日経ビジネス電子版 Special

従業員体験の改革がもたらした真の価値 ニューノーマル時代に対応したNTTデータの新しい働き方

わずか2カ月でベータ版を構築
ユーザーの声を反映して改善を図る

 こうしてNTTデータは21年6月にHR Service Deliveryを導入。まずはその基本機能を理解し、8月からHR Service Deliveryを基盤とする「EXポータル」の構築を開始した。

 開発はServiceNowビジネス推進室が担当したが、「まだHR Service Deliveryの国内導入事例は少なかったので、海外事例を研究し、パートナー企業の支援も受けながら、手探りで開発を進めました。この経験は、今後当社がお客様企業のHR Service Delivery導入を支援する際に役立つのではないかと思っています」と我妻氏は語る。

 ServiceNowのソリューションは、ローコード/ノーコードでシステムを構築できるのも大きな特徴である。そのためアジャイル開発に適しており、比較的短期間でリリースできるのも大きなメリットだ。実際、NTTデータの場合、開発開始からわずか2カ月ほどで「EXポータル」のベータ版をリリースすることができた。

 現在も開発は継続中だが、我妻氏は「ひとまず先行ユーザーにベータ版を使ってもらい、その感想を基に機能や使い勝手をブラッシュアップさせています。アジャイル開発に適した設計になっているので、修正も簡単です。EX向上が最大の目的のため、ユーザーの要望をできる限り反映しながら、理想的なプラットフォームに仕上げていきたい」と語る。

 目先の目標は、社内のあらゆるサイトや、あらゆるデータにダイレクトでアクセスできる環境だ。従業員ごとの所属や属性に応じて、パーソナライズされた情報がEXポータル上に表示される仕組みも検討している。

 また、管理部門の情報だけでなく、従業員がそれぞれの業務に必要な情報を簡単に呼び出し、業務で使用するシステムにもすぐにアクセスできる機能も盛り込む予定である。これも、社内のあらゆるシステムやデータベースを1つのプラットフォーム上で一元化できるServiceNowのメリットだ。

 浦野氏は、「業務効率化を促したいという思いはもちろんありますが、利用する従業員には、システムとデータの一元化や、優れたUI/UXによって、『働き方』がこんなにも変わるのかということを実感してもらいたい。エクスペリエンスの重要性を肌で感じることが、お客様企業に新しい『働き方』を提案する上でも貴重な体験になると考えているからです」と語る。

 小売業のCX向上を支援してきた浦野氏は、「カスタマージャーニーの最適化が顧客のエクスペリエンスを高めるように、『EXポータル』でも“従業員ジャーニー”の最適化を追求していきたい」という理想を掲げている。

NTTdata EX Portal
NTTデータの社内ポータル「EXポータル」のトップ画面。欲しい情報に関するキーワードを検索窓に入力すると、簡単にアクセスできる。
※開発中の画面のため、実際の画面と異なる場合がございます。

新型コロナワクチンの
予約管理システムも開発

石田 氏
株式会社NTTデータ
コーポレート統括本部 人事本部
人事統括部 健康推進室
課長
石田 征大
日本電信電話、NTTデータ等において人事・監査業務等に従事した後、2018年より人事本部 人事統括部 健康推進室にて、新型コロナ対策本部、グループ健康経営施策運営などを実施。

 この他NTTデータは、新型コロナワクチンの職域接種の実施に当たって、ServiceNowの「Vaccine Administration Management」をベースとする予約管理システムを開発した。

 専用ポータルサイト上に表示されたカレンダーの中から、日時を選ぶだけで予約が完了する仕組みだ。予約した従業員のメールアドレスにはQRコードが送られ、職域接種会場でそれを提示すればワクチン接種が受けられる。職域接種会場でも、QRコードを読み取るだけで受付が完了するので、効率よく処理を行うことができた。

 「グループ従業員および、同じプロジェクトで働く協力会社従業員も含め約8千人という接種規模、ワクチン廃棄防止の観点から、予約枠・会場受付・接種実績等のオペレーションをシステムにより管理することが必須でした。職域接種の実施を決定してから予約受付開始までの時間があまりにも短かったので、必須機能を具備でき短期間で開発できるシステムをいくつか検討し、ServiceNowを選定したのです」と語るのは、要件定義などを行ったNTTデータ人事本部 人事統括部 健康推進室の石田征大氏である。

岡野 氏
株式会社NTTデータ
コーポレート統括本部 人事本部
人事統括部 健康推進室
主任
岡野 竜児
NTTデータマネジメントサービス、NTTビジネスアソシエ等において福利厚生・健康経営施策の展開に従事した後、2020年にNTTデータマネジメントサービスからNTTデータに出向。人事本部 人事統括部 健康推進室にて、コロナ禍・リモート下における社員健康支援についての施策運営、職域接種の対応などを実施。

 NTTデータは、ServiceNowの「Vaccine Administration Management」をベースに、職域接種用に開発。わずか2週間ほどでリリースすることができた。健康推進室が定義した要件を基にServiceNowビジネス推進室が開発を行い、内製化できたことも短納期に結びついたようだ。

 ちなみに、この予約管理システムには、従業員があらかじめ「キャンセル待ち」を登録しておくと、キャンセルが出たときに自動で通知メールが届く機能もカスタマイズで搭載している。

 「リアルタイムで予約・接種状況管理ができたおかげで、キャンセルが出たとしてもすぐに空きを埋めることができ、ワクチンを廃棄することなく進められました。機能の追加がしやすいServiceNowのシステムだからこそ、柔軟な対応が実現したのだと思います」と語るのは、同社人事本部 人事統括部 健康推進室の岡野竜児氏である。

 NTTデータは、今後もServiceNowの様々なソリューションを社内で積極的に活用し、その知見や経験を基に、自社のみならず、顧客企業の「働き方改革」などを支援していきたい考えだ。

 浦野氏は、「『EXポータル』の完成度を高め、社内の従業員エクスペリエンスをできる限り向上させていきます。ServiceNowは企業に変革をもたらすプラットフォームなので、まずは社内でその機能を使いこなし、お客様に同様の価値を提供することで日本全体の変革を促せればと思います」と期待を寄せた。