日経ビジネス電子版 Special

従業員体験の改革がもたらした真の価値 ニューノーマル時代に対応したNTTデータの新しい働き方

使い勝手を改善して
従業員のストレスを減らしていく

 2020年初めに新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、多くの企業がリモートワークへの移行を余儀なくされた。

 もちろん、NTTデータも例外ではなかった。20年4月に最初の緊急事態宣言が発出されると、同社は速やかにリモートワークへの移行を推進。浦野氏は「すでにコロナ前から、在宅勤務のための制度やインフラは整っていたので、比較的スムーズに移行することができました」と振り返る。現在でも出社率は2~3割程度にとどまっており、約1万人に上る従業員の大半はリモートで業務を行っているという。

 仕事柄、営業やエンジニアたちは顧客企業との打ち合わせを頻繁に行っているが、訪問のための移動が不要になり、むしろ時間が有効に使えるようになった。ニューノーマルな「働き方」に速やかに対応したことで、「むしろ働き方改革が加速した」と浦野氏は評価する。

 出社をしないと、上司から部下への社内情報の伝達や、人事関連、総務関連の申請などができない企業もあるが、NTTデータはこれらについても、かなり以前からオンラインで行える環境が整っていた。

 従業員は、社内各組織のポータルサイトにアクセスすれば、必要な情報を入手したり、申請を行ったりすることができる。これも、比較的速やかにリモートワークが進んだ理由の一つであったようだ。

 しかし、この「社内ポータル」の使い勝手に関しては、必ずしも従業員の評判は高くなかったようだ。「欲しい情報が社内で分散しているため、どこにあるのかを探すのに時間がかかり、申請内容によってアクセスする窓口がばらばらになっていることなどが、ストレスの原因になっているようです」と浦野氏は語る。

 また、従来の「社内ポータル」はテキストを中心に構成されており、UI(ユーザーインターフェイス)が洗練されていないことや、パソコン画面を前提とした設計のため、UX(ユーザーエクスペリエンス)が不十分であることなども課題であった。

 「日常生活において、私たちはECサイトをはじめとするコンシューマー向けの洗練されたUI/UXになじんでいるので、昔ながらの社内ポータルでは使いづらく感じます。従業員の余分なストレスを減らし、業務に専念できる環境を整える、最終的にエンゲージメント向上につなげるためには、もっとEXを考慮した社内ポータルに刷新する必要があるのではないかと考えました」(浦野氏)

海外での成功事例が多い
ServiceNowを選定

 浦野氏はかつて、小売業の顧客企業向けにECサイトなどを構築する部門に所属していた。その経験から消費者向けサービスにおけるカスタマージャーニーの設計、CX(顧客体験)の重要性は十分に理解しており、同じように、社内サービスでもEXを徹底追求することが必要だと考えた。

 「スマートフォンさえあれば、いつでも、どこでも、直感的な操作で欲しい情報を簡単に入手し、申請や承認ができる。そんな利便性を社内ポータルでも実現したいと考えて、『EXポータル』を立ち上げることにしたのです」(浦野氏)

 この「EXポータル」の運用基盤として、NTTデータが採用したのがServiceNowのHR Service Deliveryであった。

 NTTデータは以前から、ServiceNowのソリューションを顧客企業に提供していた。21年1月には、より広範囲なビジネス課題の解決に活用してもらうため、同社内に「ServiceNowビジネス推進室」も設置している。

 そのServiceNowビジネス推進室のアドバイスも得て、海外でEX向上の成功事例が多いHR Service Deliveryを採用することにしたのである。

我妻 氏
株式会社NTTデータ
C&S事業本部
データセンタ&クラウドサービス事業部
ServiceNowビジネス推進室
我妻 智之
NTTデータにて、金融系のシステム開発やソフトウェア技術の開発、IT運用管理の高度化コンサル、クラウドソリューションの展開などを務め、ServiceNowの導入およびコンサルティングに従事する。2021年にServiceNowビジネス推進室を立ち上げ、現職に至る。

 ServiceNowビジネス推進室長の我妻智之氏は、「ServiceNowと言うと、一般的にはITサービスマネジメントをはじめとするIT関連の業務プラットフォームと思われがちですが、じつは人事サービスやカスタマーサービスなど、様々な用途の製品・ソリューションが用意されています。それをお客様にもっと知っていただくため、まずは社内のEX変革で成功例を作ってみようということになったのです」と振り返る。

 ServiceNowの大きな特徴は、社内各部門のシステムやデータベースに散在している情報を1つのプラットフォームで一元化できる点にある。

 この仕組みを使えば、ポータルサイトの検索窓に欲しい情報のタイトルなどを入力するだけで、その情報が格納されているシステムやデータベースから、簡単に情報を呼び出すことができるのだ。

 また、各種申請や承認も、人事関連、総務関連といったように別々のシステムにアクセスする必要がなくなり、単一のポータル上で処理できるようになる。検索エンジンで情報を調べたり、ECサイトで注文を出したりするのと同じように、コンシューマーライズされたエクスペリエンスが実現する。

 浦野氏は、「最も理想に近いEXを速やかに実現できるのはServiceNowのHR Service Deliveryだと確信して導入を決定しました」と振り返る。