「2024年問題」の、その先の課題を見据えているか? 小売り世界最大手企業の元グローバル物流トップが描く20XX年のロジスティクス 「2024年問題」の、その先の課題を見据えているか? 小売り世界最大手企業の元グローバル物流トップが描く20XX年のロジスティクス

「2024年問題」は5年前に対策済み
「2024年問題」は5年前に対策済み

これからの物流のあるべき姿

「人手を解放する」「共同する」「つながる」

富士フイルムロジスティックス(FFL)は2003年、富士ゼロックス流通(当時)と合併したことで現在の姿になった。以来、富士フイルムグループ各社の事業戦略を物流面で支えながら、グループ全体の競争力向上に貢献している。同社の特徴は倉庫やトラックを保有しない「ノンアセット型」の物流会社であること。荷主であるグループ事業会社と、倉庫や輸送などを請け負う協力会社との間に立ち、最適な物流プランを構築することで、必要なモノを、必要なときに、最も合理的な方法で届けている。

「合併当初は両社が別々の基幹システムを使っていたこともあり、業務は煩雑を極めました」。こう話すのは、同社代表取締役社長の三ツ井忠氏だ。「デスクに3台のパソコンを用意し、旧FFL、旧富士ゼロックス流通、海外物流など案件ごと使い分けて荷主や協力会社と連携していました。その後、システムを統合したのが2006年。その頃からもっと業務や組織を効率化しようという機運が高まり、両社でそれぞれに抱えていた拠点などを見直していきました」(三ツ井氏)。

効率化の効果は、年間十数億円のコストダウンといった具体的な金額として現れた。しかし、コストを下げるだけの効率化ではいずれ限界が来る。単なるコストダウンではない、本当の意味での物流の効率化とは、どうあるべきか。模索する日々が続いた。

富士フイルムロジスティックス株式会社
代表取締役社長

三ツ井 忠

転機となったのは2018年。目指すべき未来の社会の姿として経団連が「Society5.0時代の物流」を提言したのだ。「人手を解放する物流」「共同する物流」「つながる物流」などをテーマに、最先端の技術を活用しながら物流の抜本的な変革を目指すというのが趣旨。これが同社の効率化戦略にとって大きなヒントとなった。

まず「人手を解放する物流」は、ロボットや自動走行車による省人化などを指す。こうした取り組みを三ツ井氏は次のように捉えている。「機械によって人を重労働や単純作業から解放する、いわば工場のオートメーション化と一緒です。そこで我々は『人手を解放する物流』をAX(アナログ/オートメイテッド・トランスフォーメーション)と名付けました」(三ツ井氏)。

富士フイルムロジスティックス株式会社
代表取締役社長

三ツ井 忠

「共同する物流」は、業界の垣根を超えた配送などの取り組みを指す。富士フイルムグループは「ヘルスケア」「マテリアルズ」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の4つの領域で事業を展開している。カメラ・フィルムや化粧品などのコンシューマー製品から、医療機器・医薬品、オフィス向け複合機といったB to B製品まで、取り扱う製品は多種多様だ。それらをグループ各社が共同で保管したり、配送したりすればグループのシナジー効果が期待できる。そこで「共同する物流」をSX(シナジー・トランスフォーメーション)と定義した。

そして「つながる物流」は、IoTやビッグデータの活用、つまりDX(デジタル・トランスフォーメーション)だ。「デジタル技術を活用して情報の可視化やリアルタイム共有といったことができれば、さらなる業務の効率化が果たせるのではないか――。そう漠然と考えていた時、私の前に彗星のごとく現れたのがHacobuの佐々木社長でした」と三ツ井氏は振り返る。

個別最適から全体最適へ

データ共有がステークホルダーをつなげる

二人が出会うきっかけとなったのは、2018年にFFLが東日本の物流拠点として千葉県船橋市の物流施設(東HUB)に移転したことに遡る。それまでの拠点ではトラックへの積み込みを低層階で行っていたが、移転先の東HUBは施設の5階。これまでのように電話でドライバーに呼び出しの連絡をしたり、場合によっては待機場所まで呼びに行くといった対応は不可能だった。

トラックを5階までどうやって呼び出すか――。移転を前に課題として持ち上がった。「それを解決したのが施設に標準装備されていたHacobuの『MOVO Berth(ムーボ・バース)』だったのです。本当に画期的なシステムだと思いました。この先に我々の目指すDXがあると直感し、すぐに佐々木社長に面会を申し込みました」(三ツ井氏)

