未来を創るCloud ERP ~経営視点のデジタル変革を熱く語る~

クラウドERPで意志決定を加速しビジネス主導の改善サイクルを回す

渡辺氏
株式会社日本経済新聞社
取締役副社長 CDIO
サブスクリプション事業統括
渡辺 洋之
1985年日本経済新聞社入社。経営及びIT関連媒体の編集記者や編集長を経て、2009年から日本経済新聞社の電子版開発プロジェクト責任者の1人に。23年より現職。24年3月、同社取締役副社長に就任。

日経電子版の成長によって、日本経済新聞社では従来の新聞ビジネスではつかめなかった顧客の行動を直接見られるようになった。渡辺氏はその効果に着目する。

「新聞は卸売販売のモデルでしたが、電子版によって直販モデルのビジネスを構築しました。それによって顧客のデータを直接見られるようになりました。顧客の行動や声を生かしたサービスの改善をスピーディに進めるために、社内に合計で100名近くのエンジニアとデータサイエンティストが働いており、スマホアプリの開発は内製化しています」

同社は2022年からOracle Cloud ERPを導入して経理財務のDXを加速させているが、これによって日経電子版の顧客データを経営に素早く伝え、意志決定に生かすことも可能になった。

今後のERPの利用拡大について、各社はどう考えているか。

日本経済新聞社の渡辺氏は、Oracle Cloud ERPを使って管理会計を強化したいと話す。従来、課目ごとではなくまとめて「一式」のような伝票がやり取りされていた古い慣習にメスを入れて、評価の精度を高めたいとする。さらに、電子版によって分かったデータ駆動による経営を、紙の新聞にも拡大したいと考えている。

「紙の新聞は『読者』と呼んでいます。それを『顧客』と言い換えることで、顧客満足を実現するにはどうすればいいか、皆で考えるようになると思います。何らかの方法で、紙にも直接課金するなどの方法を使いながら読者のデータをつかまえる仕組みを作り、それとERPのデータを組み合わせて新しい経営の指標を作ることができないか模索しています」(渡辺氏)

JVCケンウッドは、2社のシステム統合によって経営会議のデータの鮮度が格段に向上したことを評価している。

「月2回の経営会議のためのデータを集めるために、従来は人海戦術でやっていて2~3週間かかっていました。それがOracle Cloud ERPによって3営業日でグローバルの経営数字を出せるようになりました。しかし、まだ3日前の数字で経営判断をしているということですから、さらに精度を高め、経営のスピードを上げていきたいと考えています」(園田氏)

イトーキの湊氏は、クラウドERPとつながる領域をさらに拡大したいと意気込みを語る。

「会計やサプライチェーンはどちらかというと営業系、それ以外のシステムはまだレガシーなものが残っているので、今後は人事などに範囲を拡大させないとデータの鮮度を保てないと思っています。また、例えばAIなどの新しい技術はクラウド基盤の上のツールを使うわけですが、そのAIを使いこなせる人材を社内に増やしていく必要があります。多少のチューンアップであれば自社でできるように、その人材をどうやって育てていくかが課題です」(湊氏)

湊氏が、園田氏と同様にデータの鮮度にこだわる理由はもう1つある。

「経営が意志決定に使うデータは、すべて同じ切り口でそろっていることが重要です。クラウドERPになっても、社内の各部門がデータを送ってきたときに、元のデータが正しくなければ、正しい検討や意志決定ができません。『Excel職人』がデータを加工してきた時代と同様、自分たちの部署にとって都合のいいデータにならないよう、ルールを定めなければいけません」

また、SaaSの利用には、ユーザー同士の情報共有が力になると、冒頭のUCC黒澤氏は指摘する。

「以前はシステムを動かすために、システム会社やソフトウェアベンダーに依存しており、作る側と使う側が分離していました。しかしSaaSの場合は、基本的にすでに動いているものを使います。そのため、いかに使いこなしているユーザーのベストプラクティスを採り入れるかが重要です」(黒澤氏)

これについては渡辺氏も同意し、「私はCDIOを拝命しているが、元は記者の出身でデジタル事業に携わっているものの、会社全体の動かし方となると知らないことが多い。経営者として、デジタルで次に何をすればいいのか、コミュニティを通じて他社のかたに聞いて回っています」と語る。

最後に園田氏は「ユーザー会を通じてリテラシーを上げていくことで、ノウハウが共有され、その情報がオラクルにフィードバックされて、全世界の業務プロセスが底上げされていく。そんな循環がユーザー起点で回っていきそうな、大いなる期待があります」と語った。

ユーザー同士の力を結集してシステムの改善と標準化を拡大できることも、クラウドの大きなメリットである。これは、エンドユーザーに限らない。オラクルのクラウドERPによる変革は、企業経営に大きなインパクトをもたらすことが見えてきた。