

本田技研工業
株式会社
吉本 毅 氏
本田技研工業
株式会社
安原 重人 氏
日本アイ・ビー・エム
株式会社
藤井 涼平 氏
本田技研工業(以下、ホンダ)は、社内に散在する技術情報を抽出してナレッジのモデリングを行い、熟練技術者の知識と思考を共有・活用するAdvanced Expert System(A-ES)を開発した。さらにデータ抽出と構造化でIBM watsonx(以下、watsonx)とLLM(大規模言語モデル)を利用してモデリング時間の大幅な短縮を目指す。同プロジェクトを主導するホンダのチーフエンジニア 安原重人氏と吉本毅氏、それを支援する日本IBMの藤井涼平に、生成AI(人工知能)が製造業にもたらす価値について話を伺った。
――A-ESの概要と生成AI活用の目的を教えてください。
安原 EV(電気自動車)化、インテリジェント化が進む自動車業界は大きな変革期を迎えています。この変革をリードするには、熟練技術者の知識や思考を表出させて構造化し、開発を効率化する仕組みが必要と考えました。
その手法として、手順書や過去トラブルの報告書、設計情報などから言葉を抜き出して形態素解析して構造化するとともに、熟練技術者の思考の順序を機械言語で構文化し、両者をつなぎナレッジをモデリングしました。このモデルの編集・管理を行い、最適な開発手順を導き出すためのツールが「A-ES」です。
吉本 プロジェクトで最も苦労したのが、膨大な技術文書から情報を抽出して誰もがわかるように言語化し、1000ページ超の手順書を作成する作業でした。その作成だけで年単位の時間を要しました。さらに手順書は作成して終わりではなく、アップデートし続けなければ意味がありません。手順書作成には熟練技術者の知見が必要となるため、アップデート作業に熟練技術者の貴重な時間を費やさざるを得ないという課題がありました。そこで、生成AIを活用すればこの課題を解決できるのではないかと考えました。
安原 技術文書には文章化されていない短いテキストが散在していたり、解説のない表や画像だけで説明されていたりすることが多いため、はたして生成AIが正しく意味をくみ取れるのか、表構造や画像を正しく言語で説明できるのかなど、その精度を確認することがPoC(実証実験)の最大のテーマでした。
藤井 ホンダ樣の要望は非常に難易度が高く、一般的な対話型生成AIに使われるLLMでは実現困難でした。そこで今回は、テキストに意味を付与して要約させるLLM、表構造を理解できるLLM、画像を理解させるマルチモーダルモデルなど、多様なモデルを組み合わせた生成AIの環境を用意しました。これはお客樣の業務やユースケースの難易度に合わせた基盤モデルを柔軟に組み合わせられるwatsonxだから実現できた環境といえます。