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コンセプトの要素を
そのまま形に

唐橋氏 実例をうかがうと協創が研究開発や製品開発に大きな可能性をもたらすことが実感できます。では、改めて「AO」の内部を拝見することにしましょう。新研究開発棟の入り口を入ると、そこがもう「AO」のエリアですね。「AO」の内部は、天井が高く、鉄骨の梁がむき出しになっていて、かつてここにあった工場の建物を流用したかのような印象を受けます。

「AO」の1階(提供:AGC)

加藤氏 オープンイノベーションの拠点というと、美しく整った清廉な場所を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、「AO」の内装を検討した際に、あえて武骨な荒々しい雰囲気の空間とすることにしました。高熱や特殊なガスを扱う厳しい環境でものづくりを続けてきたAGCが培った社風や技術には、よりふさわしいと考えたからです。ここを訪れた方々にも、試行錯誤で挑戦してきたものづくりの熱量と未来感が共存したAGCならではの雰囲気を肌で感じていただきたいと思っています。

唐橋氏 確かに「AO」には独特の雰囲気があります。空間全体の統一感を醸し出すには、コンセプトが重要です。「AO」全体のコンセプトを教えてください。

加藤氏 「AO」の基本コンセプトは、「つなぐ」「発想する」「ためす」の3つのキーワードで表しています。「つなぐ」は、人と人の出会い、それぞれの思いを共有することを表しています。「発想する」は、新しい事業やサービスにつながる革新的なアイデアを生み出すこと。「ためす」は、革新的なアイデアを検証しながら思いを具体的な形にすることを表しています。

唐橋氏 そのコンセプトを基に、「AO」にはどのような施設を設けているのでしょうか。

加藤氏 3つのキーワードのそれぞれに対応した施設を設けました。「つなぐ」を実践するための場として設けたのが、「AO」の1階にある「AO Gallery」と2階にある「AO Park」です。

「AO Gallery」は、社外とのコラボレーションの成果を展示するスペースです。現在は商業施設やイベントの空間などの設計、施工を手掛ける乃村工藝社とのコラボレーションによって制作したインスタレーション「Inside of Material」を展示しています。透明な状態と曇りガラスの状態を瞬時に切り替えることができる調光ガラス、音を発する音響ガラス、熱線反射ガラスを使ったディスプレイを組み合わせて、マテリアル(素材)の内側にある世界を、視覚と聴覚から感じることができる空間を実現しました。

インスタレーション「Inside of Material」の画像(提供:AGC)

2階の「AO Park」は、「AO」を訪れた人たちとAGCの社員が交流し、協創に向けた思いを共有するための場です。AGCにおける研究開発の歴史や成果を紹介する展示コーナーを設け、その周辺にオープンな打ち合わせスペースとクローズな打ち合わせスペースを、それぞれ複数用意しました。

展示スペースでは、これまでAGCがお客様のニーズに応えて生み出した様々な技術を紹介しています。これはAGCの強みや、優れた技術を、ここに訪れた方にアピールするためだけの展示ではありません。この展示の内容を巡って、AGCの社員とお客様の間で対話が始まることを期待しています。

「AO Park」(2階)の風景

「発想する」に対応しているのは4階の「AO Studio」です。ここにはAGCにおける研究開発の最新成果が多数展示してあり、AGCが開発した先端素材を、お客様がご覧になって、触れていただくこともできます。これが革新的な技術や製品、問題解決につながるインスピレーションをもたらすキッカケになると考えて、こうしたスペースを用意しました。

「AO Studio」(4階)の風景(提供:AGC)

唐橋氏 2階の「AO Park」を抜けてIDパスが必要なゲートをくぐったところに、たくさんの部屋が見えます。

加藤氏 そこが「AO Lab.」で、3つのキーワードのうちの「ためす」を実践するところです。社内や社外から集まった人が、一緒に試作をして新しいアイデアの可能性を検証したり、具体的な成果の実現に取り組んだりするための場を提供しています。いわば協創のためのプロジェクト・ルームです。2~4階に14部屋が用意されており、各部屋は個別に入退室が管理できるようになっています。それぞれのプライバシーを守りながらプロジェクトを進めることができるようにしました。

「AO Lab.」の全体概観(2階)

