日経ビジネス電子版 Special

内側を磨くことで従業員に巡る好循環 人事DXが資生堂を内面から強くする

資生堂は、世界の拠点ごとに運用されていた人事システムを一元化する取り組みを2017年から推進。その一環として、国内における人事サービスの申請・承認を紙の書類のやり取りからオンラインに変更するプロジェクトを進めている。従業員体験の向上と、業務処理の効率化を同時に実現するという「人事サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)」に迫った。

紙による人事サービス申請の
負担を減らしたい

 世界120ヵ国・地域で化粧品を提供し、グループ企業を含めると全世界で約4万6000人の従業員が活躍する資生堂。2016年には、6つの地域と「プレステージ」「コスメティック」「パーソナルケア」などブランドカテゴリーを掛け合わせたマトリクス型のグローバル経営体制に移行した。

 米国、欧州、アジア太平洋などの地域本社にそれぞれのビジネスの責任と権限を持たせ、「Think Global, Act Local」(グローバルに考え、ローカルに行動する)という方針の下、地域ごとの顧客ニーズに合ったマーケティングや迅速な意思決定を実行させるための組織改革であった。

 この取り組みは、同社のグローバルビジネスをさらに成長させる多大な効果をもたらしたが、一方で人事面においては、全世界で活躍する人材の分布状況が把握しにくくなるという“副作用”も生じた。

 「マトリクス型経営体制への移行時には、各地域本社がそれぞれ異なる人事システムを利用していたので、グループ全体の人材情報を横串で見ることが難しい状況でした。これでは、特定の専門分野にたけた人材を各地域から発掘することや、グローバル戦略に基づいた人材の最適配置などが困難になってしまいます。そこで、グローバルで一元化された人事システムを構築するプロジェクトを17年に始動しました」と語るのは、資生堂 人事部 HRビジネスサービス室(取材当時)の田村浩之氏である。

田村氏
株式会社 資生堂
人事部 HRビジネスサービス室
室長(取材当時)
田村 浩之
1993年、資生堂に入社。現・資生堂ジャパンでの管理総務業務を経て、2000年より国内人事(制度企画、労務)や、国内給与関連業務の総括に従事。14年からグローバル人事戦略構築やグローバル人事システムの構築リードを担当し、現在に至る。

 このプロジェクトの実施に伴って、資生堂は人事に関する「もう一つの課題」の解決にも取り組むことにした。

 それは、国内における人事サービスの変革である。資生堂の国内拠点は、従業員による各種手当や育児・介護休暇などの申請を紙の書類で受け付けていた。申請書の種類は900以上に上り、従業員は申請のたびに、どの用紙に記入すればいいのか迷うことも多かった。

 しかも、その都度手書きする申請書もありその負担は大きく、申請すべきことが多くなると、本業に割く時間が奪われてしまうことも難点であった。

 一方、申請を受理する側にとっても、一度に大量の書類が寄せられると処理業務がパンクし、承認までの時間が長くなるという問題もあった。