
第一生命では、以前からオンプレミスのグループウエアを活用してきた。
同基盤上には、メインフレーム上のお客さまや契約に関連するデータやプロセスに様々なデータベースを構築し、それらを管理・閲覧・処理するためのEUC(End User Computing:基幹業務系システム以外のシステム群)も次々と基盤上に搭載した。その数は年を追うごとに増え、現在では約4000ものシステム、50000近いデータベースが稼働している。
「保険契約は20~30年と長期にわたることが多く、お客さまも増え続けているので、結果的にデータベース群や、それを処理するシステム群もどんどん膨らんでしまうのです」と吉留氏は説明する。
システム群やデータベース群の増大は、ビジネスの成長の証しとも言える。だが、これらが増え続けることで、社員の業務効率が下がってしまうというジレンマも顕在化した。
「それぞれのシステムやデータベースが十分に連携されておらず、横断的なプロセスの管理やデータの活用が不十分でした。また、4000もシステムがあると、見たい情報がどこにあるのかを探すだけでもひと苦労でした」と語るのは、第一生命のシステム開発や運用・保守などを受託する第一生命情報システム(DLS)で、クラウドサービス推進部 クラウドサービスソリューショングループ長を務める千葉和貴氏である。
これまでは、業務ごとにポータル画面やTo Doリストを用意するなど、個別最適となっているケースもあったが、IT運用管理課 アシスタントマネジャーの宮崎元輝氏は、「情報ごとやシステムごとに別々のウィンドウを開かなければならなかったのも非効率でした。単一のウィンドウやポータルから、あらゆる情報にアクセスできる仕組みにならないかと考えたことが、グループウエア刷新プロジェクトが動き出す大きなきっかけの一つです。そうなれば、ユーザーが自身で情報を探すのではなく、1つのデータベースに蓄積されたデータをシステムがユーザーに対してpush型で提供する、自身のすべき仕事が1つのUI(ユーザーインターフェイス)で把握ができます」と振り返る。
また、従来のグループウエアはオンプレミス上に構築されたシステムのため、拡張性に乏しいことも大きな課題であった。吉留氏は、「システムやデータベースが今後も増え続ければ、その都度、多額のお金と時間をかけてハードウエアを拡充していかなければならなくなります。ビジネスニーズの変化に応じてタイムリーかつ柔軟に拡張できるクラウドベースのグループウエアに刷新すべきではないかと考えました」と説明する。
第一生命がグループウエアの刷新を検討したもう一つの理由は、社員がいつでも、どこでも業務に必要な情報にアクセスできる環境を整えたいというものだった。
同社は以前から、希望する社員にOA環境を提供していたが、国を挙げての「働き方改革」の流れを受け、本格的なテレワークのための環境整備にも着手し、18年から20年にかけて、テレワーク利用を前提とした小型のノートパソコンやスマートフォンを、原則全社員に展開してきた。ところが、従来のグループウエアはスマートフォンには対応しておらず、これではせっかく配布したスマートフォンの利便性が生かせない。そこで、新たに導入するグループウエアは、パソコンだけでなく、スマートフォンでも利用できるものにしたいと考えた。
これらの条件をすべて満たすグループウエアの基盤として、第一生命が選んだのがServiceNowの「Now Platform」であった。
「Now Platform」の最大の特徴は、既存のシステム群やデータベース群を一元化し、全社共有されたデータを基に、複数の部署間やチーム間にまたがる業務プロセスをエンドツーエンドで処理できる点にある。
この特徴を生かせば、グループウエア上で構築したシステムやデータベースだけでなく、基幹系をはじめとする社内のあらゆるシステムとの連携が可能となり、情報へのアクセスと処理の利便性が格段に向上する。グループウエアのトップ画面を開き、検索窓に探したい情報のタイトルを入力するだけで、すぐさま該当情報のリストが一覧表示されるからだ。
しかも、「Now Platform」は優れたUI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザー体験)を実現する機能を備えており、画面デザインやメニュー配置の工夫によって、欲しい情報にたどり着きやすくすることもできる。スマートフォンやタブレット端末など、様々なデバイスでの使用が可能であり、ユーザーのあらゆるニーズに応えるServiceNowの利便性の高さも魅力であったという。
宮崎氏は、「以前から社内のITサービス管理業務にServiceNowのプラットフォームをSaaSとして使用しており、使い勝手の良さについては高く評価していました。そこで改めてPoC(概念実証)を行い、難易度が高いアプリケーションも技術的に実現ができるか、投資に見合う効果が十分に得られるかどうかを検証した上で導入を決定したのです」と説明する。
こうして20年4月、「DNOW」と命名されたグループウエア刷新プロジェクトは正式に始動した。