「従業員=カスタマー」と捉え
発想を転換する
BXの一環として、アサヒグループジャパンは、デジタルの力を活用した従業員体験の変革に取り組んでいる。その基盤の一つとして活用しているのは、デジタルワークフローによって無駄な業務プロセスの解消や業務の自動化を実現するServiceNowである。
「当初はIT運用に関わる領域で検討をスタートしたのですが、IT領域以外にも、様々な業務の効率化や自動化に役立つ可能性を持ったプラットフォームであることが分かりました。そこで、従業員が日ごろから面倒に感じている各種申請業務の負担を減らす仕組み作りにも利用することにしました」と語るのは、同社 DX統括部 マネージャーの清水 博氏である。
DX統括部
マネージャー
清水 博 氏
アサヒグループは、明治22年(1889年)に「大阪麦酒会社」として創業して以来、130年余りの歴史を持つ。その長い歴史の中で、常に消費者が求める商品やサービスを徹底追求し、「最高の体験」を提供することにこだわり続けてきた。
「お客様に商品やサービスを通じて『最高の体験』をお届けするのは、メーカーとして当然のことです。時代がどんなに変わっても、その姿勢が変わることはありません。アサヒでは、その『最高の体験』を提供したいという意識が、社内にも向けられています」と清水氏は語る。
自動車業界から中途入社でアサヒグループの一員となった清水氏は、アサヒが従業員をとても大切にする会社であることを、強く感じてきたという。
ただし、「従業員を大切にしようとする姿勢は、従業員に提供するサービスの質に必ずしも結びついていませんでした。お客様に提供するサービスとは違い、従業員に提供するサービスはサービスレベルという概念よりも、申請ができればよいといった目的達成が主眼になっていたと思います」(清水氏)
清水氏が言う「従業員へのサービス」とは、総務による福利厚生サービスや、人事による研修機会の提供、経理による各種手当や経費の支給といった、従業員個人のためのサービスだけに限らない。法務への契約書の作成依頼や、IT部門へのパソコンの購入申請、会議室の予約など、業務に関わるものも含め、従業員は様々なモノやサービスを会社に申請し、提供してもらう必要がある。
こうした従業員向けサービスは、対価をもらって提供する顧客向けのサービスとは異なるので、利便性や対応の速さといった「体験」への配慮が十分ではなかった。そのため、申請手続きが非常に煩雑だったり、いくつもの部門の承認を得なければならないので時間がかかったりと、従業員に余分な手間やストレスを与えていたことは否めなかった。
「必要のない手間や時間が解消されれば、従業員は必要な業務だけに専念できるようになります。組織内で提供されるサービスのレベルを高めることで、従業員の満足度や業務遂行の効率化に寄与できます。そこで、『従業員=カスタマー』と発想を転換し、申請・承認のプロセスをできるだけ簡素化して、サービス品質を高めたいと考えたのです」と清水氏は説明する。
IT運用以外にも
様々な業務に利用できる点に着目
予想がつかない未来に対してプラットフォームにも高い柔軟性が求められる。そこで清水氏が着目したのは、ServiceNowの多様なプラットフォームとの接続性であった。アサヒグループが昔から持つシステムを段階的に整理していく中で、アーキテクチャの中核基盤として簡単に疎結合ができる点は重要なポイントであった。
また、「シンプル」は重要なキーワードであると山川氏は言う。「選択肢がたくさんある中で、ビジネスをいかにシンプルに実現するか。可能な限り新規導入時の影響を排除し、ブラックボックス領域をなくしたい。見える化により変化に必要な時間やコストが見積もりやすくなる。ServiceNowはそれが実現できると感じました」(山川氏)
アサヒグループがServiceNowを導入したのは、アサヒグループジャパンが設立される約2年前の20年5月。当時、清水氏は国内事業のIT運用関連の業務に携わっており、その業務効率化のためにServiceNowのIT Service Managementを採用した。
「IT運用に関わるインシデント管理や、各種申請・承認のためのワークフローとして導入しました。しかし、実際に触れてみると、ServiceNowは非常に自由度の高いプラットフォームであり、IT運用だけでなく、総務や経理、人事、法務といった、様々なサービスの申請・承認にも使えそうだということが分かったのです」(清水氏)
ServiceNowのプラットフォームである「Now Platform」は、社内のあらゆるシステムやデータベースを柔軟に接続する疎結合の仕組みを備えている。その特徴を生かせば、広範な業務の申請・承認プロセスを合理化できるのではないかと考えた。
例えば、従来の申請・承認プロセスでは、申請内容にミスがないかどうかを複数の部門がダブルチェックしたり、他部門による処理や指示が間違っていないかどうかを確認したりするといった無駄が生じていた。さらに申請内容のシステム設定はIT部門が担っていたが、それすら疎結合の状態で運用する上では、ほとんどの場合は自動化可能なものであった。そのため、不必要な作業を極力なくしフローをシンプル化した。「結果的に申請から承認までの時間は大幅に短縮され、従業員体験も向上するわけです」と、清水氏はそのメリットについて語る。各部門の負担も軽減されることは言うまでもない。
これらのメリットを高く評価して、アサヒグループジャパンのDX統括部はServiceNowのプラットフォームを広範囲にわたる社内サービスの申請に利用することにした。
