今年4月に富士通グループのハードウェア事業を統合してエフサステクノロジーズが誕生し、製品の開発から販売、サポートまで一気通貫で行える体制となった。これにより、自社と顧客の双方に多くのメリットが生まれている。データセンターの未来を変える「PRIMERGY CDI」も加速する。ハードウェアソリューションのトータルプロバイダーとなり、何が変わっていくのか。コアプロダクト事業本部本部長の旅家(たや)一彰氏に、日経BP総研の林哲史が聞いた。

ハードウェアメーカーから
“ハードウェアソリューションのトータルプロバイダー”へ

 富士通グループのハードウェア事業を統合し、2024年4月にエフサステクノロジーズが発足しました。その狙いを教えてください。

エフサステクノロジーズ株式会社
コアプロダクト事業本部 本部長
旅家 一彰 氏

旅家氏(以下、旅家) 大きく2つあります。1つは、ハードウェアソリューションのトータルプロバイダーとして、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などの開発から製造、販売、保守まで、一気通貫で提供できる体制を作ることです。国内外の約180の拠点を通じ、約65,000社に製品とサービスを提供しています。

もう1つは、お客様の視点に立って、ベストなハードウェアソリューションを提供することです。ハードウェア事業を統合したことで、多彩なリソースを組み合わせる提案がしやすくなりました。自社の製品や技術に限定することなく、様々なパートナーと連携しながら最適な提案をしています。

大きく変わったと感じるのは、お客様との距離がぐっと近づいたことです。富士通の一事業部門だった頃は、開発陣とお客様の間に営業担当者やSEがいて、距離を少なからず感じていました。しかし今は、開発チームも直接お客様を訪れ、お話を聞ける体制があります。この変化は、製品ポートフォリオに良い影響があると確信しています。

日経BP 総合研究所
フェロー
林 哲史

 開発にいらした旅家さんが、ユーザーと直接話すようになった。これは革命的な変化だと思います。自動車業界などでは、製品力もさることながら、メンテナンスやアフターサービスの方に主戦場が移っています。御社も開発から保守まで一貫した体制を整備したことで、製品販売を主眼とするビジネスから、ソリューションビジネスへ進化していくのではないでしょうか。

旅家 重要なポイントです。最近増えているAI(人工知能)の活用においても、製品を売って終わりではありません。お客様のニーズに合わせてサーバー・ストレージの組合せ評価やパラメータチューニングなどプラットフォームのアセスメントをライフサイクルのなかで実施させていただいており、プラットフォーム全体を効果的かつ柔軟に管理できる仕組みとノウハウの提供が不可欠になっています。

多くのAI導入事例とノウハウを保有、
外部パートナーとの連携も

 重要なデータをクラウドに上げたくないというニーズが根強い半面、AIは多くのデータを学習させる必要があります。実際、クローズドな情報に基づく生成AIのRAG(Retrieval-Augmented Generation)も注目されていますが、なかなか成果を出せていません。コンサルティング的な支援が求められています。

旅家 同感です。AI活用にはクラウド、オンプレミス、ハイブリッドの3パターンがあり、ニーズに合わせて対応する必要があります。既に当社は、会社内の機密情報を安全に取り扱うことができる、オンプレミス環境向け対話型生成AI基盤として「Private AI Platform on PRIMERGY」を販売開始しており、富士通が提供する企業向けの「Takane」を含め多数のLLM(大規模言語モデル)に対応したAI基盤のご提案が可能です。

HPCのノウハウも持つ当社は、あらゆる規模や条件でご相談に応じることができます。加えて、多数の導入事例を背景に、業界向けに特化したプラットフォームをご提案していきたいと考えています。インストールすればすぐにLLMが使えるような、オンプレミス環境向けのセットモデルやレディモデルも順次拡大する考えです。

ご提案したプラットフォームが、本当にお客様の課題解決につながるかどうかを確認したい場合は、東京都大田区にある富士通ソリューションスクエア内の施設「Platform Solution Lab」で検証いただけます。最適なハードウエアの選定とチューニングを、セットで提供しています。

