最新版のプラットフォームに
生成AIを組み込む
スミス氏の挨拶に続き、「Keynote」セッションでは、今年1月に就任したServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏が、最新のServiceNowプラットフォームの特徴やそのテクノロジーの優位性などについて改めて紹介した。
執行役員社長
鈴木 正敏 氏
鈴木氏は、「就任以来、多くのお客様との対話を重ねる中で、日本の企業は5つの大きな課題に直面していることを感じました」と語る。
5つの課題とは、「既存のIT資産の有効活用」「従業員の生産性向上」「顧客体験の向上」「リスク・コンプライアンスへの対応」そして「生成AIの活用」だ。鈴木氏は、これらの課題を解決する方法として、「すべてのシステム、あらゆる業務プロセスを1つのプラットフォームに統合し、優れたユーザーエクスペリエンスを採り入れて生産性を向上させること」を提案。「ServiceNowは、それを実現できるエンドツーエンドのインテリジェントプラットフォームです」(鈴木氏)と説明した。
ServiceNowは、2023年9月に最新バージョンの「Vancouver」をリリースし、プラットフォームに「Now Assist」と呼ばれる生成AIを組み込んでいる。「Vancouverリリースによってエクスペリエンスを飛躍的に改善させ、生産性をさらに向上できるようになりました」と鈴木氏は自信を見せた。
鈴木氏に続いてゲストスピーカーとして登壇したのは、三井住友銀行 執行役員 兼 三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 IT企画部長の高松英生氏である。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
執行役員 IT企画部長
高松 英生 氏
三井住友フィナンシャルグループは、「カラを、破ろう。」という太田 純取締役 執行役社長(代表執行役)の掛け声の下、提供する金融サービスや業務のデジタル化を積極的に推進している。その成果の一つが、2023年3月にリリースし、銀行、カード、保険、証券などのサービスをデジタルプラットフォームで一体化した「Olive」だ。
高松氏は、「“攻め”のデジタル戦略を積極的に推進するためには、サイバーセキュリティ対策などの“守り”もしっかり固めなければなりません」と指摘。強固な“守り”を実現するため、正確かつ迅速なIT資産管理の仕組み作りを進めていると説明した。
2人目のゲストスピーカーとして登場したのは、日産自動車 グローバルエンタープライズアーキテクチャー部 部長の蓬沢健一氏だ。
グローバルエンタープライズ
アーキテクチャー部
部長
蓬沢 健一 氏
日産自動車のIT部門は、グローバルのオフィスや製造現場で利用されている約2700ものアプリケーションを管理するアプリケーション・ポートフォリオ・マネジネント(APM)活動を展開している。更新管理をしっかり行って業務を止めないようにするだけでなく、業務部門が独自に開発したアプリ(シャドーアプリ)の管理や、古いアプリのモダナイゼーションなどを行うためだ。これを実現するための基盤として、日産自動車はServiceNowのソリューションを採用した。
蓬沢氏は「APMでは、データの充足度や鮮度をいかに高めるかが重要ですが、ServiceNowのソリューションはこれらの要件を十分に満たしていました」と評価。また、「デファクトなツールとして利用されているServiceNowなので、海外のユーザーにも受け入れられやすく、データもスムーズに集めることができました」(蓬沢氏)と振り返った。
もう1人、ゲストスピーカーとして「Keynote」に登壇したのは、第一三共 DX企画部 主幹の山光由佳氏である。
DX企画部 主幹
山光 由佳 氏
第一三共は、「ABCDX」というコンセプトでDXを推進している。A(Activity=日常業務)、B(Business Process=業務プロセス)の変革に取り組み、それによってC(Culture=企業文化や意識)を変えながら、DXを進めていくという考え方だ。
この取り組みに先駆けて、第一三共は2016年に日本、米国、ドイツの連携の下ServiceNow IT Service Management(ITSM)を稼働させた。その後も、IT内外の領域に利用を拡大させている。2023年には「DX Operation Excellence」というプログラムを立ち上げ、各サービスのデータを利活用し価値を最大化させる取り組みを始めた。