株式会社 Hacobu
代表取締役社長 CEO

佐々木 太郎

「その時は、我々が目指す物流のDXについて話しました」とHacobuの佐々木氏は振り返る。「企業間物流は荷主や物流事業者、運送会社などさまざまなステークホルダーによって成り立っていますが、それぞれが個別最適になっており、情報が各社に滞っている点が大きな問題であると認識しています。全体最適を目指すには、各ステークホルダーが持つ情報をデジタル化し、データ同士をつなげることが欠かせません。そうした思いから開発したのが当社の『MOVO(ムーボ)』シリーズです(※1)。FFLさんの目指す物流の効率化にも非常に共感しましたし、『MOVO』がお役に立てると思いました」(佐々木氏)

(※1)MOVO Berth、MOVO Fleet、MOVO Vista

『MOVO』と出会ったことで、三ツ井氏は物流におけるDXのあるべき姿がより明確になった。それは紙や電話で行っていた業務を単にデジタル化すればいいのではない。デジタル化した情報をデータとして共有し、ステークホルダー同士がつながることに他ならない。このデータ連携の先にFFLが目指す「付加価値を創出する物流」が完成すると考えた。

株式会社 Hacobu
代表取締役社長 CEO

佐々木 太郎

■富士フイルムロジスティックスが目指す「付加価値を創出する物流」

『MOVO Berth』の導入効果

ドライバーと倉庫の荷役が直接つながる

富士フイルムロジスティックス株式会社
国内第二事業本部 中央物流部
統合輸送センター長

小林 潤

実際に東HUBで『MOVO Berth』を導入するとステークホルダー同士のつながりはすぐに生まれた。「例えば、ドライバーと倉庫の荷役といった別々の協力会社さん同士が情報を連携し合い、積み込みや荷卸しを行うようになりました」――。そう話すのは、富士フイルムロジスティックスで国内幹線輸送の管理を担当する小林潤氏だ。

トラックを5階に呼び出すためのツールというのが導入のきっかけではあったものの、使い始めてみると、単に呼び出すだけでなく、作業の終了時間も事前に計画でき、さらにそれをドライバーと倉庫の荷役が直接共有することで、生産性の向上や拘束時間の管理につながった。

富士フイルムロジスティックス株式会社
国内第二事業本部 中央物流部
統合輸送センター長

小林 潤

富士フイルムロジスティックス株式会社
国内第二事業本部 中央物流部
統合輸送センター シニアエキスパート

長谷川 清孝

シニアエキスパートの長谷川清孝氏はこう続ける。「これまではステークホルダーが個々に部分最適を追求し、その間を電話やファクス、メールなどで補っていました。『MOVO Berth』を導入すると、それを起点に当社と協力会社が同じプラットフォームで同じ情報を共有できるようになったのです。ここまでの機能を想定していなかっただけに、ステークホルダー同士のデータ連携のメリットの大きさには驚きました」。

同社は長谷川氏・小林氏が在籍する輸送部門以外に、倉庫部門の2つの事業部で構成される。トラックの呼び出しは輸送部門の管轄であったため、『MOVO Berth』を使うことで直接的なメリットを受けるのは輸送部門と思っていた。しかし、結果的に倉庫部門とその協力会社にも多くのメリットをもたらした。

富士フイルムロジスティックス株式会社
国内第二事業本部 中央物流部
統合輸送センター シニアエキスパート

長谷川 清孝

「初めに多くの人が実際にメリットを感じることがとても重要だと思います。なぜなら、デジタル化の意義は、データでステークホルダー同士がつながることにあるからです。たくさんのステークホルダーがデジタル化のメリットを享受できれば、次のデジタル化への障壁も下がります。その意味で『MOVO Berth』は最適でした」と小林氏。

『MOVO Berth』は、54万人のドライバーが登録し(※2)、 国内ドライバーのおよそ3人に2人が利用する(※3)国内シェアNo.1(※4)を誇るバース予約システムだ。荷待ちや荷役作業など、物流センターの課題をダイレクトに解決するだけでなく、最短2週間で導入できるなど、多くの人が恩恵を受けやすい、デジタル化の「入り口」にうってつけのシステムなのだ。実際にドライバーの待機時間は導入前より約8割減ったという。

