日経ビジネス電子版 Special
130年企業が進める「挑戦」と「変革」

従業員体験最大化させる
アサヒグループジャパンデジタル化へ取り組み

申請内容が完了するまでの時間が
1週間から数分に短縮

 アサヒグループジャパンが取り組むServiceNowのプラットフォームを使った社内サービスの申請プロセスの変革は、すでに一定の成果を上げている。

 例えば、同社はウェブ会議やファイル共有などのクラウドサービスを導入している。これらのサービスを利用するための申請・承認・環境提供をServiceNowによって自動化した。

 「従業員がファイル共有のために新たなフォルダを作成する際には、これまでは上長や担当部門に承認を得た上でIT部門が設定していました。従来は、承認が下りてフォルダが作成されるまでに1週間前後かかっていたのですが、承認が下りれば、その情報は直ちにAPIでファイル共有サービスに伝わるよう完全に自動化され、承認が早ければ数分でフォルダが提供できるようになりました。格段にスピードが速くなったことに、多くの従業員が満足しているようです」と清水氏は語る。

 このように、疎結合の仕組みによって様々なクラウドサービスと柔軟に連携できるのも、ServiceNowの大きなメリットだ。

 「ServiceNowを他のクラウドサービスと組み合わせると、それぞれの機能の掛け合わせによって、より利便性の高い使い方ができるようになります。私はこれを『+1導入』と呼んでいます。あらゆるシステムと柔軟に接続できる特性を持っているからこそ、それを徹底的に生かして、様々な業務の変革に役立てていきたい。IT運用だけに使うのはもったいないほど、無限の可能性を秘めたプラットフォームだと思います」と清水氏は評価する。

 その可能性をさらに広げるため、アサヒグループジャパンはServiceNowの人事管理アプリケーションであるHR Service Deliveryも導入した。ただし、「人事業務を効率化するのが目的ではなく、その機能を使って様々な業務を変革するのが狙いです。ServiceNowのプラットフォームやアプリケーションは汎用性の高さが魅力なので、枠にとらわれた使い方をするつもりはありません。どんな使い方ができるのかとあれこれ試すうちに、思いも寄らない活用方法が発見できるからです」と清水氏は語る。

 あえて例えるなら、ServiceNowはジグソーパズルではなく、組み立てブロックのようなものだと言う。「ジグソーパズルは、最初からピースを埋めるべき場所、つまり“正解”が決まっていますが、組み立てブロックはどんな形にもなるので、“無限の正解”を創り上げることができるわけです」(清水氏)。

IT Service Managementで開発したアサヒグループジャパンのITサービスの画面。現状でもシンプルで分かりやすいUIとなっているが、今後はさらにデザイン面に磨きをかけていくという

SoEとSoRの
“橋渡し役”としても期待

 この他、アサヒグループジャパンは22年5月にServiceNowのワークフローアプリケーションをローコードで開発できるApp Engineも導入している。これもIT運用以外の業務で利用するワークフローの構築を容易にすることが目的だ。

 さらに、同社は今後、国内事業全体のITアーキテクチャを構築する上で、ServiceNowをSoR(System of Record)とSoE(System of Engagement)の“橋渡し役”として活用していく。

 アサヒグループはここ数年、パブリッククラウドや各種SaaSを積極的に導入してSoEの整備を進めており、それらとSoRがスムーズに結合するITアーキテクチャの構築計画を描いている。山川氏が冒頭に述べたBXを加速させるための基盤づくりである。

 「クラウドサービスと柔軟にAPI連携し、既存のレガシーシステムとも簡単につながるServiceNowは、両方を1つにまとめ上げる“橋渡し役”として最適な存在だと考えています。理想のITアーキテクチャ像はまだ構想中ですが、環境変化に強い、スケールアップやスケールダウンが柔軟にできるアーキテクチャを目指しています。従業員の時間をむしばんでいるものを減らす、そのためにServiceNowを十分に活用したい」(山川氏)

 疎結合の仕組みによって、新しいシステムをつなぐことも、外すことも容易にできるServiceNowなら、市場ニーズやテクノロジーの変化とともに、将来システムを入れ替える必要性が生じたときにも対応しやすい。「スピード感を持って変化に対応できるITアーキテクチャを構築するためには、ServiceNowのように柔軟性の高いプラットフォームを採り入れるのが有効な選択肢ではないでしょうか」と山川氏は語る。

 また、山川氏は今後のDX推進の課題として、「各事業会社や従業員に、グループとして掲げる『DX=BX』という方針をしっかり理解してもらい、実践してもらうこと」を挙げる。「DX統括部はあくまでも“旗振り役”にすぎず、実際に取り組むのは従業員たちです。ServiceNowによって様々な社内サービスの申請業務が合理化され、そのメリットを実感すれば、BXの意義を理解するきっかけになるかもしれませんね」(山川氏)。

IT Service Management 従業員が作業している場所にとらわれることなく生産性を高め、新たな体験を提供します。
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