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変化に柔軟に対応できる経営体制のカギ 社会の課題に立ち向かう三菱重工の次世代リーダー育成法とは?

変化に柔軟に対応できる経営体制のカギ 
社会の課題に立ち向かう三菱重工の次世代リーダー育成法とは?

グロービス

2024/10/24

経営戦略を実現できる人材の輩出を目指す

 エネルギーやプラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙など、社会や産業を支える製品・ソリューションを140年以上にわたって提供し続けている三菱重工グループ。

 2024年に発表された中期経営計画「2024事業計画」で、安全・安心・快適な社会づくりを目指すため、「ポートフォリオ経営の強化」「技術・人的基盤の強化」「MISSION NET ZEROの推進」という3つのグループ経営戦略を掲げた。

 「中でも重要な戦略が『MISSION NET ZEROの推進』、すなわちCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現です。三菱重工グループは、バリューチェーン全体でのCO2排出量を、2040年までに実質ゼロとする目標を定めて、具体的な取り組みを加速させています」と語るのは、同社 HR改革推進室長の木村達也氏である。

木村 達也氏
木村 達也氏
三菱重工業 HR改革推進室長

 火力発電など、エネルギー関連の事業を長く手掛ける三菱重工にとって、カーボンニュートラルの実現は社会的使命とも言える。そのため、国が目指す2050年までのネットゼロを10年前倒しして、2040年までに実現するという高い目標を掲げているのだ。

人事施策とひも付けたプログラムで能力と志を研鑽

 目標実現のためには、化石燃料に代わる新しいエネルギー源である水素やアンモニアの活用、あるいは、排出されたCO2を回収・貯留・再利用する「CO2バリューチェーン」の構築といった、新しい分野への挑戦が求められる。

 「既存分野をしっかりと伸ばしつつ、新しい分野にも果敢に挑んでいく。そんな難しいかじ取りを担う経営人材を輩出するには、長期的な視野に立った人材の育成と登用が不可欠です。そこで、『2024事業計画』、さらにはその先の2030年を見据えたHR戦略を策定し、その中で次世代経営人材育成についてもHR戦略の重要なテーマの一つに位置付けました」と木村氏は明かす。

 「HR Innovation 2030」と名付けたHR戦略は、『未来を起動する』をキーワードに「次世代経営人材育成」「人材獲得・育成」「組織力強化」「従業員エンゲージメント向上」の4つの柱で構成され、海外を含めてグローバルに展開している。

 このうち、次世代経営人材育成のための取り組みとして、三菱重工が幹部候補人材を対象に行っているのが「経営幹部人材育成プログラム」である。

 課長クラスおよび、主任クラスを対象とした3種類のプログラムを用意。それぞれ、育成対象の社員を選抜し、登用や配置、サクセッションプランなどの人事施策と密接にひも付けながらプログラムを実践しているのが大きな特徴である。

 実際のプログラムは、企業経営に関する知識だけでなく、経営者としての志や覚悟、リーダーシップなど、スキルセットとマインドセットの両面で能力を磨き上げる内容となっている。

 「当社がこれまで歩んできた歴史や、社会で果たしてきた役割などの原点に立ち返り、三菱重工ならではの使命や強みを十分に理解した上で、変わりゆく時代に果敢にチャレンジしていける経営幹部人材を育て上げたい。その上で、身に付けたスキルセット、マインドセットを発揮しながら、活躍できる場を提供し、人材プールに厚みを持たせていきたいと考えています」と語るのは、プログラム作りに携わった同社 HR改革推進室 タレントマネジメント計画グループ 主席部員の吉村卓郎氏である。

吉村 卓郎氏
吉村 卓郎氏
三菱重工業 HR改革推進室 タレントマネジメント計画グループ 主席部員

 この「経営幹部人材育成プログラム」の設計に当たって、アドバイスや支援を行ったのが、リーダー人材の育成プログラムに定評のあるグロービスだ。

 吉村氏は、「リーダーに必要な知識やスキルはもちろんのこと、志や心構えといったマインドの部分まで底上げする研修プログラムで豊富な経験を持っていることが、グロービスにサポートをお願いしている理由です」と語る。

