標準化への布石として
開発承認の権限を本社に集約
富士通が「フジトラ」の一環として取り組んでいる「OneFujitsuプロジェクト」は、文字通り、グループ全体の業務プロセスやシステム、データなどを「1つ」にしようというものだ。全世界で約12万人が働く富士通グループは、様々な製品・サービスやソリューションを手掛けており、それらをより良いカタチで顧客や社会に提供するため、事業部門ごと、リージョンごとに最適化された業務プロセスやシステムを構築してきた。
しかし、「個別最適化された状態のままでは、グループ全体として市場の変化に柔軟に対応することはできません。そこで、すべての事業部門、リージョンの業務プロセスやシステムを標準化されたものに再構築し、エンド・ツー・エンドでシンプルに業務が進められる環境づくりを目指すことにしたのです」と青木氏は説明する。
デジタルシステムプラットフォーム本部
クラウドサービス統括部
シニアディレクター
阿部 功一 氏
グループ全体のシステムを標準化するための布石として、富士通は、CDPO(最高データ&プロセスオフィサー)という新たな役職を設立した。社内の業務プロセスとデータに対して誰が責任を持つのか、そのオーナーシップを明確化した。その上で、開発予算および開発計画の承認権限を本社に集中した。従来は、各事業部門やリージョンがそれぞれの裁量で予算と計画を策定していたが、本社がコントロールすることで、個別最適化されたシステムの乱立にブレーキをかけようとしたのである。
「各事業部門やリージョンからシステム開発の申請を上げてもらい、『OneFujitsuプロジェクト』が目指す標準化の方向性に照らし合わせて、『やる、やらない』を判定する方法に変更しました。承認を与えた開発プロジェクトだけに、本社から予算が割り振られる仕組みです」と語るのは、同社 デジタルシステムプラットフォーム本部 クラウドサービス統括部 シニアディレクターの阿部功一氏である。
対象となるのは、ERPをはじめとする基幹システムから、CRM、人事システムなどの業務アプリケーションまで、ありとあらゆるシステムである。
「もちろん、部門ごとやリージョンごとの事情に合わせた若干のローカライズはやむを得ませんが、『Fit to Standard』の考え方に沿って標準的なシステムに収れんしていくことを目指しています」(阿部氏)
標準化を進めるためには、まず各事業部門がどのようなシステムを導入しているのかを可視化し、全体のITポートフォリオを管理する必要がある。そのためのツールとして、富士通はServiceNowのSPM(Strategic Portfolio Management)とAPM(Application Portfolio Management)を導入した。
グループ全体で稼働する
すべてのシステムを可視化
ServiceNowのSPMは、企業全体やグループ全体のITポートフォリオ管理がワンプラットフォームでできるソリューションである。どのようなシステムの開発プロジェクトが承認され、プロジェクトはどこまで進捗しているのか。予算に対して実際に執行された費用はいくらなのかといったことが管理できる。
一方、APMは企業内やグループ内で稼働しているアプリケーションの全体像を可視化するソリューションだ。どの事業部門やリージョンが、どんなシステムを保有しているのかということが俯瞰できる。SPMが投資の軸でシステムの要求や計画を管理するソリューションであるのに対し、APMは資産の軸で全社のITを管理できるソリューションである。
富士通は、手始めにAPMを使って、グループ全体にどれだけのシステムがあるのかを可視化する作業から着手した。
デジタルシステムプラットフォーム本部
グローバルヘッドオフィス
齋藤 崇雅 氏
「従来、IT資産の管理は事業部門やリージョンごとに行っていましたが、管理の手法はバラバラだったので、そこから標準化を進める必要がありました。結果的に、IT管理手法をグループ全体で統一したことが、『OneFujitsu』への最初の一歩になったのではないかと思います」と語るのは、同社 デジタルシステムプラットフォーム本部 グローバルヘッドオフィスの齋藤崇雅氏である。
APMの標準的なデータモデルに合わせて、各事業部門やリージョンからの報告を取りまとめたところ、富士通グループ全体で利用されているシステムは、実に約4000種類にも上ることがわかった。
阿部氏は、「全体の状況は可視化できたので、いよいよ標準化に向けた取り組みを本格的に始動したところです。ITサービスの分野ごとに、そのポートフォリオの最適化に責任を持つSDO(サービスドメインオーナー)を本社に配置し、標準化に当てはまらない既存システムの洗い出しや、リプレイスメントを主導してもらいます」と、次のステップについて説明する。
新しいシステムに置き換えた場合、各部門の業務やサービスがどのように改善されるのか、トータルコストはどれだけ削減されるのか、といったことも踏まえて見直しを行うのがSDOの使命だ。
