予算集計やレポート作成の
作業時間が約30%削減
一方で富士通は、各事業部門やリージョンからのシステム開発の申請を受け付けるためにSPMを利用している。
前述したように、富士通はそれまで各事業部門やリージョンが独自の予算と裁量で行っていたシステム開発の意思決定権限を本社に集約した。
どんなシステムを作りたいのか、予算はいくらかかるのか、導入によってどんな効果が期待できるのかといったことを確認し、グループ全体としての標準化にかなったシステム導入なのかを考慮した上で、前述したサービスドメインオーナーが「やる、やらない」を決める仕組みに変更したのである。
SPMには、システムの開発要求(デマンド)と予算の申請を受け付ける機能がある。審査を行うために必要な入力事項が統一され、プラットフォームを経由して申請ができる仕組みだ。
申請する側には、エクセルにまとめた申請書類をメールに添付して送るといった手間がなく、受理する側も、申請内容がそのまま画面上にリストアップされるので、エクセルに書き込まれた内容をコピーしたり、転記したりする面倒がない。当然、転記ミスなどは解消されるし、業務効率も格段に上がる。
SPMを導入するまで、富士通は自社開発したシステムで国内各事業部門からのシステム予算申請を処理していた。しかし、すべての申請情報を網羅できていたわけではなく、一部の情報についてはエクセルで管理していた。また、海外の予算は別のシステムで管理していたので、それらを手作業で統合しなければ、全体像を把握することはできなかった。
それがSPMで一元化されたことで、「申請内容の集約や予算の集計、経営層へのレポート作成といった作業に要する時間は、導入前に比べて約30%削減できました」と阿部氏は効果を語る。
単に業務効率が改善されただけでなく、取りまとめる内容に一貫性がもたらされたことも大きな導入効果であった。
齋藤氏は、「SPMで申請フォーマットが統一されるまでは、部門ごと、リージョンごとに申請内容の粒度がバラバラで、プロジェクトごとや年度ごとの違いもありました。それが統一されたことで、経営層に提出するレポートも予算や成果などの比較がしやすいものになり、より適切な経営判断が下せるようになったのではないかと思います」と語る。
APM
SPM
今後は開発プロジェクトの
マネジメントにSPMを活用
「OneFujitsuプロジェクト」のようにグループ全体の業務プロセスやシステムを標準化する取り組みは、各事業部門やリージョンに、その意義をしっかり納得してもらえるかどうかが成否のカギを握る。
これまでのやり方や、使い慣れたシステムを「奪われる」という側面もあるのだから、「それを受け入れてでもやる意味がある取り組みなのだ」ということを十分に理解し、腹落ちしてもらわなければならない。
阿部氏は「ただ仕組みやツールを変えるだけでなく、なぜ変えたのか、それによって自分たちにはどんなメリットがもたらされるのか、ということを繰り返し伝えていく必要があります。そのための機会として、SPMとAPMを導入して以来、国内だけでも10回近くのユーザー向け説明会を開催しました。ほかにも、各事業部門やリージョンのユーザーからは日常的に様々な問い合わせが寄せられていますが、ServiceNowのITSMをベースに開発したポータルなどを使って迅速に答えるようにしています。とにかく納得してもらうことで、チェンジマネジメントを促していきたい」と抱負を語る。
「OneFujitsuプロジェクト」は、グループ全体のシステムの状況が可視化されたことで、いよいよ本格的に動き出そうとしている。
青木氏は、「富士通全体としての業務体系を定義し、それに当てはめる形で全社最適化された『エンタープライズアーキテクチャー』を構築していきたい。今後、既存のシステムをリプレイスするプロジェクトがどんどん動き出すはずですが、そのプロジェクトマネジメントにもSPMを積極活用していきます」と今後について語る。
それによって、様々な変化に柔軟に対応できるIT環境が整えば、富士通の成長はますます確かなものとなるはずだ。
「富士通の大きな課題は、旧来型のSIやシステム開発中心から、デジタル中心のビジネスモデルにいかに転換するかということですが、『OneFujitsuプロジェクト』によってグループ全体が使用するシステムがシンプルになれば、IT費用の7~8割を占める運用コストが大幅に削減され、その分を投資に回せます。これによって社内のデジタル化が進めば、お客様に提案できるデジタルソリューションの知見やノウハウが蓄積され、デジタル中心のビジネスモデルへの転換が一気に加速するのではないかと思います」と青木氏は語る。
グループ一体となった富士通の変革は、これからも進む。

