約150カ国・5万人超の従業員情報のデータガバナンスを徹底するには? グローバル人事戦略の要に人事情報データベースの一元化を推進するLIXIL

水回りや住宅用建材のトップブランドの一つであるLIXIL(リクシル)。その製品の供給先は世界150カ国に及ぶ。同社はグローバル人事戦略の遂行に当たり、グローバルで5万人を超える従業員を対象にした人材の見える化を進めている。同社は人事情報の一元化やガバナンスの徹底をどのように行ったのか――。グローバル人事戦略をデジタルの観点から支える同社HR Digital部のキーマンに聞いた。

HRのデジタル化を推進する専任チームを、HR部門の中に設置

LIXIL
Human Resources部門 HR Digital部 リーダー
兼 デジタル部門 コーポレートデジタル推進部 リーダー

鈴木 一弘

グローバル経営を進める企業が課題の一つとして抱えるのが、人事情報の一元化やガバナンスの徹底である。現地法人を設立したり現地企業を買収したりするなどして事業の拡大を進めていくにつれて、どういった人材がどこにいるのか、組織の階層や人員配置は適切か、といったことが日本本社から見えにくくなってくるからである。そして情報が見えなければガバナンス(管理・統治)も行き届かなくなる。

今まさにこうした経営課題に挑戦しているのが、トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、および東洋エクステリアの統合によって2011年4月に設立されたLIXILである。トイレ、ユニットバス、システムキッチンなどの水回り設備と、サッシや玄関ドアなどの建材が同社の事業の柱であり、経営統合後も使用している「INAX」ブランドや「TOSTEM」ブランドを目にする機会も多い。社名は「LIVING×LIFE」に由来し、パーパス(存在意義)として「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」を掲げている。

また、海外展開も積極的に進めており、製品の提供はおよそ150カ国に及ぶ他、北米で水回り製品の製造と販売を手掛けるアメリカンスタンダード ブランズや、ドイツの水栓メーカーであるグローエなどを傘下に収めている。

最初に、同社のグローバル人事戦略(下記図)とデジタル化の組織体制について触れておこう。

前述のパーパスを最上位とし、そのパーパスの実現に必要な事業戦略や成長戦略を明確化した「LIXIL Playbook」が次に置かれる。3階層目の「GPOミッション」はグローバルな人事組織(Global People Organization)としてのミッションを示している。その下に5項目の「グローバルKPOs」(KPO=Key Performance Outcome)が置かれ、具体的な取り組みが推進されている。

グローバル人事戦略
LIXILのPurpose 世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現

このグローバル人事戦略の遂行をデジタルの観点から支えるのが、Human Resources(HR)部門の中に設けられたHR Digital部である。「グローバル人事戦略の実現に向けて、HRのデジタルストラテジーの策定、業務フローのデジタル化、ソリューションやプラットフォームの選定、アプリケーションやデータのガバナンス管理などを担っています」と、同部のリーダーを務める鈴木一弘氏は説明する。

一般的にはデジタル戦略は経営企画部門や情報システム部門の主導によって進められることが多いが、HRに関わる領域をHR部門が自ら担うのが同社の組織上の特徴となっている。「同じ社内であっても、他の部署が担当するよりも、HR部内部でイニシアチブを持ったほうが効率的ですので、このような体制を採用しています」(鈴木氏)。

このグローバル人事戦略を遂行するに当たって不可欠なのが、グローバルな人事情報データベースである。ビジネス変革に必要な人材の確保や組織設計、人材の育成計画やキャリアアップ、従業員エクスペリエンスの基礎となる公平な評価や成果管理などに関わるからだ。

日本国内でおよそ2万人、グローバルも合わせるとおよそ5万6000人(連結ベース、2022年3月時点)にも及ぶ従業員を対象にしたLIXILの人事情報データベースの構築・整備のプロジェクトは、2020年4月にスタートした。