物流は生命線――。そう言い切る企業がある。創業100年の老舗食品卸、三菱食品だ。その心は、食品卸というビジネスの使命にある。「国民生活に欠かせない食品を、最も効率的なチャネルを通じて消費者に届ける。それが、私たちのミッションです」。代表取締役社長の京谷裕氏は力強く説く。
ところが、物流の持続可能性が危ぶまれ、ミッションの達成に向かい風が吹く。しかも、単価の低い食品はコストの吸収力に欠ける。値上げ要請に応えられず、輸配送業務を委託する協力会社に手を引かれれば、窮地に陥る。「輸配送できないでは済まされません。誰よりも主体的に物流改革に取り組む必要があります」(京谷氏)。
改革への打ち手は、次々に繰り出してきた。
輸配送の可視化を皮切りにデジタル活用に力を入れ、データを基に輸配送の全体最適を追求できる体制を整えた。さらに、食品卸の枠を超えた消費財デマンドチェーンの構築をにらみ、100%出資の新設子会社に物流事業を切り離す一方、化粧品・日用品卸のPALTACとの連携・協働を決めた。
大胆な意思決定を支えるのは、物流改革は最重要の経営アジェンダという強い信念だ。「改革にはお金も時間も人材もいる。ただ、それらをコストと捉えると、手を出しづらい。将来の競争力を生む投資と捉えたい。投資効果は、コストの削減だけでなく、顧客体験の向上や環境負荷の低減にまで及ぶはずです」(京谷氏)。
向かい風を受けながらも大胆な意思決定を下せた理由は、ほかにもある。それは一体、何なのか――。京谷氏への取材からひも解いていこう。
