日経ビジネス電子版 Special

属人化していた業務を変革 グローバルで成長を続けるトプコン

社内DXの推進が
顧客サービスのDXに直結する

 DXという概念が世の中に定着する前から、デジタル技術やネットワーク技術を駆使して、新しいサービスを次々と生み出してきたトプコン。

 例えば、主力事業の一つである「住(建設)」の領域では、3次元計測機で計測した土木現場の現況データをクラウドに送り、そのデータを基に3次元の設計図を作成。さらに、その設計データをクラウドから取り込んだICT建機が自動で施工できるようにするソリューションを提供している。計測から設計、施工、検査に至るまでのデータはすべてクラウド上に保存され、その後の保守にも活用できる。

 また、「医(ヘルスケア)」の領域では、ネットワーク技術を使ったリモート診断のソリューションを開発。専門の眼科医に行かなくても、身近な眼鏡店で眼の検査などをすれば、そのデータが眼科医に送られて診断が行えるというユニークなサービスも開発した。

 こうした先進的なサービスを次々と生み出せるのは、トプコンがグローバルな研究・開発体制を確立しているからである。

 「90年代から海外技術ベンチャー企業のM&Aを積極的に推進してきた当社は、海外売上比率が約80%、従業員構成も約70%が外国人です。研究・開発拠点も世界中に展開しており、それぞれの国・地域ならではのニーズに基づいた発想やアイデアが次々と生まれます。それらを組み合わせることで、先進的なサービスをいち早く投入できるわけです」と中島氏は明かす。

 トプコンは、その“持ち味”を最大限に発揮させるため、各国・地域の研究・開発拠点や営業拠点のコミュニケーションを活性化させるデジタル基盤づくりにも積極的に取り組んできた。そうした社内DXの推進が、顧客に提供するサービスのDXにも直結すると考えているのだ。

 ところが、そのDXの“推進役”たるべきIT部門の担当者が、本来取り組むべき業務に十分な力を割けていないことに、中島氏は大きな課題を感じていた。

 中島氏は、大手電機メーカーやコンサルティングファームなど経て、18年にトプコンに入社。同社のITマネージャーとなった。入社当初、「外からの目線」でトプコンのIT部門を眺めた中島氏は、約20名の担当者たちが、「あまりにも生産性の乏しい業務に忙殺されているのを見て驚いた」という。

電話による問い合わせ対応に
忙殺されていることに課題を感じる

 中島氏が「生産性に乏しい」と感じたのは、社内システムやIT機器の不具合に関する問い合わせへの対応であった。トプコンでは、社内各部門から寄せられるすべての問い合わせに、IT部門の担当者が電話で対応していた。

 「電話で問い合わせを受けた後は、システムや機器の担当者に電話をかけて状況を確認。対処方法が分かったら、問い合わせをしてきたユーザーに電話で返答をする。まさに“電話のバケツリレー”でした。解決するまでに1件当たり30~40分の時間が取られ、その間、担当者は他の業務に手を付けることができません」と中島氏は振り返る。

 しかも、1件当たり30~40分の時間がかかるとなると、1日8件程度の問い合わせに対応するのがやっとである。同時に複数の問い合わせは処理できないので、後回しにされたり、忘れられたりすることも増え、ユーザーの不満は募っていった。

 「『問い合わせをした担当者によって、対応にばらつきがある』という声も耳にしました。自分がよく知っているシステムや機器に関する問い合わせなら、すぐに対応してもらえるけれど、分からないことだと、別の担当者に聞かなければならないので時間がかかるといったように、対応が属人化していたのです。受け答えの丁寧さや、処理の速さといった技量もバラバラでした」(中島氏)

 中島氏は、この課題を解決するため、電話ではなく、問い合わせ専用の社内ポータルを使って対応する仕組みを構築してはどうかと考えた。その基盤として導入を検討したのが、ServiceNowのIT Service Management(ITSM)である。

 「コンサルティングファームに勤めていたとき、クライアントにServiceNowの導入支援を行ってきた経験があるので、ITSMの機能やメリットについては十分理解していました。他にも複数のソリューションを検討しましたが、サービス対応のプロセスがITILに準拠している点や、ポータルサイトに表示するサービスカタログやFAQが洗練されている点などを評価して、ServiceNowの導入を決めました」と中島氏は語る。

 こうして20年12月に開発プロジェクトがスタート。5カ月後の21年4月にITSMを基盤とする社内ポータルをリリースした。

社内ポータルのトップ画面
トプコンがServiceNowのITSMを基盤として開発した社内ポータルのトップ画面。サービスカタログやFAQ、キーワード検索などで構成されている