山光氏は、「第一三共は、同業他社や他業界、団体なども巻き込み、医薬品による治療だけでなく、予防や健康維持のための情報共有などが可能となるトータルケアエコシステムのプラットフォームの構築などヘルスケアDXを目指していますので、さらなる活用の幅が広がればと思います」と語った。
このほか「Keynote」では、ServiceNow Japan デモセンター シニアソリューションコンサルタント の牧三由樹氏が、従業員のエクスペリエンスや生産性を向上させる従業員ポータルと、顧客体験を高めるカスタマーサービスマネジメントの仕組みについて、今回のイベントテーマでもある最新の生成AIを活用した機能のデモンストレーションを行った。
デモセンター
シニアソリューションコンサルタント
牧 三由樹 氏
大盛況で行われた
ユーザー企業の事例セッション
「Keynote」の終了後、フロア内に設けられた会場では、ServiceNowの担当者によるセッションや、ユーザー企業の事例セッション、スポンサーセッションなどが行われた。また、フロアの一部には、巨大なExpo会場が設けられ、ServiceNowを利用した様々なソリューションの展示や実演が行われていた。
ユーザー企業による事例セッションはいずれも大盛況だったが、その中からとくに3つを紹介しよう。
1つはANA(全日本空輸)のシステム関連会社であるANAシステムズのセッションである。「システム運用のDX化 ~ServiceNowを運用基盤としたNo-Opsへの取り組み~」と題し、ANAグループ全体で250以上あるシステムの運用を自動化するプロジェクトについて紹介した。
同社 運用サービスマネジメント部 部長の白土和彦氏は、「ANAグループにはメインフレームの時代から、オープン化、クラウド化などの歴史を経て様々なシステムが混在しており、運用の煩雑さや属人化が大きな課題となっていました」と説明。そこで、トータルに自動管理できる環境を整えるためServiceNowの導入を決定。「管理の負荷を減らし、より価値の高い業務に人的リソースをシフトさせることを目指しました」(白土氏)と明かす。
白土氏と共に登壇した運用サービスマネジメント部 テクニカルマネージャの西田哲也氏は、「可視化や監視のための様々なツールと容易に連携できて、ITILに準拠した機能が利用できる点を評価してServiceNowを選びました」と説明する。
運用サービスマネジメント部 部長
白土 和彦 氏
運用サービスマネジメント部 テクニカルマネージャ
西田 哲也 氏
同社は、手始めにシステム運用に関わる「リクエスト管理」「オペレーション管理」「イベント管理」の3つの自動化に着手しているが、今後、DevOpsやセキュリティ管理などにも用途を広げていく考えだ。
2つ目は、神奈川県藤沢市の事例セッションである。藤沢市役所 企画政策部デジタル推進室 室長の山本慎一郎氏が、「藤沢市が考えるデジタル市役所『シン・シヤクショプラットフォーム』構想」と題して、行政DXの取り組みを紹介した。
企画政策部デジタル推進室
室長
山本 慎一郎 氏
他の市役所と同様に、藤沢市役所の行政サービスは、窓口で問い合わせや申請、手続きをしなければならず、サービスの内容ごとに窓口もバラバラであった。市民アンケートで「スマートフォンなどによるオンライン手続きを推進すべき」との回答が85%もあったことなどを受け、藤沢市役所はDX推進計画を策定。「どこでも」「ぴったり(ニーズに合う)」「簡単」の3つをコンセプトに、デジタル市役所づくりをスタートさせた。その基盤として、藤沢市が採用したのがServiceNowである。
山本氏は、「手始めに問い合わせ窓口の一元化から着手しました。スマートフォンなどでアクセスできるコンタクトセンターを設け、すべての問い合わせを受け付けるようにしたのです。受け付けた問い合わせがどの部署に回され、どこまで処理されたのかというステータスの管理もできるようにしたことで、“たらい回し”がなくなることを目指しました」と語る。
藤沢市役所は今後、子育て支援や福祉サービスなどの申請にも、ServiceNowを使ったプラットフォームを提供していきたい考えだ。
3つ目に紹介する事例セッションは、眼鏡やサングラスなどのアイウェアを企画・製造・販売するジンズである。同社 グローバルデジタル本部 ITデジタル部 コーポレート基盤グループ プロフェッショナルの原島洋将氏が、「ジンズが描くServiceNowを活用したデジタルトランスフォーメーションとは?」と題する講演を行った。
グローバルデジタル本部ITデジタル部
