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ERPを中核にプラットフォーマーを目指す 圧倒的な「利便性の提供」と「ありたい姿」の実現に向けて デジタル変革をさらに加速させる

トラスコ中山株式会社
取締役 経営管理本部 本部長 兼
デジタル戦略本部 本部長
数見 篤 氏

モノづくりを支える機械工具の卸売業者であるトラスコ中山。同社はデジタルの活用を通じて、様々な変革を成し遂げてきた。同社 取締役 経営管理本部 本部長 兼 デジタル戦略本部 本部長 数見 篤 氏のコメントを交えつつ、顧客にとっての圧倒的な「利便性の提供」と「ありたい姿」の実現を目指す同社の取り組みの一端を紹介する。

DXの成功例として知られる
トラスコ中山

DX(デジタルトランスフォーメーション)で成功を収めた企業として、様々な業界から注目を集めるトラスコ中山。

同社は経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄」において、2020年8月に「DXグランプリ」を受賞、2020年~2022年においては「DX銘柄」に3年連続で選定。さらに2023年5月には、とくに傑出した取り組みを継続している企業として「DXプラチナ企業2023-2025」にも選定された。DXをテーマに、メディアに取り上げられることも多い。

トラスコ中山は、プロツールと呼ばれる機械工具の卸売業者である。プロツールとは、生産現場や建設現場で使われる工具や作業用品を指す。ドライバーやペンチなどのハンドツール、ドリルなどの切削工具、作業用手袋やヘルメット、溶接機や発電機、潤滑剤や各種液剤、作業台やデスク、荷役や梱包部材などがその例だ。数多くの商品を掲載した「トラスコ オレンジブック」と呼ばれる総合カタログは、多くの製造現場や調達部門に置かれている。

「プロツールカンパニー」の同社がなぜDXで注目されているのだろうか。その背景には独自の経営戦略がある。

まず、在庫に対する考え方だ。一般的に「在庫はできるだけ少なく」「必要最小限に」とも言われるが、同社は「プロツールなら何でも揃う」ことを目指している。顧客にとっての利便性を高めるために約58万アイテムを常に在庫し、しかもその在庫数は今も増加を続けている。

そのため、同社は一般的な在庫回転率ではなく、注文のうちどれだけ在庫から出荷できたかを示す「在庫出荷率」を経営の最重要指標に据えている。

また、物流においては、「即納こそ最大のサービス」を戦略として掲げる。豊富な在庫を自社配送網による1日2便の配達で効率よく届け、また、世界最先端の物流機器を活用し、卸売でありながら年間355万個の出荷も行い、即納を実現している。

他にも、AIによって最短5秒で見積を返す「即答名人」や置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」、1回の注文をできるだけ1つの箱にまとめて直接ユーザーへ配送する「ニアワセ(荷物合わせ)」+「ユーチョク(ユーザー様直送)」などの斬新なサービスを矢継ぎ早に展開している。

これらの在庫のリアルタイム管理、適正在庫計画や発注、物流の効率化や自動化、さらには様々な新サービスを支えているのがデジタルであり、同社の高い成長を支えてきた。

ただし、同社 取締役 経営管理本部 本部長 兼 デジタル戦略本部 本部長の数見 篤 氏は、「実のところDXを進めてきたという感覚は持っていません。むしろDXと言っている間は、本当のDXにならないと思っています」とも語る。

では、トラスコ中山は何を目指してデジタルに取り組んできたのだろうか――。同社の過去の経緯を振り返りつつ、その取り組みを見ていきたい。

図1 ※令和4年(2022)12月末時点

図1 「プロツールなら何でも揃う」トラスコ中山。3000社以上から仕入れたプロツールを、機械工具商、ネット通販企業、ホームセンターなど5000社を超える得意先に納めている