6年間の運用で見えてきた新しい課題

JALグループが挑む自動化を見据えた改革

ユーザーからのフィードバックを基に
使い勝手を改善

2つ目のユーザーフィードバックを効果的に収集・分析する仕組みの確立は、「CIEL/manager」を使ってITインフラ基盤の手配を申請するシステム開発担当者のUX(ユーザーエクスペリエンス)を、適切かつ迅速に高めていくための取り組みである。

「CIEL/manager」の活用を促すためには、使い勝手の良い統合ポータルとなるように改善を重ねていかなければならない。しかし、従来は「ここが使いにくい」「この部分を改善してほしい」というユーザーからのフィードバックを効率よく収集する手段がなく、どのリクエストから対処していくべきなのかという優先順位付けも困難だった。

そこでJALデジタルは、フィードバックを収集する仕組みとして、ユーザーからの問い合わせがクローズしたときに、「サービスの品質はいかがでしたか?」というアンケートを行う仕組みを構築。さらに、ユーザーが「CIEL/manager」を使ったとき、どんな点につまずいているのかという行動データを定量化した。

これらの収集データを、ServiceNowの分析ツールである「Performance Analytics Success Dashboard User Experience」に取り込み、UXのボトルネックとなっている箇所の特定や、どのボトルネックから改善していくべきかという評価を行うことにした。

「データに基づくUXの改善が図れるようになったことで、対応のスピードが速まり、すべてのユーザーにとって満足度の高い改善が実現できるようになったのが大きな成果です」と中村氏は評価する。

ちなみに、ServiceNowの分析ツールを使ってUX改善に取り組む前の時点で、ユーザーの「CIEL/manager」に対するサービス満足度は77%であった。すでにかなり高い満足度が得られていたことになるが、中村氏は「むしろ23%の改善余地が見つかったことに意味があると考えています。これを限りなくゼロに近づけるために改善を重ねていきたい」と語る。

3つ目のクラウド利用者の増加に対応した手動管理から自動化への転換は、「CIEL/manager」の活用が進んだことで浮かび上がった課題である。JALデジタルとしては「CIEL/manager」の活用をさらに促進したいが、申請等を処理する作業が手動のままではボトルネックとなってしまう。これを解決するため、同社は処理作業の自動化に向けた2つの対応策を実施した。

セルフサービスを採用して
担当者の業務負荷を減らす

その1つは、申請プロセスの自動化と管理の簡素化である。ServiceNowのCatalog ItemとWorkflow Studioという2つの機能を使って、既存の申請プロセスをよりシンプルなものに改善。申請された内容に基づいて自動的にワークフローが設定され、作業を行う担当者がアサインされる仕組みを構築した。その結果、申請を受け付けた担当者が、作業を行う担当者にメールで依頼をするといった手間がなくなり、対応のスピードも速まった。

また、申請を受けてからどのくらいの時間で返すか、というサービスレベル指標も取り入れている。ServiceNowベースのシステムでは、利用者に対するレスポンス時間や、どこで止まっているかが可視化できる。それらを可視化して、一定のサービスレベルを提供し続けている。

中村氏は、「人手で申請を取り次いでいたときは、どの担当者をアサインすれば良いのかを決めるのにも時間がかかっていましたが、自動化によって適切な担当者がすぐ任命できるようになりました」と語る。

ワークフローの自動化によって、申請処理に関するケースごとの多様なデータが蓄積されるようになったのも大きな効果だ。「蓄積されたデータを分析することで、プロセスを改善したり、セルフサービス化を図ったりすることができるようになりました」と中村氏は評価する。

もう1つの対応策は、「CIEL/manager」とクラウド基盤との連携によるワンストップセルフサービスの実現である。

Workflow Studioには外部連携機能がある。これを使って「CIEL/manager」と「CIEL/J」「CIEL/S」を連携させ、ユーザーが「CIEL/manager」上から2つのクラウド基盤の設定を自分で行えるようにしたのだ。

「CPUメモリの変更やファイアウォールの設定変更などがセルフサービスでできるようになりました。その結果、これまでは申請から変更までに10日ほどかかっていたリードタイムが最短で1日まで短縮されています」(中村氏)

運用開始から6年の間に様々な課題に直面したが、JALデジタルは、ServiceNowの機能やツールなどを活用しながら1つずつ解決し、「CIEL/manager」のユーザビリティ改善や業務の効率化を推し進めてきた。

中村氏は、「様々な取り組みの中で得られた教訓も多い」と明かす。システムを業務に合わせるのではなく、業務からシステムに歩み寄ること。推測でサービスを構築するのではなく、データを基にユーザー目線で使いやすいものを検討すること。運営推進チームの推進体制は惜しまず確保することなどだ。

これらの教訓をもとに、JALデジタルは今後も「CIEL/manager」のUXや業務効率の改善を図り、クラウド基盤の活用を促していく方針である。それが、より良いシステムの開発やデジタル化の推進につながり、JALグループの信頼と競争力を高めるからだ。

矢是氏は、「クラウド基盤管理を担当するスタッフたちは、より良い管理の仕組みを構築しようと、日々モチベーション高く取り組んでいます。これからも、シンプルで使いやすく、効率の良い仕組みを徹底追求していきます」と語った。

画面イメージ
JALデジタルのハイブリッドクラウド基盤を管理する統合ポータル「CIEL/manager」のトップ画面。情報提供、問い合わせ、セルフサービスなどのメニューが用意されている