



人材の確保・育成の課題を抱える建設業界にとって、
労働環境と生産性の向上を実現するための技術革新は大きな使命だ。
高い品質と安全性を実現し、日々新たな技術を研究・開発している清水建設株式会社の技術戦略に迫る。
< 01 前編 >
清水建設では、2030年に目指す姿としてSHIMZ VISION 2030を策定し、人々が豊かさと幸福を実現できる持続可能な未来社会の実現に貢献することを目指している。その技術戦略の礎となるのが2019年にスタートしたShimz OneBIMであり、設計から施工、製作、運用に至るまで一気通貫でBIMを活用し、建築生産プロセスの業務効率化を実現するというものだ。
これまでのBIMは、設計や施工などそれぞれの領域で使い勝手の良いツールやデータ構成を元に個別に環境構築が行われたため、データのサイロ化が課題になっていた。
その後、共通環境の構築によって情報連携がある程度スムーズに行われるようになったが、建築現場では未だアナログな手法による業務が多く残っており、データドリブン経営を実現する環境に至っているとは言い難い。さらに2024年4月には、建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業務効率化は待ったなしの状態と言える。
そうした背景を踏まえ、清水建設ではあらゆる情報をデータベースに蓄積し、データ分析を活用した建築業務の高度化を推進しようとしている。建築現場のDX実現に向け、2023年7月には工程情報のデジタル化に着手した。工程情報には労務や材料など、関連する情報が多く存在する。従来はベテラン社員が個人の経験や勘に基づき、工程計画を行っていたが、その算定には多くの人員と時間を割く必要があった。そのため、関連する情報をメタデータとして蓄積しデータに基づいた分析を行うことで、適正工期の算定を一定程度自動化し、工程表の自動生成が可能となった。
こうした業務改善の鍵になるのが、データベースとしてのBIMであり、建築に係わるあらゆるデータを収集・活用するために、現在清水建設では、AutodeskConstruction Cloud(以下、ACC)を核とする全社標準環境の構築を進めている。これまでは、プロジェクト単位でのデータ利用に留まっていたが、全社標準環境の整備によって過去のデータから様々な予測をすることが可能となり、清水建設が目指すものづくりの未来を変える取り組みの新たな礎となる。
これまでの建設DXでは、一部の業務に特化したツール(ポイントソリューション)によってデジタル化を進めるアプローチが多く採用されてきたが、このアプローチには開発元が異なる複数のツール上にデータがサイロ化し、業務プロセスの分断を生むという側面があった。また、ほとんどのツールがBIMデータをサポートしていないため、都度BIMデータをPDFに変換して利用するなど、BIM本来のデータベースとしての特性を活かすことができない点も課題になっている。
