JALグループが挑む自動化を見据えた改革
複雑で面倒だった申請プロセスを
統合ポータルでシンプル化
2018年4月、ITインフラのハイブリッドクラウド基盤への移行とともに、基盤運用のための仕組みとしてServiceNowをベースとする統合ポータル「CIEL/manager」を構築したJALデジタル。
同社が統合ポータルの設置によって目指したのは、①問い合わせ/作業受付の集約、②情報(ナレッジ)の集約、③セルフサービスの提供、の3つであった。
「複数の担当者に行っていた申請を1つの窓口に集約し、申請手順などのナレッジをポータル上で確認できるようにすることで、申請者(システム開発担当者)の手間を解消することを目指しました。最終的には、インフラ管理の担当者を介さなくても、申請の受付から承認、変更作業までのすべてが自動処理されるフルセルフサービスの実現を目標としています。これが進めば、管理担当者の業務負荷も大幅に軽減されるはずです」と語るのは、同社ハイブリッドクラウド基盤部 クラウド基盤運営グループ チーフの爰野寛太氏である。
システムマネジメント本部
ハイブリッドクラウド基盤部
クラウド基盤運営グループ
チーフ
爰野 寛太 氏
とはいえ、新しい仕組みが定着するまでには時間がかかる。「CIEL/manager」をリリースしてからの6年間は、いかにそれを「活用してもらうか?」という苦労の連続であった。
「いきなりすべてを変えると、ユーザーであるシステム開発担当者が困惑してしまいます。そこで、まずは『お知らせ』やナレッジ管理などの情報提供機能をリリースし、時間を置いて利用申請のためのサービス窓口機能を追加するといったように、段階的に機能を増やしていきました」と爰野氏は説明する。
サービス窓口機能をリリースした後も、エクセルの申請書に申請内容を入力し、メールでインフラ管理担当者に送るという従来のやり方を続けるユーザーは少なくなかった。当初はインフラ管理担当者が、ユーザーの申請書に入力された内容を「CIEL/manager」に再入力するという作業を行っていたが、これでは無駄な時間が取られてしまう。
「移行を促すため、ユーザーに向けて地道なプロモーション活動を重ねました。それでも思うように切り替えが進まなかったので、ある時点で『「CIEL/manager」経由でなければ申請を受け付けません』というアナウンスも行っています。半ば強制的に移行を呼び掛けたことで、ようやく活用が定着しつつあります」と、爰野氏はこれまでの苦労を語る。
6年間の運用を通じて
見えてきた課題とは?
運用開始から6年を経て定着してきた「CIEL/manager」。今では「『CIEL/manager』経由でないと、『CIEL』を利用できない」というユーザーも増えているという。地道なプロモーション活動は着実に成果を上げているようだ。
しかし、JALデジタルはそうした現状に満足することなく、「CIEL/manager」の効率性やユーザビリティを向上させる取り組みを継続している。
6年間の運用を通じて、いくつかの新たな課題も見えてきた。それらを一つひとつ改善する取り組みを行っている最中である。
これまでに解決してきた課題の例として、①バージョンアップ作業の効率化、②ユーザーフィードバックを効果的に収集・分析する仕組みの確立、③クラウド利用者の増加に対応した手動管理から自動化への転換、の3つを挙げるのは、同社ハイブリッドクラウド基盤部 クラウド基盤運営グループ チーフの中村和史氏である。
システムマネジメント本部
ハイブリッドクラウド基盤部
クラウド基盤運営グループ
チーフ
中村 和史 氏
まずは、バージョンアップ作業の効率化。「CIEL/manager」の基盤であるServiceNowは、年に1回バージョンアップを行っている。それに合わせて、ServiceNow上でカスタマイズした「CIEL/manager」の機能がバージョンアップ後もしっかりと動き、従来通りのサービスを問題なくユーザーに提供できるかどうかをテストする必要がある。
「従来はこのテストをすべて手作業で行っていました。しかし、運用年数が経過するにつれてカスタマイズした機能の数がどんどん増え、手作業による処理では膨大な時間がかかるようになっていたのです」と中村氏は振り返る。
また、バージョンアップは年に1回のため、その間にテストの担当者が代わることも多い。そのため、「どこを点検するのか?」という実施内容が継承されず、新しい担当者がほとんど知識のない状態からテストを始めなければならなくなるという課題もあった。これも、テストに要する時間が長くなっていた原因だ。
この課題を解決するため、JALデジタルはServiceNowの機能を使ってテストを自動化することにした。
「ServiceNowには、ATF(Automated Test Framework、テスト自動化フレームワーク)という機能があります。これを使って、バージョンアップのたびにカスタマイズした部分に問題が生じないかどうかを自動で発見できるようにしました」と中村氏は説明する。
発見した問題は手動で直す必要があるが、問題箇所を見つける作業が自動化しただけでも、かなりの業務効率化につながっているという。これまでに、手作業で行っていたテストのうち、約67%がATFに移行したそうだ。