Empowerment Report

エンパワーメントレポート

Diversity&Inclusion浸透へ
人事もグローバル化推進

オリンパス
執行役員 人事・総務担当
グローバルHR部門ヘッド

大月 重人さん

2022.03.11 掲載

世界トップシェアの内視鏡など高い医療技術(メドテック)で社会に貢献するオリンパスは、地域ごとのリージョン経営から舵を切り、真のグローバル企業を目指している。その人事・総務を統括しているのが大月重人さん。数々の企業で一貫して人事に携ってきたスペシャリストだ。ボーダーレスに活動していくうえで欠かせない「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を浸透させ、多彩な人材が能力を発揮できる企業風土を醸成しようと注力している。

グローバルに社員の能力・個性を把握 全員に活躍の機会を

 日本にダイバーシティ(多様性)という概念が導入されたのは2000年代はじめ。少子高齢化で労働人口が減少してきたことも引き金となり取り組みが始まったとされる。そのためか、ダイバーシティ=女性の活躍としてとらえる企業が多かったが、本来は性別や人種、国籍のみならず価値観などの深層的な理解も進めて機会の平等化をはかるもの。それを受け入れるのがインクルージョン(受容)だ。

 オリンパスの場合、グループ社員は約3万2千人。日本にいるのは約1万4千人で、半分以上が欧州や北米、中国など世界約40カ国で働く。多様な社員・スタッフを束ねるため共通の経営理念を打ち出し、医療を通して世界の人々が健康に安心して暮らせる社会を支えることを目指している。

社員が能力や個性を発揮しやすい組織づくりを心掛ける

 そのためには、社員が能力や個性を発揮しやすい組織が必要だ。大月さんは「とても大事なのがデータ。人をきちんと定量的にマークして、どこにどんな人がいるのか、本社で把握できるようにしないと施策に結びつかない」と話す。データベースを整備し、部門ごとに社員個々の強みや課題、将来のキャリアプランなどを話し合うタレントレビューなどに活用している。また、評価基準の見直しを行い、来年4月にはグループ共通の人事制度に統合する予定だ。

育児休職復職後のキャリアアップ支援や採用強化 女性活躍へ地道に活動継続

 結婚や出産に関する女性支援の仕方も改善が必要だと強調する。「単に会社を辞めないですむという支援ではなく、戻ってからのキャリアアップを支援することが重要。出産して何年後かに復帰しても、浦島太郎状態では本人も困る」。

 女性社員の割合や管理職の割合も現実的な目標を立てる。数字目標を達成するために無理やり管理職に抜擢しても、うまくいかない場合があるからだ。

女性活躍推進は施策の一つ、真の目的はDiversity&Inclusionの浸透

 また、中心となる技術者の新卒採用でも「本当は女性を50%取りたいけれど、日本は理系出身女性が少ないので、どうしても奪い合いになり30%くらいになってしまう」という現実がある。新卒採用で将来の基幹となる社員を採用し、社内で得られない技術や専門性を持つ人材は中途採用や通年採用で獲得している。

自身の経験からの気づき 「企業が変われないわけがない」

 大月さんが就職した1984年の日本はバブル経済前夜。86年には男女雇用機会均等法が施行され、「女性の時代」とも呼ばれたが、本当の意味での女性の権利向上は進まなかった。

 91年、大月さんはニューヨークに赴任する。そこで見た世界は「女性がいきいきと働き、性別も年齢も関係なかった。若い女性がマネジャーで年上の男性が部下というのも普通。女性のキャリア志向が強く、意識も高かった」。終身雇用制度が常識の男性社会から来た日本人には、まさにカルチャーショックだった。

20代後半から5年間米国へ。女性が生き生きと働く姿に衝撃を受けた

 しかし、以前の米国は性差別の激しい国だった。大月さんが最近見た映画の中で心に残った作品がある。実話をもとにした「ビリーブ 未来への大逆転」だ。主人公の女性は貧しい家庭に生まれながら努力の末に名門ハーバード法科大学院に入学するが、56年当時、500人の生徒のうち女性は9人で女子トイレすらなかった。大学院を首席で卒業したものの、女性だからと法律事務所には雇ってもらえない。しかし、そこから史上初の男女平等裁判に挑んでいくというストーリー。米国は人種差別も過酷で、64年に南部のミシシッピ州で公民権運動家3人が殺害された事件を題材にした「ミシシッピー・バーニング」などの作品も有名だ。

 その米国が今や、制度的にもダイバーシティの最も進んだ国となった。

 「50年あれば国が変わる。企業が変われないわけがない」。

「職務型」人事制度を導入 丁寧にコミュニケーションを重ね社員の理解得る

 オリンパスは日本本社も「職務型」、いわゆるジョブ型人事制度への移行を決めた。すでに海外拠点では職務型を導入し、日本本社でもドイツ人などの外国人材が要職に就いている。導入は待ったなしだった。

企業風土を変えるには、よく話し合い、理解を進めることが大事

 だが、新しい制度の導入は社員の不安を伴う。特に職務型は誤解も多く、米国型の強烈な成果主義・雇用関係と混同されがちだ。

 どうやって理解してもらうか。大月さんは「コミュニケーションに努め、相手にメリットを示すことが大事」と話す。制度導入に向けては労働組合との話し合いに丁寧に時間を割いた。その際、正論だけでなく「職務型を導入すると社員側にも能力開発がしやすくなるなどのメリットがあると具体的に示した」という。

 ふに落ちないと、人は変わろうとしない。逆に言えば、心理的な壁を取り除いて理解が深まれば人は動く。DX(デジタルトランスフォーメーション)を含め、“腹落ち”は改革の重要なキーワードだろう。「これまでいろいろな会社を見てきたが、オリンパスは総じてD&Iの意識が高い」。穏やかな表情で社員に期待を寄せた。

PROFILE

大月 重人(おおつき・しげと)
1984年、日立製作所に入社。以降、日本GE、HP、資生堂などで人事・総務に携わる。リーダーシップ開発やM&A人事の実践、人事基盤の構築やグローバル標準化の推進などを国内外で経験し、2019年11月にオリンパスの現ポジションに就任。慶応大学経済学部卒。東京都出身。

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