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内側を磨くことで従業員に巡る好循環 人事DXが資生堂を内面から強くする

申請を処理する受託会社にも
大きな負担が

 資生堂には、グローバルの事業を統括する本社の他に、いくつかのグループ会社がある。その一つである資生堂ジャパンは、国内のマーケティングや販売を統括する日本地域本社だ。従業員の多くは、百貨店や専門店などでビューティーコンサルタントとして活躍しており、その数は約1万3000人に上る。約2500人の本社に比べてもはるかに従業員数が多く、その分、人事関連の申請件数もかなりの数に上る。

 「ビューティーコンサルタントという仕事柄、女性の従業員が中心なので、産休や育児休業といった申請のニーズがとくに多いのが特徴です。とはいえ、接客などの合間に申請書類を書く時間はなかなか取れず、不満を感じる従業員も少なくなかったようです」と語るのは、資生堂グループの給与・福利厚生関連のシェアードサービスセンターである資生堂アステックの代表取締役社長の渡邉幸男氏である。

渡邉氏
資生堂アステック株式会社
代表取締役社長
渡邉 幸男
1992年4月、資生堂に入社。現・資生堂ジャパンの営業拠点における管理業務、関連子会社の設立、採用・労務などの人事業務を担当後、2011年4月に資生堂グループの給与・福利厚生関連のシェアードサービスセンターである資生堂アステックに異動。19年1月より現職。

 同社は、グループ会社の給与計算や、従業員から送られてくる申請書を受理する業務などを受託している。

 人事サービスの申請処理については、まず従業員のリクエストに応じて申請書を郵送し、記入して返送されてきた申請書の内容に書き漏れなどの不備がないかどうかを確認。問題がなければシステムに登録する業務を請け負っている。

 「以前は、従業員がわざわざ各店舗から各地域のオフィスに出向いて申請書を受け取らなければならなかったので、郵送されるようになっただけでも、かなり楽になったとは思います。それでも、紙に記入する手間と負担は変わりません。何とかもっと便利な方法に変えてあげたいという思いは強くありました」と渡邉氏は明かす。

 一方で、紙による申請は、資生堂アステックによる処理作業にも多大な負担を強いていた。資生堂ジャパンだけでなく、本社や他のグループ会社も含めれば、国内だけで従業員は数万人規模に上るため、月間に処理する各種申請の件数は少ない月で400~500件、異動などが発生する月には1000件にも及んでいた。

 「1件1件、不備がないかどうかを入念にチェックしなければならないので、どうしても作業に時間がかかります。処理する側の作業効率を高めるためにも、申請方法を抜本的に変えるべきではないかと考えました」と渡邉氏は振り返る。

ServiceNowのHRSDで
申請のデジタル化を推進

 そこで資生堂の人事部は20年、資生堂アステック、グループのITインフラを開発・運用する資生堂インタラクティブビューティーとの共同で、人事サービスの申請をデジタル化するプロジェクトチームを発足。同プロジェクトチームは、デジタル化のための基盤として、ServiceNowが提供するHR Service Deliveryを採用した。

 ServiceNowを選んだ理由について、田村氏は「すでにフランスにある欧州地域本社が先行導入しており、効果を検証済みであることが決め手の一つになりました」と説明する。

 欧州地域本社である資生堂EMEAは、ServiceNowのソリューションを人事サービスの他、入社手続きや、それに連動するパソコンの手配、ID・パスワードの申請といったITサービスのデジタル化にも活用していた。

 具体的には、従業員がパソコンやスマートフォンを使って専用ポータルを開き、メニューの中から申請したい項目のボタンをクリックすれば、入力用のフォームが表示されるという仕組みである。フォームに必要事項を入力し、「完了」ボタンを押せば、申請した内容がそのまま承認者に送られる。承認が完了すると、申請者のパソコンやスマートフォンに通知が届き、一連のプロセスが完了する。

 「紙による申請では承認までに数日を要する場合もありますが、デジタルによるやり取りなら、申請内容によっては瞬時に承認が完了します。しかも、申請後の処理状況はリアルタイムに確認できるので、どこで止まっているのか、いつごろ承認されそうなのかということを把握しやすいのも便利だと思いました」(田村氏)

 また、ServiceNowのソリューションは、開発がしやすく、短期間で実装できることも選定の大きなポイントであった。

 「実は、新型コロナウイルス感染症が拡大した20年に、ServiceNowを使って感染疑いがある従業員のステータス管理を行う別のシステムを開発したのですが、わずか2カ月程度で実装することができました。アジャイル開発に適したプラットフォームだとは聞いていましたが、実際に使ってみると、確かにスピーディであることを実感しました」と語るのは、プロジェクトチームでIT側のプロジェクトマネジャーを担当した資生堂インタラクティブビューティー IT本部 デジタルプラットフォーム部の鈴木治行氏である。

 こうして、HR Service Deliveryを基盤とする人事サービス申請のデジタル化プロジェクトは、20年7月に本格始動した。

資生堂インタラクティブビューティー株式会社
IT本部 デジタルプラットフォーム部
鈴木 治行
富士通でのシステムエンジニアの経験を経て、2012年に資生堂に入社。SCM関連の業務およびシステム開発、ICT戦略業務の後、19 年から社内DXプロジェクトとしてServiceNow構築に従事。主にHRSDのプロジェクトマネジメントを担当し、現在に至る。
鈴木氏