コーポレート基盤グループ
プロフェッショナル
原島 洋将 氏
ジンズは「Magnify Life」というビジョンを掲げ、デジタル戦略である「最高の顧客体験の実現」のためには既存のシステムのデジタル化が不可欠であると考えた。具体的には「個別最適化されたシステムを全体最適化し、事業環境がいかに変化しても、システムやプロセスを柔軟に組み替えて最善のサービスが提供できる環境づくりを目指しています」と原島氏は説明する。
それを支える基盤として、ジンズはServiceNowを導入。ローコード開発にも対応しており、業務部門の社員が自分たちで必要なシステムを簡単に作れる点も魅力的だったという。
同社は、ServiceNowのApp Engineを使って社内のグループウェアを刷新するところから活用を始めた。「プロセスの変更に対して事業部門が自ら手を動かしてシステムを変更することができるようになり、以前のグループウェアに比べて、スピーディに対応ができるようになった点に効果を感じています」と原島氏は語る。
ジンズは今後、ServiceNowを使った様々な仕組みをグローバルに展開していく方針だ。
生成AIがもたらす
Now Platformの進化
「World Forum:Tokyo」の締めくくりは、生成AI活用の話題を中心とするセッションである。
冒頭のServiceNow Japan 常務執行役員 ソリューション統括の原 智宏氏によるKeynoteセッションの振り返りに続き、フリマアプリや暗号資産、ブロックチェーンなど、多彩な事業を展開するメルカリでDigital Center of Excellence Sr.Managerを務める田中博之氏が登壇。「Employee Experienceの最大化を目指したデジタルワークフローの構築」と題し、メルカリが取り組む従業員エクスペリエンス向上のためのプロジェクトについて解説した。
Digital Center of Excellence
Sr.Manager
田中 博之 氏
2023年2月に創業10周年を迎えたメルカリには、現在約2000人の従業員が働いているが、社内サービスの利用を申請するためのポータルやシステムはバラバラで、生産性やエンゲージメントを損ないかねない要因となっていた。
「最高の顧客体験を提供している我々は、従業員にも最高のエクスペリエンスを提供し、エンゲージメントを高めるべきだと考え、ServiceNowの導入を決めました」と田中氏は説明。申請・承認までの流れがデジタルワークフローで自動処理され、完了するとメッセージングアプリで従業員に届く仕組みを構築した。
田中氏は「今後、生成AIの活用によって、さらなる生産性向上や従業員体験の最大化を図りたい」と抱負を語り、ServiceNowによる生成AIを使ったプラットフォームの進化に期待を寄せた。
これを受け、ServiceNow Japanの原氏が「生成AIがもたらすNow Platformの進化」と題するプレゼンテーションを行った。
常務執行役員 ソリューション統括
原 智宏 氏
ServiceNowの最新バージョンである「Vancouver」には、「Now Assist」と呼ばれる生成AIが組み込まれている。個々のアプリケーションではなく、それらを動かす基盤であるNow Platformに組み込んでいるのが注目すべき点だ。
原氏は「プラットフォームに生成AIを組み込むことで、ビジネスの隅々までその恩恵を行き渡らせることができます。例えば、業務プロセスのどこにボトルネックがあって、それをどう改善すれば、ビジネスがより良くなるのかといったことをAIがレコメンドしたり、自動的に改善したりしてくれるのです」と説明する。
業務プロセスに関する様々なデータが蓄積されたデジタルプラットフォームと生成AIが組み合わされば、ビジネスにもたらされる恩恵は格段に大きくなる。しかもその影響は、従業員のみならず、ITの管理者や開発者、顧客など、あらゆるステークホルダーにまで及ぶ。
IT開発者にもたらされるメリットの一例として登壇したServiceNow Japanのエバンジェリストの佐宗 龍氏は、テキストを入力するだけで生成AIがコーディングを行ってくれる仕組みを紹介した。
エバンジェリスト
佐宗 龍 氏
最後に原氏は「優れたユーザー体験をすべての組織に提供することが、ビジネスを成功させ、世界をより良くするきっかけになります。今日よりも明日をもっと良くするため、ServiceNowはこれからも皆様の取り組みをサポートしてまいります」と語った。
来年はどのような進化がお披露目されるのか? ぜひ期待したい。

