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パーパスを策定したが効果が実感できない… 多くの企業が陥りやすい4つの「パーパスの罠」とは

パーパスを策定したが効果が実感できない… 
多くの企業が陥りやすい4つの「パーパスの罠」とは

フロンテッジ

2025/3/18

セオリー通りのパーパス策定が「罠」になる理由とは

 前ページで挙げた「パーパスの罠」を課題として提示するのは、パーパスの策定やブランディングをサポートするフロンテッジだ。4つの罠は、いずれも企業のパーパスをはじめとするブランディング支援の過程で気付いた「共通ポイント」なのだという。

 4つの罠は、パーパス策定のセオリー(理論)に沿っているともいえるが、どこが「罠」となるのだろうか。フロンテッジの鮎川 幹氏は次のように説明する。

 「まず1つ目の『パーパスは短くシンプルに言語化できれば良い』ですが、短さにこだわるのではなく、事業を通じた価値創造、従業員の思考や行動のコンパスとして機能するかが重要です。2つ目の『社会的存在意義の言語化』も間違いではありませんが、最大公約数的に絞り込むと、耳障りよく、どの企業でも使える言葉が並び、独自性がなくなる傾向があります」

鮎川 幹氏
鮎川 幹氏
株式会社フロンテッジ ソリューションクリエイティブディビジョン プロジェクトマネージャー ストラテジックプランナー

 「持続可能な社会の実現に貢献する」「多様性を尊重した共生社会を目指す」――。こうした文言はそれっぽく聞こえるが、指針には漠然としているし、独自性が感じられない。

 同様に3つ目、4つ目の「社員を巻き込む」「パーパスの言葉だけの浸透」も、巻き込む/浸透させること自体を目的化してしまうケースが少なくないという。押し付けではなく、従業員が自然と共感でき、社会の期待を喚起するパーパスでなければビジネスとのつながりが生まれない、というわけだ。パーパスに関する同社の特設ページ(関連リンク参照)にはこの4つを含めたチェックリストが用意されているので、自社の状況を確認してみるとよいだろう。

図1●パーパスの罠チェックリスト
図1●パーパスの罠チェックリスト
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もし「パーパスを策定したものの変化が感じられない」ならば、パーパスの罠に陥っている可能性が高い

ビジネス効果につながる、プロのパーパス策定とは

 それではビジネス効果につながるパーパスを策定するにはどうすればよいのか。そのポイントについて同社の小里 玄氏は「人や社会が見ているものが、What to sayからWhat to doへ変化したこと」を挙げる。従来は、「企業から発信するメッセージ=What to say」が見られていたが、企業が良いことを言うのは当たり前のこと。それより実際の「What to do(企業が何をするのか)」を人や社会が精査して見るように変わってきたのだという。

小里 玄氏
小里 玄氏
株式会社フロンテッジ ソリューションクリエイティブディビジョン シニアストラテジックプランニングディレクター

 「以前、企業とユーザーは供給する側、購買・消費する側の関係でしたが、今は消費ではなく共鳴・共創の関係に移っています。こうした新しい関係の中でパーパスは『企業が信じていること』、すなわち『どんなことを幸せと捉えているのか』に対する意志表明といっても過言ではありません。その位置付けを見誤らないことが重要なのです」と鮎川氏は指摘する。

 こうした潮流を踏まえた上で、フロンテッジではパーパスの実効性を高めるために3つの視点を意識しているという。それは「企業」「社会」「個人」だ。「企業」は自社のビジネスのことを指し、「社会」は環境、多様性、持続可能性といった社会的存在意義だと考えれば、理解しやすい。問題は残る「個人」の視点だ。

 「企業の内側から、大きな社会的存在意義を考えると、パーパスは当たり障りのない最大公約数的なものになりがちです。そこで外側の個人視点(消費者の視点)が重要となりますが、ここはなかなか客観的に捉えにくいもの。その点、当社は総合広告会社として、個人を対象としたコミュニケーションを日常的に行っており、個人視点を意識しやすい環境です。加えて、ソニーグループと電通グループが出資するジョイントベンチャーでもあるため、ソニーのDNAから来る事業会社視点(企業)、社会を含めた3つの視点から提案できるのも大きな強みです」(小里氏)

