富士通グループのハードウェアソリューションを一手に担うエフサステクノロジーズ。同社のサーバ、ストレージ国内製造拠点が、福島県伊達市の伊達工場だ。日本企業のITインフラを支え、高い信頼を獲得している主力サーバの「PRIMERGY」、基幹IAサーバの「PRIMEQUEST」はどのような製造プロセスから生まれるのか。伊達工場を訪れ、メイドインジャパン品質の真髄に迫った。

常に最適なソリューションを提供、
220万台超のサーバが選ばれる理由

もはや水道、ガス、電気とともに社会に不可欠となったITインフラ。止まることが許されないばかりか、テクノロジーのトレンドに合わせて日々アップデートを余儀なくされるのも宿命だ。とりわけサーバに求められる役割の変化は激しい。この20年あまりを見ても、x86サーバの拡大、仮想化、ハイブリッド、AIプラットフォームと用途の多様化が進む。

こうしたニーズに対応すべく、エフサステクノロジーズでは時代の要請に応じてITインフラ製品のブラッシュアップを重ねてきた。サーバ事業のビジネス責任者を務めるプロダクト部門 エグゼクティブディレクターの前田英信氏は、同社の事業内容についてこう説明する。

エフサステクノロジーズ株式会社
プロダクト部門
エグゼクティブディレクター
前田 英信 氏

「当社はサーバ、ストレージの開発・製造・販売・保守、ネットワーク機器の販売・保守、法人向けPCの直接販売を手がけています。ハードウェアソリューションのトータルプロバイダーとしてお客様が抱える課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献することがミッション。常に最適なITソリューションを提供できるよう、充実した製品ポートフォリオを揃えています」(前田氏)

事業の中核を担うサーバ事業では、x86サーバの「PRIMERGY」、基幹IAサーバの「PRIMEQUEST」という主要な2つのラインナップを擁する。どちらも企業のITインフラ基盤となる主力製品だ。

「PRIMERGYは小規模からエンタープライズまで幅広く対応しており、PRIMEQUESTは金融、製造、製薬、放送などミッションクリティカルなシステムを必要とするお客様を主なターゲットとしています。中でも2000年に世界統一ブランドとして立ち上げたPRIMERGYは2025年に25周年を迎え、国内累計出荷台数が220万台を超えました。こうしたサーバの数々がお客様のビジネス成長を力強く支えています」(前田氏)

そして、四半世紀にわたり一貫してPRIMERGYを生産してきたのがエフサステクノロジーズの伊達工場である。220万台超の実績は、メイドインジャパンの高品質と信頼性が高く評価された証でもある。前田氏が「高品質な製品を国内生産で提供できることが当社の強み」と語る伊達工場の製造プロセスや徹底した品質管理は一体どんなものなのか。その実力についてじっくりと紹介していきたい。

 

43,000平方メートルの大きなスペースが広がる

緻密さとカスタマイズの
柔軟性を両立する“人に優しい工場”

冒頭で触れた通り、サーバに対する要求は年々高度化・複雑化している。それゆえお客様のオーダーは千差万別だが、一つひとつの細やかなオーダーに対応できるのが伊達工場の特徴だ。

エフサステクノロジーズ株式会社
プロダクト部門
品質保証統括部
統括部長
階戸 紀男 氏

品質保証のトップを務めるプロダクト部門 品質保証統括部 統括部長 階戸紀男氏は「当社の製品は日本の多くの企業で広く使用されています。だからこそお客様の個別の要望に応えるカスタマイズ性を重視するとともに、多様な製品群に対して“丁寧なものづくり”を実現する仕組みづくり、作業者のスキル向上に取り組んでいます。」と語る。

サーバの製造工程は部品供給、組立、試験、外観確認・梱包から成り立っている。最初の部品供給では社内システムと連携し、お客様のオーダーに合わせた1台1台の部品のキッティングを行う。部品供給ベンダーによって検査された部品を、自社基準で再検査し合格した部品だけが納入される仕組みだ。部品を集約する台車の上部にはタブレットが設置され、どの部品をピックアップするかがひと目でわかるようになっている。

 

社内で開発した部品移動搬送機・AGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)が稼働している。試験だけでなく部品の搬送含めて自動化が進んでいる

組立では複数の作業者がコンベアライン上で作業工程を分け、キッティングされた1台1台異なる装置をお客様のご要望通りの構成に搭載・接続する。製造ラインは全部で3つあるが、1つのラインにつき14台のカメラを導入し、先頭から出荷までの全工程を記録。トラブルや異常の確認、お客様からの問い合わせなどに利用している。

 

1つのラインにつき14台のカメラを導入。お客様からのオーダーパターンはおよそ1億通りと言われている

続く試験は自動試験と目視確認の2段階で実施。自動試験では搭載・接続確認、ファームウェアアップデート、負荷試験、OSインストール、出荷設定などを専用ツールによって全数実施している。試験時間は装置の構成によりまちまちで、長いと2日間におよぶこともある。そこで試験の進捗状況をモニターで一元的に可視化し、目視確認によって試験工程の状況を作業者が確認、終了した装置から効率よく外観確認に送り出している。

 

各試験エリアには試験進行状況がひと目で把握できるモニターを設置

最後の外観確認・梱包では、装置のキズや汚れがないかの確認を入念に行い、出荷基準を満たした製品のみが出荷される。この工程では徹底した品質チェックのみならず、独自の検査項目を設けることで潜在的な問題点を発見して不良品の流出を未然に防止。設計部門へのフィードバックによる品質改善にも努める。外観検査担当者は工場独自の資格を保有する作業者たちで、わずかなキズや汚れも見逃さない体制を敷く。

