大阪市の未来を創る
統合プラットフォーム
職員が自分たちでツールや
追加機能を開発する将来像を描く
大阪市が「統合プラットフォーム」の開発基盤としてApp Engineを選んだのは、高い柔軟性や拡張性を備えていたことも大きな理由であった。
すでにApp Engineを使った「統合プラットフォーム」の開発プロジェクトは進んでいるが、「開発に携わっている担当者からは、『標準機能の範囲だけでも、想像以上にいろいろなことができる』という声が上がっています」と西村氏は明かす。
App Engineを使って、庁内の様々なシステムとServiceNowのワークフローを連携させると、特定のシステムだけで管理されているデータが簡単に呼び出せるようになり、データに基づくタスク処理や、他の部局や担当者への業務依頼に至るまで、すべて1つの画面で処理できるようになるのだ。
「あまりにも柔軟に連携できるので、一定のルールを設けてデータの閲覧や更新を制限しなければならないほどですが、ガバナンスをしっかり利かせながら開発を行っていけば、業務効率改善のPDCAを常に回し続けられるのではないか、という可能性を感じています」(西村氏)
しかも、SaaSであるApp Engineは、それ自体がテクノロジーの進化によって定期的にアップグレードされていく。「標準機能でできることは今後もどんどん増えるはずなので、新しい機能を積極的に採り入れれば、業務の効率化や生産性向上が加速度的に進むはずです」と西村氏は期待する。
現在、「統合プラットフォーム」の開発はデジタル統括室が中心となって行っているが、稼働後は、各部局が自分たちのニーズに合わせてツールの開発や機能追加を行ってもらう構想も描いている。ローコード・ノーコード開発に対応するApp Engineなら、自治体業務にも柔軟に対応が可能だからだ。
「実際に触ってもらい、『何ができるのか?』ということを感じてもらえば、目の前の業務をより効率よくするために、自分たちの手でツールや機能を開発してみようというモチベーションが生まれるはずです。将来的に我々デジタル統括室は、そうした内製化の取り組みを支援するCoE(センター・オブ・エクセレンス)の役割を果たしていければいいですね」と西村氏は語る。
また、大阪市は「統合プラットフォーム」を、業務効率化のための基盤としてだけでなく、職員間のコミュニケーション基盤として“職員ポータル”を構築することも検討している。業務ナレッジの共有や情報発信をすることで、職員のウェルビーイングをさらに向上させたいという狙いがあるようだ。
年間約110万時間の作業時間削減が目標
AIの利活用で上振れの可能性も
大阪市は、26年3月に「統合プラットフォーム」のアプリケーション開発環境をリリースさせる計画だ。
これと並行して現在、ServiceNowのApp Engineを使ってもう1つのサービスの開発を進めている。職員が公務で作成した文書(公文書)を保存する「共通公文書管理サービス」の開発である。
大阪市では従来、公文書の保管場所が複数の業務システムやストレージに分散して保存されており、原本や正本の特定・検索に手間がかかっていた。
「確認したい文書がすぐに呼び出せず、どの文書が最新なのかという判断にも時間がかかることが大きな問題でした。そこでApp Engineを使って、公文書の起案から決裁、保管に至るすべての機能を連携し、ServiceNowのワークフロー上で処理できるサービスの開発を進めています。あえて『公文書管理システム』ではなく『共通公文書管理サービス』と命名したのは、起案・決裁を始めとする公文書管理機能を様々な業務・システムとつなげてシームレスに利用・管理できる“サービス”としての提供を想定しているからです」と西村氏は説明する。
すべての機能を連携させれば、公文書を保管しているシステム以外からでも、必要な文書を簡単に呼び出して、確認や修正を行うことができる。これによって職員の業務負荷は大幅に軽減されるだろう。この「共通公文書管理サービス」も、27年度の稼働を目指している。
大阪市は、これらの「バックオフィスDX」によって、30年までに全職員の作業時間を23年比で年間110万時間削減することを目指している。生産性は23年比で10.3%向上させ、複数のシステムに同じ情報を入力する多重入力を0件にすることが目標だ。
ただし、「これらはグランドデザインを描いた23年の時点で設定したKPIです。その後、生成AIやAIエージェントが普及するなど、テクノロジーはどんどん進歩しているので、目標の早期達成やさらなる上振れが期待できるかもしれません」と西村氏は語る。
大阪市も今後、生成AIやAIエージェントを積極的に活用していきたい考えだ。
「AIの効果を最大限に発揮するためには、データをいかに蓄積して、統合できるかが重要なカギを握ります。その点、ServiceNowは、庁内のあらゆるシステムを一元化し、すべてのデータを統合できるプラットフォームなので、AI利活用のための基盤としての役割も期待しています」と西村氏。
ServiceNowは、大阪市の「バックオフィスDX」を支える基盤として、これからも存在感を発揮し続けそうだ。