 御社は、製造業や金融、建設、流通、医療、物流など、多種多彩な顧客ベースをお持ちです。ユーザーは自分の環境に近い、具体的な事例の話を聞きたいでしょう。

旅家 多数のユースケースがある一方、お客様にはそれぞれ個別に違う課題があります。両者をうまくマッチングさせ、最適なプラットフォームを提案していくイメージです。

AI活用で多いのは、コールセンターを含めたサポート業務、大量の調査レポートの要約、プログラムの自動生成などです。申請書類の自動生成やルールの確認、契約内容のサマライズなどのニーズも増えています。

そうしたニーズに対し、社内の導入事例やベストプラクティスを提示できることは当社のセールスポイントの1つです。また、必要に応じて富士通グループ各社や外部のパートナー企業、コンサルティング会社などと伴走させていただく場合もあります。エフサステクノロジーズとして独立し、そうした活動がしやすくなったと感じています。

 

AIで増えるインフラ課題を解決する
「PRIMERGY CDI」

 「学習」と「推論」、「画像認識」と「言語生成」のように、目的に応じて求められるリソースが大きく変わることは、AIの大きな特徴です。その意味で、「PRIMERGY CDI(Composable Disaggregated Infrastructure)」は画期的な技術だと思います。

旅家 ワークロードごとに環境を用意していた従来型システムでは、ワークロードの増加に合わせたシステムの増強には作業時間や導入コストがかかっていました。また、システム運用においても、時間帯や時期によってハードウェアリソースの使用率に偏りがあり効率的に使えない場合がありました。そういった課題を解決するのがPRIMERGY CDIです。

CPU、メモリ、GPUなどをリソースプールで一元管理し、ワークロードに合わせてサーバーに割り当てられる仕組みです。学習の時は全てのGPUを1台のサーバーに集中させ、推論の時は複数のサーバーに割り当てるなど、論理サーバーを自由に構築、運用できます。

本製品の導入により、限られたリソースを柔軟に組み合わせて使用することができ、初期導入費用や消費電力を最適化できTCOの削減をはかることができます。

 

PRIMERGY CDIの概念。リソースを一元管理し、複数のサーバー間で共有する

 PRIMERGY CDIがあれば、オンプレミスでもクラウドに近い感覚でハードウェアを柔軟に運用できるようになります。ユーザーには朗報でしょう。

旅家 仮想サーバーが当たり前となるなかで、あらゆるデバイスを仮想的に運用できれば、オンデマンドで柔軟にリソースを使うという観点で、オンプレミスとクラウドで、大きな違いはありません。今後、PRIMERGY CDIとして、メモリやCPUのリソース共有も実現していきます。また、限られたリソースの稼働率を最大化できるだけでなく、使わないときはデバイスの電源をオフするなど、更なる消費電力抑制も目指します。

 PRIMERGY CDIの未来構想は、多くのパートナーと一緒に実現していくものでしょう。その中で、先進的なハードウエアを開発できることは御社の強みになると思います。

旅家 PRIMERGY CDIの開発にあたっては、テクノロジーパートナーやOSS(Open Source Software)コミュニティーとの連携が欠かせません。生成AIの登場により消費電力が増大し、これを解決する手段が求められています。PRIMERGY CDIで採用しているディスアグリゲーテッドコンピューティング技術により、高性能、省電力/省コスト、運用効率化を実現、課題解決の一手段になると確信しています。この課題解決に共感いただけるパートナーとのエコシステムを広げ、早期実現を目指します。

 加えて、PRIMERGYは国内生産である点も、御社の大きな強みです。そのメリットを教えてください。

旅家 一番大きいのは、安心感でしょう。製品を国内で製造、販売し、アフターサービスまで完結していることは、経済安全保障の面から見ても大きなメリットです。

サポートは24時間365日、全国規模で展開しています。トラブル時にはエンジニアが2時間で駆けつけて対応します。製品は伊達工場(福島県伊達市)で製造し、厳しい試験を経て梱包、出荷しています。自社工場なので、お客様のニーズに合わせたカスタマイズやテストも容易です。メイドインジャパンの確かな品質で、これからもお客様としっかりと向き合っていきます。

 今年4月からできた新しい体制だからこそ、踏み込める領域が広がっているように感じます。今後の動きに期待します。

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