データを活用して
個々の顧客ニーズを可視化したい
ソニー銀行では、それまで顧客に対して一律のコミュニケーションを行うことが多かった。しかし、より高い顧客満足を実現するためには取引履歴データなどから顧客層を細分化し、個々のニーズに見合った情報を提供する必要があると考えたという。
これを実行するにはデータ活用の在り方を根底から見直す必要がある――。そう判断した同社は、全社のデータ活用を促進する主体としてデータアナリティクス部(以下、DA部)を2018年に設置し、並行して複数のデータ分析・可視化ツールの導入に踏み切った。そこで、データを社内で“共通言語化”するためのプラットフォームに選んだのが「Domo」である。
グラフなどのビジュアル性が高く、多くの社員がデータに触れやすい環境を構築するのに適していること、外部ツール連携機能が充実しており、さらには金融機関として確保すべきセキュリティ要件を満たしていたことなどが選定の決め手になったという。
「ビジネス部門の担当者は、これまでの経験に基づき立てた仮説をデータで確かめたいと考えていました。ところが、従来環境ではデータの抽出、集計に多くの時間を要し、データの裏付けを取るところまで行えていなかったのです。この環境を刷新するとともに、各分析ツールで得た結果をDomoに集約して閲覧できるようにしました」と同社の伊達 修氏は語る。

ソニー銀行株式会社
データアナリティクス部長
伊達 修氏
データが全社の
“共通言語”として機能
DA部は、まず外貨預金残高など主要な営業KPIのカード(ダッシュボード)をDomo上で作成した。理由は、多くの社員や経営層が見たいと考える指標だったからだ。同時に、社内に共有するデータの定義をDA部主導で統一した。以前は担当者ごとの集計方法の違いで数値が微妙に異なることがあったが、そのような事態の解消を図っている。
Domoの社内への浸透は当初スローペースだった。しかし、ビジネス部門のニーズをDA部が徹底的にヒアリングし、「営業データを日次で見たい」といった声があれば、それまで月次更新だった営業データを日次で更新するようにした。さらに「どこにどんなデータがあるのか分からない」といった声を受ければ、データへの導線やデザインを改善。このような活動を継続的に行うことで徐々に注目度がアップしたという。
Domoユーザーの利用割合も増え続けている。なお、ユーザーの利用状況についてもDomo上で可視化しており、使用頻度が低い社員にはDA部から今後の利用見込みについてヒアリングを実施、利用見込みのない社員のアカウントは別の社員に付与するといった取り組みも実施している(図1)。

図1 Domo上でDomoユーザーの利用状況を可視化
Domoユーザーの利用状況をワードクラウドで可視化している。DA部は、この情報を基に、Domoアカウントを適切に管理、一層の利用促進に向けた活動も展開している
「活用が進むにつれて、多くのビジネス部門でタイムリーなデータに基づいて会社の状況を判断したり、顧客のインサイトを把握しようとする機運が高まってきました」と伊達氏。最新の営業データにいつでもアクセスできるため、各担当者が必要なアクションを迅速にとれるようになったのだ。
「役員の間でも、高頻度に使うのは圧倒的にDomoです。『今日Domoで見たらこうだった』といった会話を日常的に交わしています。私も、役員定例会で話すときにはDomoの画面をスクリーンに投影しています。まさにデータが社内の共通言語になったことを意味しているのではないでしょうか」と鈴木氏は評価する。
「三位一体」の取り組みが奏功して
業績も向上
Domoのダッシュボードは現在、顧客ニーズに根差した新商品・サービスの開発や、マーケティング活動の領域でもフル活用されている。
そのことと関連して、注目すべきデータがある。2023年3月にソニー銀行の外貨預金残高は過去最高の5011億円、国内銀行の個人外貨預金高におけるシェアは過去最高の約9%に達した。もちろん、背景には様々な要因が関係しているが、Domoによるデータ活用がその一部を担ったものと考えられるのではないか。伊達氏も「データ活用の拡大が業績の拡大にいい影響を与えているというのが社内での認識だ」と述べる(図2)。

図2 Domo活用の進展とともに業績も伸長
多角的なデータ分析によって顧客のインサイトをリアルタイムに把握し、セグメントに応じた最適なマーケティング施策を展開したことが1つの要因と見ている
それでは、ソニー銀行におけるデータ活用が軌道に乗り、大きな成果を生み出せた理由は何なのだろうか。ポイントは、ビジネス部門、データ部門そして経営層が密接に連携しながら協働する「三位一体」の取り組みにあるといえるだろう。
「データ活用に向けた各部門の活動が乖離しないよう、ある時期に組織体制も見直しました。具体的には、私がDA部とビジネス部門に当たる営業推進部門の両方の担当役員になり、活動に横串を通す体制としたのです。同時に、DA部と営業推進部門のパイプ役を果たす兼任の社員も置くことで、立ち位置が異なる三者のベクトルを一致させることを強く意識しています」(鈴木氏)
ドーモ社は、「経営者」「事業部門」「IT部門」のそれぞれが抱える課題を理解し、三者の橋渡し役となってデータ活用を促進する「データアンバサダー」を組織内に置くことを提唱している(図3)。ソニー銀行では、経営観点で鈴木氏、現場観点で伊達氏がまさにその役割を体現する存在となっている。

図3 ドーモが提唱する「データアンバサダー」
経営者、事業部門、IT部門をつなぐ橋渡し役となってデータドリブン経営を推進する。このような人物/チームの存在が、データ活用促進の要になるとドーモは考えている。ソニー銀行における鈴木氏、伊達氏はまさにこのデータアンバサダーを体現した存在といえる
仮にDA部とビジネス部門の連携が弱ければ、「なぜデータ分析に基づいた施策を展開しないのか」「データだけで現場のことは測れない」というように反目しあう可能性もある。経営層もコミットした三位一体の取り組みは、それを防ぎ、スムーズなデータ活用の全社展開を実現するうえで不可欠なアプローチといえる。
ビジネス部門が自らデータ分析を実践することも視野に
業務を回し改善するサイクルを定着させる
社内のデータ活用がある程度成熟した今、同社はデータ活用を次のフェーズへ移行させることを検討している。
これまでデータ分析作業はDA部が各部門から依頼を受けて行うスタイルを採ってきた。だが、全社的なデータ活用のさらなる拡大に向けて、ビジネス部門でも分析作業の一部を実践できれば、データの活用スピードがもう一段高められると考えている。
「そこで、将来的にはDA部が各ビジネス部門で分析が行えるようデータを整備、提供し、さらに分析ツールをコーディネートすることで、DA部だけでなく各ビジネス部門でも分析が行えるようなフェデレーション型の運用体制に移行することを検討しています」と伊達氏は言う。そのためには、各ビジネス部門でデータ分析を実践できる人材を育成することが必要だ。育成体系を整備するとともに、全社のデータ資産を適切に管理するためのデータガバナンス強化も見据えている。
Domoの活用をスタートさせてから数年を経た今、ソニー銀行はいよいよ本格的なデータの民主化に向けて歩みを進めようとしている。次回Vol.4では、各ビジネス部門の活用エピソードを紹介したい。

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ドーモ株式会社
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