生成AI(人工知能)活用はビジネスのあり方を大きく変え、一人ひとりの仕事も変えていく。サプライチェーンの管理業務もその一つだ。生成AIはどのようにサプライチェーンの管理業務を変えていくのか。また、どう活用すればメリットを得られるのか。長年、サプライチェーンのコンサルティングをリードしてきた日本IBM コンサルティング事業本部の鈴村敏央氏にサプライチェーン業務における「AI活用の勘所」について話を聞いた。
――サプライチェーンに対するAIの適用領域はどんなところにあるとお考えでしょうか。
鈴村 サプライチェーンとは、調達から生産、物流、販売までよどみなくモノが流れるようにすることであり、納期は短く、在庫は少なく、生産・物流コストは安くというKPI(重要業績評価指標)を改善することがビジネス上の目標になります。
そのために在庫を抑えた無駄のない物流ネットワークを構築したり、生産効率を上げるために発注・生産ロットサイズを適正化したり、サプライチェーンの仕組みを見直すことが重要です。しかし、サプライチェーン担当者の業務は、緊急オーダーや生産・物流遅延などの例外対応、つまり調整業務に約7割もの時間が費やされているのが現状です。
これまでも地震や台風などの自然災害、突発的な事故などの例外対応を求められる事態は発生してきました。しかし、現在は地政学的なリスクや環境問題への対応など考慮すべきことも増えています。
問題なのは、こうした例外対応がビジネス上の意思決定を求められるという理由から、社員のメイン業務になっている点です。ただでさえ人材不足が深刻化する中で、社員が調整のための電話・メール対応に追われることになっています。AIを活用してサプライチェーンの弱点を解決することにより、貴重な戦力である社員をサプライチェーンの仕組みを見直すところに振り向けることができます。