DeNAと言えば、2006年から提供しているモバイル端末向けゲームプラットフォームの「Mobage(モバゲー)」や、プロ野球の横浜DeNAベイスターズなどでおなじみである。しかし、これはあくまでも一部にすぎず、最近では、LIVEコミュニケーションアプリの「Pococha(ポコチャ)」、キャラクターライブ配信の「IRIAM(イリアム)」など、ゲーム、スポーツ以外の領域にも事業の幅を広げている。
「もともとはネットオークション事業からスタートした会社であり、事業の枠には全く縛られていません。時代の変化を先取りしながら、常に新しいことに果敢にチャレンジして進化してきたのがDeNAのアイデンティティだと言えます」と語るのは、同社 システム本部 IT統括部 統括部長の金子俊一氏である。
同社は現在、「エンターテインメント」と「社会課題の解決」を事業の2本柱に掲げている。エンターテインメントは、ゲームやスポーツ、ライブストリーミングといった、文字通り“エンタメ”領域の事業群。一方、社会課題の解決としては、インターネットを活用して健康増進に貢献するヘルスケア事業や、地方自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する事業などを展開している。
とくに、21年4月に総務省出身の岡村伸悟代表取締役社長兼CEOが就任してからは、同10月に大阪の箕面市と地域の活性化と市民サービスの向上を目的とした包括連携協定を締結するなど、地方自治体のDXを支援する事業が増えた。長年培ってきたデジタルによるコンシューマー向けサービスのノウハウを駆使して、より良い行政サービスを提供したいという地方自治体のニーズに応えている。
このように多彩な事業を展開するDeNAであるが、すべての事業の基盤となるのはIT資産である。「そのため当社は、ソフトウェアやライセンスといった無形資産から、サーバー、パソコンといった有形資産まで、すべてのIT資産を重要な経営資源と位置付けています」と金子氏は説明する。
これは何も同社に限った話ではなく、あらゆる企業に言えることだろう。とくにこの2年間は、コロナ禍の影響でリモートワークが急速に普及し、従業員がSaaSやデバイスなどを活用する頻度が高まっている。その結果、これらのIT資産をしっかり管理して事業の継続性を担保することが、経営上の重要課題となっているのだ。
実際、後述するようにDeNAの岡村CEOや、創業者である南場智子代表取締役会長も、その重要性を十分に認識している。では、DeNAはどのようにIT資産管理に取り組んでいるのか? 次のページから詳しく見ていこう。