リブランディングに成功した製造業の事例

 こうした観点からパーパスを策定した後、次に大切となるのが社内外とのコミュニケーションだ。というのも、インナーブランディングで社内の共感を生み、アウターブランディングで社会での共鳴を喚起することも重要となるからだ。そこでフロンテッジでは、「コミュニケーション エンタテインメント カンパニー」を掲げる総合広告会社として、社内外に「どう伝えるか」までを考えることで、パーパス策定に実効性を持たせていくという。

 「フロンテッジには、構造化・言語化を担当するストラテジックプランナーや、文章化や文脈づくりを担うコピーライターをはじめ、ストーリーテリングに秀で、クリエイティビティーに優れたスタッフがそろっています。策定の背景を映像化して伝える人材、効果検証を行う人材などもそろい、コミュニケーション領域を幅広くカバーできる体制があります」と小里氏は話す。

 こうした点が評価され、同社は多くの実績を持つ。ある製造業の企業はその1社だ。この企業は、製品にプレミアム感を前面に出し、競合との差別化を図っていたが、技術の平準化などにより差別化が難しくなっていた。そこでリブランディングの観点からフロンテッジにパーパス策定を相談してきたという。

 「『その企業の独自価値は何か』を探るため、経営層、各部署のキーマンに約1時間、インタビューを行うところから始め、その後、従業員を交えてオフサイトのワークショップを行い、独自価値を掘り下げていきました。立場によってそれぞれ思うこと、考えることはばらばらでも、そこで分かったことがあります。ずっとプレミアム感を前面に出していましたが、何を持ってプレミアムとするかは人により異なります。個の時代、多様性の時代であり、1つの価値観に収束させるのではなく、お客様一人ひとりが感じるプレミアムを最大化する技術を持つのが独自性なのではないか。そのロジックからパーパスを策定していきました」(小里氏)

企業の強み、独自性を抽出する「How」の視点

 その過程で使うフレームワークが「ゴールデンサークル理論」である(図2)。これはWhy(なぜ)→How(どうやって)→What(何を)のプロセスで、相手から共感を得るアウトプットを引き出す理論のこと。Whyは企業の存在価値に関する部分で、社会的存在意義と言い換えてもよい。では、それをどう実現するか。Howの視点も含めて検討しないと、その企業の強み、独自性が生まれにくいため、フロンテッジではHowに着目するという。

図2●ゴールデンサークル理論
図2●ゴールデンサークル理論
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ゴールデンサークル理論は、ブランディング、マーケティングを始め、いろんな場面で使われている。「Why」は社会的存在意義であり、概念的・抽象的になりやすいため、「How」でその企業が「Why」をどう実現するのかを定義し、独自価値の明確化につなげることが重要となる

 「先ほどの製造業の事例の場合、Whyと同時にHowの視点を強調することで、最終的なアウトプットであるWhat、製品やサービス開発に結び付けて考えられるようになりました」(小里氏)

 パーパス策定後、エモーショナルな文章で構成したブランドステートメントをつくり、経営トップがプレゼンする場で動画とともに映し出す。パーパスに込められた志や想いとともにコミュニケーションすることによって、従業員がパーパスを自分事化し、日々の業務に向き合う際の意識・行動に変容が生まれ、新たな製品提供とリブランディングに成功したという。

 ここで触れた製造業の事例以外にも、大手生活用品メーカーのLION、シューズメーカーのムーンスターなど、多くの企業のパーパス策定やブランディングで成果を上げている。今後も、フロンテッジではパーパスブランディングを通じて、企業の新しい価値づくりを支援していくという。

 「価値観が多様化している今、企業が選ばれる理由を見つけ、創造し、選ばれるように支援するのが当社のミッションです。企業からの情報発信は一方通行ではなく情緒的な対話、結び付きが求められています。言葉遊びではなく、相手に届き、発信した側も何か受け取るコミュニケーションで、企業とユーザーが共鳴・共創できる関係づくりを支援していきたい。パーパスブランディングはその手法の1つだと考えています」と小里氏は語った。

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