「人と事業と社会をつくる経営リーダーの輩出」を目的に、三菱重工グループが描く次世代経営人材育成の概念図。幹部候補人材の人材プールを構築し、「経営幹部人材育成プログラム」などのOff-JTプログラムや人材ローテーションによって育て上げていく
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「人と事業と社会をつくる経営リーダーの輩出」を目的に、三菱重工グループが描く次世代経営人材育成の概念図。幹部候補人材の人材プールを構築し、「経営幹部人材育成プログラム」などのOff-JTプログラムや人材ローテーションによって育て上げていく

早期の受講者選抜により意識の醸成を図る

 実は、グロービスによる三菱重工の「経営幹部人材育成プログラム」作りの支援は、課長クラスを対象とするプログラムの1つが2017年にスタートし、すでに6期目。課長クラス向けのもう一つのプログラムと、主任クラス向けプログラムも、3期目を迎える。

 「その間、グロービスの担当者や講師の方とは数え切れないほどの対話を交わし、プログラムの内容や学習に係る方法論をブラッシュアップしてきました。様々な業種、企業におけるリーダー研修の経験を蓄えているだけでなく、担当者が深く入り込んで、その企業に合った内容や指導方法を提案してくれるのが、グロービスの良さだと思います」(吉村氏)

 吉村氏によると、グロービスはプログラム作りの過程において、人事部門との対話や事業計画や統合報告書などの読み込みに加え、プログラムに対する経営幹部からのフィードバックを的確に捉えることで、三菱重工が求める経営幹部候補像の輪郭を明確にしていったという。

 さらに、そうした人材を輩出する仕組みを、教育だけでなく、登用、配置、サクセッションプランなどの人事施策と組み合わせながら構築していきたいという三菱重工の意向をしっかりとくみ取り、最適なプログラム作りを支援したのだ。

 「それを実現できたのは、三菱重工の経営者や役員の方々の積極的なコミットメントと人事部門の皆さんが本プログラムに対して本気で向き合っていただいているおかげです」と振り返るのは、プログラム作りを支援したグロービス・コーポレート・エデュケーション コーポレート・ソリューション・チーム マネジャーの長島隆行氏である。

 「経営幹部の皆様が、次世代経営幹部育成の意義をよくご理解されている。それだけではなく、幹部自らが講師役を買って出ていただくなど、積極的に後押ししてくださっている。我々の提案が皆様との共創によって、より磨かれた内容に進化を続けていることが、プログラムが長く続いている理由だと考えています」(長島氏)

長島 隆行氏
長島 隆行氏
グロービス グロービス・コーポレート・エデュケーション コーポレート・ソリューション・チーム マネジャー

 そうした経営層の高い評価の下、「経営幹部人材育成プログラム」は「HR Innovation 2030」を推進する重要なドライバーの一つとして位置付けられた。今後も毎年のように内容をブラッシュアップしながら、プログラムを継続していく計画だ。

 また、このプログラムは、課長や主任といったかなり早い段階から将来の経営幹部候補を選抜し、教育を行っている点も大きなポイントだ。

 「次世代経営幹部候補を育成するには、相当な時間がかかります。そのため、なるべく早い段階から候補者を選抜し、本人への意識づけや、経験を積むための期間を十分に確保することを意図しています」と語るのは、プログラム作りに携わった三菱重工 HR戦略部 人材開発グループ 人材育成チーム 上席主任チーム統括の島田祐輔氏である。

島田 祐輔氏
島田 祐輔氏
三菱重工業 HR戦略部 人材開発グループ 人材育成チーム 上席主任チーム統括

 「ポテンシャルのある社員を発掘し、次世代経営幹部候補の人材プールを充実させることが目的です。人材の発掘に当たっては各事業部門からの推薦に加え、公募による選考の仕組みを作り上げました。能力と志を持つ人材を、1人でも多く次世代リーダーとして育て上げたいと思っています」(島田氏)

 木村氏は、今後の次世代リーダー育成について「三菱重工では、グローバルを舞台に次世代経営リーダーを輩出する仕組みを構築することで、どのような環境においても変化に対応できる経営体制を築いていきます。その結果、世界を取り巻く様々な社会課題に応え、新しい未来像を描き、その実現を導くことのできる次世代リーダーを社会に輩出していくことを目指しています」と語った。

 三菱重工の未来は、志と能力を備えた次世代リーダーたちが、力強く切り開いていくことだろう。

左から三菱重工 島田氏、吉村氏、木村氏、グロービス 長島氏、山口氏、畠田氏
左から三菱重工 島田氏、吉村氏、木村氏、グロービス 長島氏、山口氏、畠田氏