三菱ふそうは、2003年以降の独ダイムラーグループからの資本参加によってグローバル企業としての変革の道を歩んでいる。その取り組みを進める中、多岐にわたる人事的な課題に直面していた。
まず、従来の年功序列型人事制度ではグローバル人材の獲得・維持が困難になった。同社IT・プロセス本部ITセールス&カスタマーサービス・クロスファンクション部部長の稲垣善央氏は、次のように語る。
「当時、人材のグローバル化が進んでいましたが、給与昇給の体系はほぼ横並びで、毎年の評価に応じて定められた割合で徐々に昇給していくシステムでした。そのため、グローバルな人材市場で、その人のスキルや市場価値を考慮しつつ、成果とコンピテンシーに基づく柔軟な人事システムを目指してきました。しかし、当時は市場価値に見合った処遇を提供できなかったため、とくにIT部門では、給与面が原因で優秀な人材を採用の最終段階で逃したり、入社後数年で他社からのより良いオファーを受けて退職するケースが頻発していました」
また、同社の社員はトラック、バスのメーカーとしてエンジニアをはじめ、工場の製造担当、販売、アフターサービスなど、異なる専門性を持つ人材の集合体であり、管理するための規定もそれぞれに異なっていた。「例えば、生産ラインの従業員、セールス・センター(販売店)のメカニック、本社間接部門の社員の目標設定や評価は、以前は複数のExcelシートで行っており、自己評価、マネージャー評価、人事による評価や承認プロセスに膨大な工数をかけていて入力間違いによる修正工数もありました」。
さらに、外資系企業特有のマトリクス組織構造になったことで、上司への報告と人事評価のラインが別々に存在し、人事部門は同じ情報を2回入力する必要があるなど業務が煩雑になった。加えて、国内組織にも多国籍の人材が増え、英語での文書作成やコミュニケーションが中心となるなど、多言語への対応も必要だった。
このような複雑に絡み合った課題を解決するためには、グローバル標準の人事制度への変更と、それを動かす人事プラットフォームの再構築が不可欠だった。稲垣氏をはじめとしたIT部門は、この問題にどう挑んだのか。