウハウを集約して戦わなければいけない。ServiceNowによるTISインテックグループのプラットフォーム改革は、顧客企業のDXを支援するために、自社がまず変わるという決意を込めた、攻めの戦略なのである。