人口減少の勢いはますます強まっている。国立社会保障・人口問題研究所によると、2010年に8000万人を超えていた生産年齢人口(15~64歳)は、2030年には約7000万人となる見通しだ(出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023年改訂版)」)。
一方、高齢化率は2030年に31%に達すると予想され、2010年には生産年齢人口約2.8人で高齢者1人を支えていたのが、2030年には約1.8人で1人を支える計算になる(出典:内閣府「平成25年版高齢社会白書(全体版)」)。
「社会保障支出の増加や介護の人手不足などの社会問題が、ますます深刻化することになるでしょう。社会生活の経済的な基盤となるGDP(国内総生産)もどんどん縮小していきます。これがいわゆる『2030年問題』です」
そう説明するのは、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の岩本 隆特任教授だ。
GDPを維持するには、減り続ける労働力を補うために、1人当たりの生産性を上げるしかない。「生産年齢人口が20%減るとなると、少なくとも1人当たりGDPを20%以上高める必要があります。そのためには、男女間の賃金格差の是正や、デジタルテクノロジーのさらなる活用に取り組む必要があるでしょう」と岩本特任教授は指摘する。
カギを握るのは、生産性の低い仕事はデジタルツールに任せ、人は「高付加価値の仕事」に専念するというすみ分けだ。
生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進歩によって、人がやってきた雑務や単純業務をデジタルに置き換える動きは進んでいる。ただし、「日本企業は、事業部門でのデジタル活用は比較的進んでいるものの、管理部門での活用は諸外国と比べて遅れています。コストセンターであるバックオフィス業務のデジタル化をいかに推進するかが課題です」と岩本特任教授は語る。
何より、全従業員のデジタルリテラシーを高め、デジタルを積極活用する社内風土を整えることが重要だ。
岩本特任教授は、「自社のあるべき姿を描き、それを実現するデジタルリテラシーを備えた人材を採用・育成する人的資本経営戦略が求められています」と提言する。