「AO Lab.」に用意した複数の部屋のうち、一部はAGCの研究開発部門の成果の中で幅広い用途に展開できる基盤技術を社内外に提供するラボになっています。具体的には、デジタル・データを基に立体物として出力する3Dプリンタを使った造形技術を手掛ける「AM(Additive Manufacturing)ラボ」。そして、コンピュータで作成した映像を使って現実に近い状態を人間が感じることができるようにするVR(Virtual Reality、仮想現実)システムを開発する「XRラボ」などです。このほかに、電気炉を用いて様々な種類のガラスの溶融プロセスを検証する施設もあります。

AM(Additive Manufacturing)ラボ

唐橋氏 素材を扱うAGCが、3Dプリンタを使った造形を基盤技術と位置付けているのはなぜですか。

技術本部先端基盤研究所
ガラスプロセス部リヒートプロセスチーム マネージャー
勝呂 昭男氏

勝呂氏 3Dプリンタを使った造形技術から生まれる、素材の新しいニーズや可能性を探るのがAMラボのミッションです。プラスチック材を使って造形する3Dプリンタは、すでに市場で数多く使われています。

AMラボではガラス、セラミック、カーボンファイバーなど、プラスチック以外の素材を使った造形に取り組んできました。このために、AMラボには、使用する素材が異なる複数の3Dプリンタが設置されています。このうちカーボンファイバーが使える3Dプリンタは、現状では日本にまだ2台程度しかないはずです。

こうした先進的な技術エリアの研究にも積極的に取り組んでいます。お客様の高度な要求に応じた技術の検証だけでなく、社内の研究や製品開発の過程で必要が生じた技術検証も、ここで対応できます。

AMラボの風景

唐橋氏 ガラスなどの素材メーカーとして歴史が長いAGCが、3Dプリンタを使った造形技術に取り組んでいることは、社外ではあまり知られていないのではないでしょうか。

勝呂氏 確かに、そうかもしれませんが、AGCの研究開発部門が3Dプリンタを導入したのは最近のことではありません。最初に3Dプリンタを購入したのは2011年です。当初は、主に社内向けの応用や素材の開発に利用していました。こうして技術やノウハウを蓄積し2017年から協創の場でも使っています。

XRラボ

先端基盤研究所 共通基盤技術部
評価科学チーム マネージャー
小林 光吉氏

唐橋氏 素材を主に扱うAGCがVRシステムの開発に力を入れていることは意外でした。

小林氏 コンピュータを利用して、ガラス表面やガラスを通した風景の見え方を評価する技術には、かなり前から取り組んでいます。こうした評価はガラス製品を開発するうえで重要なポイントです。

従来は仕様を変えたガラスを実際に作って、外観や風景の見え方などを確認していたのですが、実際のガラスを製造すると、どうしても時間がかかります。これがガラスの製品開発期間短縮のネックになります。このためコンピュータを利用して、ガラスの視覚的な特性を評価するシミュレーション技術の開発に長年取り組んできました。業界の中でも、シミュレーション技術は進んでいる方だと思います。

こうした取り組みの最先端がVRシステムです。VRシステムを使うことで、周辺の空間の影響も含めた実践的な評価が効率よく実施できるようになります。例えば、自動車のフロントガラスの場合は、車内からガラスがどのような色に見えるのか、周りの風景がどれくらい映り込むのか、ガラスを通して風景がどのような色や明るさで見えるのか、などの評価ができます。

唐橋氏 自動車の運転席を再現した装置がありますね。これがVRシステムですか。

小林氏 そうです。開発したシステムの1つです。自動車のフロントガラスを通して見える風景が、ガラス素材の種類、厚みや形状などによって、どのように変化するかを疑似体験できます。自動車の運転席を再現した装置のシートに着席して、ゴーグル型のディスプレイを装着すると、ディスプレイにフロントガラスを通して見える風景が映ります。目線を変えたり、頭の向きを変えたりすると、この部屋の周囲に取り付けたセンサーが、これらの動きを検出して、ディスプレイに映った画像を変化させます。これによって、実際に自動車の運転席から外を見ているかのように感じさせることができるわけです。

XRラボの風景

唐橋氏 様々な施設を拝見して、AGCが並々ならぬ決意のうえで協創に対して取り組んでいることが、よく分かりました。ここから生まれるイノベーションが、AGCやAGCのパートナーに、どのように変革をもたらすのか、今後の展開を楽しみにしています。

後編はこちら

唐橋 ユミ(からはし ゆみ)

福島県喜多方市生まれ。
テレビユー福島のアナウンサーとして活躍。現在TBS系列「サンデーモーニング」、TOKYO FM「ノエビアカラーオブライフ」、NHKラジオ第1「イチ押し歌のパラダイス」、BSフジ「感動!大相撲がっぷり総見」などに出演中。

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