Empowerment Report

エンパワーメントレポート

日本の“おへそ”で急成長、
DE&I推進が人財輩出

A. GLOBAL(エーグローバル)
管理本部G 人事総務部 リーダー

福田 竜也さん

2024.06.20 掲載 *所属は取材時のもの

高価格帯の「美顔器」という美容機器で世界市場の約7割を占めるメーカーが、“日本のおへそ”と呼ばれる岐阜県にある。同県羽島市で2017年に創業したA. GLOBAL(エーグローバル)だ。その急成長を支えたのが、女性と外国籍社員が中心となり、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を理念ではなくリアルに実行している点にある。同社で人事総務部のリーダーを務める福田竜也さんにA. GLOBAL躍進の背景について語っていただいた。

女性比率67%、外国籍比率27%

 「柔軟に考えて行動できるって、こういうことなんだ」

 A. GLOBALで人事総務部のリーダーを務める福田竜也さんが、これを腹の底から実感したのは「2000個以上の商品を3日以内に海外へ発送する」という、イレギュラーな業務を担当したときだったという。

 A. GLOBALは中国や韓国で高い人気とブランド力を獲得してきた新興の美顔器メーカーだ。価格帯は10万円台からで、最新のオールインワン美顔器「Zeus III(ゼウススリー)」は30万円台と高級ブランド路線で急成長している。東京商工リサーチによると、10万円超の高級美顔器カテゴリーでは世界シェアが約7割(2022年7月〜23年6月)という“隠れた巨人”企業である。

 本社は日本のほぼ中央に位置する岐阜県羽島市にあり、社員数は約50人。しかし“一般的”な日本企業とは違って、A. GLOBALは女性社員の比率が約67%、女性管理職比率は55%以上、外国籍社員の比率は約27%という構成だ。

 これほどの女性活躍と多様性という点でA. GLOBALに肩を並べる企業は外資系などを除けば少ないだろう。福田さんはその会社で、人事・総務部門のリーダーとして「働きやすい環境」を整えてきた。

 3日間で2000個の商品を海外発送する業務に直面したときは、物流の担当部署に所属していた。主要マーケットの中国には「独身の日」(毎年11月11日)など、ネット通販で1日に数兆円もの販売が発生する日がある。A. GLOBALもこれを重要な日ととらえ、今では数十億円規模の売上高(22年は62億円)になる。

 そんな特別な日などに販売した商品は、一度にまとめて発送する必要が出てくる。福田さんが担当した当時は「国際スピード郵便(EMS)で郵便局から発送していた」といい、福田さんも本社のある羽島市のほか、岐阜市や隣県・愛知県の名古屋市にある大きな郵便局に「2000個を発送したい」と掛け合っていた。

 しかし、どの郵便局からも「2000個となると手間がかかり、人手が足りない」と断られたという。「日本人の発想だと、ここで『やはり無理だ』と諦めてしまうことが多いのではないでしょうか」と、福田さんは述べる。発送時期を遅らせるか、別の発送手段を探すかだが、それに手間取ることも多いだろう。だが、高級美顔器メーカーとしては購入者への「納期遅れ」は評判にも傷がつき、ブランドイメージも損ないかねない。

 福田さんは「A. GLOBALには中国出身の金松月社長をはじめとして、難しくても、ほかにやり方があるはず』と考える人が多いんです」と説明する。郵便局は、大きな本局なら24時間営業をしているところもある。「そこで1度に2000個ではなく、数百個の単位で時間をずらし、五月雨(さみだれ)式に発送を受け付けてもらえないかと金社長が提案したら、なんとか応対してもらえました。無事に3日内の全品発送にこぎ着けられました」(福田さん)

垣根を越え、協力しあう企業文化

 発送の作業も、当時まだ少なかった社員が手分けして担当した。梱包材が足りなくなると、金社長を含めた経営幹部が自ら岐阜県内のホームセンターを車で走り回って調達に励んだ。

 「今はシステム化されて配送作業もスムーズになっているが、やはり何かあった時のチームワークや『お互いに助け合う』という意識はとても強いと思います。社員のダイバーシティに富んだ当社ならではの文化です」と、福田さんは誇らしげに話す。

 日本でもサステナビリティ経営の重要な要素として、「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン=多様性・公平性・内包性)」の強化を掲げる大手・上場企業が増えている。「多様性のある会社づくり」は、性別や国籍・民族、年齢などの違いを認め合い(ダイバーシティ)、公平を期しながら(エクイティ)、尊重しあう(インクルージョン)ことで、組織としての持続可能性を高めながら成長を志向していくことである。

SEから転じ「なんでもこなす」中核社員に

 A. GLOBALの設立は17年10月と比較的、若い会社だ。当初の母体は国内のエステティックサロンや美容クリニック向け美容機器メーカーである、08年創業のARTISTIC&CO.(岐阜県羽島市)。同社を08年に創業した近藤英樹・前社長がアジアを中心に海外事業を拡大させていく中で、海外事業会社のARTISTIC&CO. GLOBAL(アーティスティックアンドシーオーグローバル、23年9月に独立し、現A. GLOBALに社名変更)を創業した。

