今、日本に求められる
新しいCRMのカタチ
CRMの役割や機能は
この数十年で大きく変わった
CRMワークフロー営業本部 本部長
坪田 駆 氏
坪田氏:倉林さんは、「ミスターSaaS」と呼ばれるほど、日本のSaaSスタートアップに特化したベンチャー投資を行っておられます。
なぜ、BtoCよりもBtoBスタートアップ、とりわけSaaSスタートアップの育成が重要だと考えておられるのでしょうか?
倉林氏:SaaSの育成に注力することが、日本のスタートアップエコシステムの健全な発展に寄与すると考えているからです。
坪田さんも米国でのビジネス経験が長かったのでよくご存じだと思いますが、米国のスタートアップ業界において、投資案件数やExit企業数で最も多いのは長年BtoBソフトウェア企業です。米国のBtoBスタートアップの創業者は、IT業界の大企業で重要なポジションを務め、ビジネスにおける課題を感じ、自らそれを解決するソリューションを生み出そうと独立して起業する人が多く、その会社をまたIT大手企業が買収するという流れが確立しています。
結果としてBtoBの新たなソリューションが大手企業に取り込まれて拡大し、産業界全体の発展に貢献するので、その芽を育て上げることは、社会的意義も非常に大きいのです。
私がDNXにジョインしたときは、日本でも大企業出身の優秀でインテグリティとパーパスを持ったアントレプレナーが次々とBtoBスタートアップを立ち上げ始めた時期でした。ようやく米国と同じ波が訪れ、機が熟してきたと判断したことから、SaaSスタートアップに特化した投資に取り組むことにしたわけです。
坪田氏:なるほど。よく分かりました。ところで、倉林さんはこれまでのキャリアを通じてCRMに関わって来られたご経験が長いので、CRMのこれまでの発展とこれからについてお話をうかがいたいと思います。
実は私も、キャリアの中でCRMには長く関わってきました。現在、ServiceNow Japanで日本市場におけるServiceNow CRMの事業責任者を務めていますが、その前はServiceNowの米国本社でCRMの製品戦略を担当するマネージャーとして開発に携わっています。さらに以前はOracleやSAPでCRM製品のセールス経験も持っています。その立場から見ると、CRMの役割や機能はこの数十年で大きく変わってきたことを実感しています。
今日のCRMの原型と言えるようなものは、すでにメインフレームの時代から存在していました。と言っても、基幹業務を遂行する上で必要な顧客データを並べた名簿のようなものですが、私はこれをCRMの「第1世代」と捉えています。
CRMという概念が本格的に浸透し始めたのは1990年代に入ってからです。最初はSiebel Systemsに代表されるオンプレミス製品が中心でしたが、これが「第2世代」。そして、SalesforceをはじめとするクラウドベースのCRMが「第3世代」です。
現在のCRMは、さらに進化を遂げて「第4世代」に移行していると考えます。
顧客体験を一貫して向上できる
「第4世代」のCRMが登場
倉林氏:なるほど。坪田さんが言う「第4世代」のCRMとは、どのようなものですか?
坪田氏:「第3世代」のCRMは、顧客対応の品質やROIをモニターするための、あくまで管理者向けのツールでした。それに対し「第4世代」では、最初の顧客接点はもちろんのこと、顧客のリクエストの要望に応えるためのアクションの実行に至るまでをカバーする、一気通貫で行うことのできる、いわば「次世代CRM」が求められています。
そのカギを握るのは、顧客体験価値の向上に携わるすべての部門や従業員が同じ顧客データを共有し、エンドツーエンドでサービスを実行できるようにするための基盤、つまりデータとワークフローです。
ServiceNowは、顧客に継続的なエクスペリエンスを提供するためには、全社共有された顧客データと、あらゆる部門と部門、プロセスとプロセスをつなぐデジタルワークフローが不可欠だと考え、それらを備える新しいCRMの開発に取り組んできました。
私が米国で携わったのは、まさにその製品開発だったのですが、ServiceNowにとっても最重要の投資領域の一つであり、この9年間でかなり積極的な投資を行ってきたことを肌で実感しています。
倉林氏:おっしゃるようにCRMの役割や機能は、この数十年で大きく変わっていますね。
昔は、顧客体験を高めるというよりも、営業担当者を束ねるセールスマネジャーが、売り上げや顧客応対の進捗状況を把握するための管理ツールとしての意味合いが強かったように感じます。
営業担当者はセールス活動の傍ら、マネジャーへの報告のため、CRMにいろいろな情報を入力しなければならなかったので、従業員体験も低かったと思います。
それが今では、スマートフォンやタブレット端末で簡単に情報を入力できますし、ServiceNowのCRMのようにデータやプロセスが自動で連携されるようになると、従業員体験はますます改善されるのではないでしょうか。
坪田氏:おっしゃる通りです。ServiceNowは、最高の顧客体験を提供するためには、まず最高の従業員体験を実現しなければならないという考え方を非常に大切にしています。
そして、技術進化の速いCRM市場でリーダーであり続けるためには、自分たちの技術だけに頼るのでは不十分です。そのためServiceNowは、優れたSaaSスタートアップのテクノロジーとの連携にも積極的に取り組んでいます。