(※2)利用者が「MOVO Berth」を利用する際に登録するドライバー電話番号の累計ID数

(※3)令和2年国勢調査(総務省)における「道路貨物輸送業」の「自動車運転従事者」の総数 77.9万人より試算

(※4)出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2023年度版】』
    https://mic-r.co.jp/mr/02960/ バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア

さらなるDX化への施策

「つながる物流」の輪を広げる

たくさんのステークホルダーが『MOVO Berth』にメリットを感じたことで、動態管理サービスの『MOVO Fleet』や配送案件管理サービスの『MOVO Vista』など、Hacobuのそれ以外のツールの導入にもつながり、FFLのデジタル化はさらに進んだ。組織が輸送部門と倉庫部門に分かれていることもあり、これまでのコミュニケーションは、どうしても縦割りになってしまいがちだったが、データという「共通言語」ができたことで、コミュニケーションのあり方が一変したという。

コミュニケーションのあり方が一変したのは、社内だけではない。『MOVO Vista』の導入によって、これまでメールやFAXで行っていた運送会社とのやりとりが、『MOVO Vista』上でのコミュニケーションに変化した。『MOVO Vista』に情報が一元化されることで、両者での認識の齟齬もなくなり、コミュニケーションが円滑になった。また、輸送オーダーや車両情報がデジタル化されることで、運賃照合や請求プロセスも『MOVO Vista』上で実施できるようになる。これにより現場の効率化・可視化をさらに進めていく予定だ。

小林氏は、「『MOVO』シリーズは、可視化やリアルタイム性に優れているので課題抽出がしやすい点もメリット」と話す。想定していた輸送計画と実際の輸送にどのようなミスマッチが生じているか、すぐに振り返ることができるのだ。

例えば、『MOVO Fleet』を使えば、トラックの移動時間・作業時間・待機時間を把握できる。計画と実際の動態とのズレを可視化し、「計画に無理があった」「付帯作業が生じている」など、その理由を突き止め、具体的な改善策を講じることができる。

また長谷川氏は「『MOVO Fleet』は、災害時や交通トラブルなどへの対応にも役立つ」と評価する。トラックの動態を本部のディスプレイで確認できるので、最新の交通情報と連携しながら、正確なルート変更の指示を出せる。「これまではドライバーの判断に任せていた部分を、我々を含めたステークホルダー全体で常に情報共有することで、全体最適を実現できるようになりました」(長谷川氏)。

■物流プロセスがデータでつながる

■ステークホルダーがMOVOでつながる

株式会社Hacobu
SaaS事業本部 営業統括部
ビジネスディベロップメント部
MOVO Vistaセールススペシャリスト

清水 雅斗

2024年問題が現実味を帯びる中、対応が追い付かない企業は少なくない。一方でFFLは、5年前の『MOVO Berth』の導入をきっかけに業務のデジタル化を推進し、データを活用した「つながる物流」を実現した。そんな同社にとって2024年問題は「すでに対応済み」の課題といえる。

とはいえ、同社の協力会社の一部には、デジタル化をさらに推進できる余地のある企業があることも事実。ノンアセット型の物流会社である同社にとって、協力会社は生命線であり、その存在なしには事業そのものが成り立たない。同社主導でさらなるデジタル化を促進するとともに、荷主であるグループ事業会社にもデジタル化のメリットを理解してもらいながら「つながる物流」の輪を広げていく考えだ。「FFLさんの『つながる物流』がさらに進化し、新たな価値を創出できるよう、これからも全力で支援したい」――。Hacobuで営業を担当する清水雅斗氏は最後に力強く語った。

株式会社Hacobu
SaaS事業本部 営業統括部
ビジネスディベロップメント部
MOVO Vistaセールススペシャリスト

清水 雅斗

1
2
データドリブン・ロジスティック最前線
INDEX
データドリブン・
ロジスティック最前線
INDEX
株式会社Hacobu
〒108-0073 東京都港区三田3-14-10 三田3丁目MTビル9F
https://movo.co.jp/
『物流 DX 実態調査リポート~「2024 年問題」対策の実態と課題』
https://www.go.movo.co.jp/DLDX2024_LP-Registration-2.html
株式会社Hacobu
〒108-0073
東京都港区三田3-14-10 三田3丁目MTビル9F
https://movo.co.jp/
『物流 DX 実態調査リポート~「2024 年問題」対策の実態と課題』
https://www.go.movo.co.jp/DLDX2024_LP-Registration-2.html