 福田さんは、その翌年の18年に入社した転職組だ。といっても社員がまだ数人の時期で、ほぼA. GLOBALでの社歴を通じて会社の成長と一緒に歩んできた。

 前職はシステムエンジニア(SE)だった。「名古屋にあるシステムインテグレーションを中心で取り扱う会社で働いていたが、実家からの通勤に片道1時間半はかかっていて、時間的効率や、将来的には地元で働いていきたいという気持ちがありました」

 そこで地元の岐阜市に近いエリアで転職先を探す中で浮上してきたのが、知人が付き合いのあったARTISTIC&CO. GLOBALだった。システム開発やプログラミングとは縁遠い会社ではあったが、「もともと好奇心が旺盛で、なんでもやってみたいと思っていた」と話す福田さんには地元にあってグローバルな展開をしている美顔器メーカーという新たなステージは魅力的に映ったという。

 「美容業界も初めてだし、市場もこれから伸びていくという業界なら新しいことを存分に体験できそうだと思ったことも入社理由となりました」(福田さん)

 こうした「SE時代には思ってもみなかった、ありとあらゆる業務経験」を通じて、今では人事総務部門のリーダーを務める中核社員として立っていけるようになった。

「個性生かす」に共感、社長支える

 ARTISTIC&CO.で海外事業をけん引してきた人物が、A. GLOBALの現社長である金氏だ。中国・吉林省の、とある寒村から日本に留学して語学や簿記などを習得し、後には中国語・韓国語などの通訳者としても活躍していた金氏は、ARTISTIC&CO.の創業者である近藤氏に誘われ、経理社員として同社に入社した。だが展示会などで販売を手伝ううちに、持ち前の外交的なコミュニケーション能力を生かして目覚ましい営業成績を上げ続けた人物だ。

 それは新会社となった現A. GLOBALの立ち上げ後にも発揮された。A. GLOBALは創業初年度に売上高を25億円に、さらに翌年には156億円とするなど海外販売を急拡大させた。21年2月に近藤氏が急逝してしまい、その後継として金氏が社長となった。

 福田さんはその間、デザイン制作や物流関連の業務を担当するなど、スタートアップ同様だったA. GLOBALで「実に多方面で経験を積むことができた」と話す。「今の担当である人事・総務の業務も全くの素人でしたが、金社長が常々言っていた『いろんな立場の人が協力し合いながら資質を磨いていく会社にしたい』という意志を、一緒に叶えたいと思うようになりました」(同)

 A. GLOBALはそれを「人財を創出できる企業を共に創る」として企業理念に掲げている。女性社員が全体の半分以上を占め、外国籍の社員が4分の1以上という多様性にあふれた社内で、社内規則をがんじがらめに固めてもまとまらない。ワーキングママも多い社内で、自身もシングルマザーとして働いてきたという金社長は「男性も女性も国籍も関係なく、誰もが個性を活かして働ける会社をつくりたい」と、過去のインタビュー記事などで語っている。

 「小さい会社ではあっても、製品の販売先は中国や韓国など海外が過半です。中国では『ライブコマース』のようなライブ配信で商品を解説することで購買意欲を高めてもらう手法が非常に人気です。そんなことを少ない社員数でやっていくには、どうしてもお互いが部署の垣根を超えて協力しあうことが欠かせません。大手企業ではできない体験ができる、といえば聞こえはいいですが、それを多様性の力でこなし続けているのが当社の強みだと思います」(福田さん)

 お互いが補い合っていくために組織があり、企業となっている――というのが、金社長の持論だという。助け合って経験を積み、実行していくことが簡単になれば自信につながり、人材として成長できる。福田さんは「こうしたサイクルを実現することを、人事としても重視して採用活動を進め、人事制度も柔軟に運用したり変更したりしています」と強調する。

ライフイベントへの配慮、手厚く

 結婚、出産、育児などの女性のライフイベントのタイミングでの休職(産休・育休など)や復職でも、担当していた業務や、就いたポジションをなくすなどはないという。

 「各自のもっとも適切なタイミングで休んだり働いたりできるように、しっかりとケアしながら当社の重要な人財であり戦力として活躍できるような仕組みを整えている」と、福田さんは解説する。社員数は現時点で約50人ながら、大手企業を出し抜くスピードで女性が働きやすい環境を整えてきた。

 性別や国籍だけでなく、学歴も関係なく、多様な環境でも働いて自分自身を伸ばしたいという人を、A. GLOBALは集めようとしている。福田さんは「採用の時は、新しいことに対して抵抗感がないかは、見るようにしています。実際に活躍している社員は、好奇心旺盛にいろんなことに取り組み、向上心を持って挑戦している人が多いですね」と分析しながら、さらにそのDE&Iを重視するカルチャーを磨き上げようとしている。

 岐阜県の一角から世界市場を志向するA. GLOBALは、人材の活用や育成の面でもグローバルスタンダードの取り込みで日本の大手企業をも出し抜くような可能性を秘めている。

PROFILE

福田 竜也(ふくだ・たつや)
2018年株式会社A. GLOBAL入社。入社後は物流、経理、人事総務など職種に捉われず、バックオフィスを中心に幅広く担当。2020年より人事総務部へ配属、現在では同部署リーダーとして採用活動、労務管理、社内制度・環境整備などを担う。

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