「顧客ライフサイクル」に寄り添う体験提供
「CRM2.0」の到来で迎える
新たな変革期
成果をいかに可視化するかが
CX改革を進める上でのカギ
CRMワークフロー営業本部
本部長
坪田 駆 氏
坪田氏:消費者をはじめとするステークホルダーとの共感、共鳴を支援するという Accenture Song の取り組みは、顧客体験(CX)の向上につながるものばかりですね。
黒川さんは、その Accenture Song の統括本部長として陣頭指揮を執っておられるわけですが、顧客企業のCXに対する捉え方、取り組み方は、どのように変わってきていると感じておられるでしょうか?
黒川氏:10年前までは、「CXに取り組むことは重要だ」という程度の認識でしたが、最近では「取り組まなければ生き残っていけない」という差し迫った認識に変化し、実際に多くの企業が実行フェーズに移行しています。
例えば、消費者との接点を最適化するアプリケーションの開発や、ウェブサイトのリニューアル、インターフェースの改善など、最新のテクノロジーを駆使して、様々なアプローチを試みる企業が増えているのは象徴的な例だと言えるでしょう。
しかし、取り組みが広がっているからこそ、多くの企業は新たな課題に直面しているように見受けられます。
坪田氏:それはどういった課題でしょうか?
黒川氏:多くの施策を実施してはいるけれど、それが「売り上げや収益にどう貢献しているのか?」という実績を定量的に示せないことに課題を感じているようです。施策と財務的な成果の因果関係が明確でなければ、経営層も投資の判断を下しようがありません。
テクノロジーを活用したCXの施策が広がるにつれて、それぞれの施策と経営指標を連動させて、効果を測定・評価する仕組みの構築が求められるようになっていると言えます。
坪田氏:なるほど。とは言っても、CXの向上による財務的な成果は、簡単に可視化できるものではありません。営業活動の強化や販促等の成果は、短期的な数字として表れやすいものですが、CXの成果が目に見えて表れるようになるまでには、一定の時間が必要となりそうですね。
黒川氏:おっしゃる通りです。顧客との関係性が売り上げや収益にどう貢献するのかということは、長い時間軸で見なければなりません。経営者は、自社の長期的な成長につながるという視点で、ステークホルダーとの関係強化を図っていく必要があります。
しかし、それを推進する取り組みこそが、本来のCRMなのです。
より良いCXを実現するための
「CRM2.0」
坪田氏:CRMが単なる「IT施策」ではなく、本来は「経営変革」そのものであるということの意味は、そこにあるわけですね。
そもそも、CRMとはどのような概念なのでしょうか?
黒川氏:CRMは、アクセンチュアの前身であるアンダーセン・コンサルティングが1990年代に、当時の「新たな経営変革の手法」として提唱したものです。すでに30年以上も前に生み出された概念ですが、いまだに斬新で、当時とは比較にならないほどテクノロジーが発達した今日でも、十分に通用するものだと思います。
簡単に言うと、大量生産・大量販売が当たり前だった時代の顧客との断片的な向き合い方に一石を投じ、「商売の原点」に立ち返って、「顧客ライフサイクルにわたる関係」に向き合うことを提唱したのが「顧客関係管理」、すなわちCRMの考え方です。
ようやくインターネットやメールが普及し始めたばかりの1990年代は、最初の顧客との接点に限らず、綿密なサポートやそれを通したアップセルに至るまで「ライフサイクル」で向き合うというのは物理的に難しい要求だったと思いますが、AIをはじめとするテクノロジーが飛躍的に発展した現在なら、十分に可能だと思います。
私たちアクセンチュアは、最新のテクノロジーを駆使するだけでなく、一貫したオペレーションの実現によって、顧客により長く、より良い体験を提供することを「CRM2.0」という新概念として提唱しています。
坪田氏:顧客と「ライフサイクル」での関係性を築き上げるには、テクノロジーだけでなく、一貫したオペレーションの実現も重要だということですね。
黒川氏:その通りです。すでに多くの企業では、顧客接点を強化するため問い合わせにAIを活用し、見込み客に購買を促すためにMA(マーケティングオートメーション)を駆使するなど、縦割りのテクノロジー活用は進んでいますが、1人の顧客に一貫した体験を提供できている企業は、それほど多くありません。
「CRM2.0」の理想は、営業からマーケティング、物流に至るすべてサービスを一貫して担うような存在です。大量生産・大量販売の時代には、これらのサービスを縦割りの組織でバラバラに提供しなければなりませんでしたが、AIやテクノロジーを駆使することで実現することができるのではないでしょうか。
そのためには、これまでの組織のあり方を見直し、部門間の連携を強化して、顧客にいかに一貫した体験を提供できるかが重要だと言えます。