 

梱包でもデジタルピッキングシステムでピッキングした多数の添付品と製品を合わせて箱詰めを行う

エフサステクノロジーズ株式会社
サーバ&ストレージ事業本部
サーバ事業部 シニアマネージャー
金田 祐二 氏

各工程は緻密かつ丁寧な作業によって製品の信頼性と安定性を確保しているラック搭載や外購品カード搭載、RAID設定、ラック内ケーブリングなど、システム要件に応じたきめ細やかな「カスタムメイドプラス」も好評だ。工場を案内してくれたサーバ&ストレージ事業本部 サーバ事業部 シニアマネージャー 金田祐二氏は「例えばケーブルの取り回し一つに至るまで、長年培われた経験と知識を活かして最適な配置を追求し、故障リスクを低減します。こうした精緻な作業、高度な試験技術、および厳格な品質管理体制を組み合わせることで、伊達工場は世界最高水準の高品質なサーバを提供しています」と話す。

ものづくりの工夫に関しても努力を怠らない。組立台数に合わせてコンベアスピードを一定にして平準化を図り、製造ラインは高さが変わらずに水平移動できるように設計した。製品構成によっては数十kgになることもあるため、キッティングした部品はAGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)が製造ラインまで運搬。重量がかさむ完成品の梱包時には最大30kgまでサポート可能なパワーアシスト機器を活用するなど、作業者への負荷を減らすことに力を入れる。

 

組立台数と構成に合わせてコンベアスピードを一定にして平準化

「我々は“人に優しい工場”を目指しています。集中して作業ができる環境を提供して、ミスを最小限に抑えることが大切だからです。伊達工場はPRIMERGYの歴史と歩調を合わせて技術レベルを向上させてきましたが、この柔軟性がお客様に受け入れられている要因だと考えています。しかし現状に満足することなく、さらなる変革を続けていきます」(金田氏)

故障の少なさは、
TCO削減につながる

なぜ、エフサステクノロジーズはここまで品質にこだわるのか。それはTCO削減というお客様の価値に帰結するからだ。もし高い品質が保証されていなければお客様は業務の停止を余儀なくされ、非常に無駄な費用が発生してしまう。

階戸氏は「サーバはお客様のITインフラを支える基盤であり、ビジネス継続のためには安定稼働が最も重要になります。製造後には月に10台程度の製品を抜粋し、高温・高湿、低温環境でのORT(On going Reliability Test)と呼ばれるランニングテストを製造期間において定期的に実施。部品の経年変化による異常が発生しないことも確認しています」と述べ、次のように続ける。

「ここで組み立てた製品と他社工場で組み立てた製品の品質が同じかといえば決してそうではありません。組立方法を含むプロセスが重要で、不具合に気づけるかどうかが最終製品の品質に大きく影響するからです。日本企業のお客様の要求レベルは非常に高く、それに応えるためには適切な教育を受けた作業者が製造を担当する必要があるのです」(階戸氏)

一つの例として挙げたのが、サーバの稼働状況を示すLEDランプの明るさ確認だ。「1台1台だと気づきにくいのですが、一斉に並べると暗い部分が目立ちます。ですから感覚的な部分は一定の基準に基づいて人間が判断しています。そこも含めたトータルでの丁寧なものづくりがエフサステクノロジーズの真骨頂です」と前田氏は言う。

さらに伊達工場は、「レジリエンス(復元力)の高さ」を象徴する製造拠点でもある。震源が近かったこともあり、2011年の東日本大震災では甚大な被害を受けてすべての工場設備が停止したが、わずか12日後に出荷を再開したという。

「震災後すぐさま事業継続計画(BCP)を発動し、パソコンの生産を島根富士通(島根県出雲市)で開始。また、PRIMERGYの生産も富士通ITプロダクツ(石川県かほく市)で開始しました。復旧作業を並行して進めた結果、12日間で出荷を再開できました。迅速な対応が可能だったのは、2007年からBCP対策の訓練を実施しており、操業を持続する万全の体制が構築できていたからです」(金田氏)

2022年3月16日の福島沖地震では2度目の被害に遭ったものの、地震発生から9日後の3月25日に出荷を再開。「東日本大震災で得た教訓を活かして、設備全てを固定化せずに、力を分散させる方式を採用し、装置が落下しない対策を講じました。建屋への被害は少なからずありましたが、製造ラインの被害は比較的軽微でした」と金田氏は振り返る。

前田氏は「製造工場に限らず、エフサステクノロジ―ズでは全社をあげて積極的にBCP対策に取り組んでいます。事業継続性を高め、お客様への製品供給責任を果たすのが狙いです」と語る。今後も、定期的訓練によってBCP対策の有効性を確認し、緊急時の迅速な対応能力を維持していく構えだ。

AIソリューションも順調、
次世代への対応も万全

デジタル化の加速に伴い、とくに重要性が増しているセキュリティ分野についても徹底した取り組みを行っている。製品開発の初期段階から部品に含まれる脆弱性リスクを最小限に抑える設計に重点を置く。ペネトレーションテストを実施するなど、製品開発段階から、部品調達、製造、出荷、保守に至るまで情報管理における厳格なセキュリティ基準を適用している。

また、昨今ではHCI(Hyper-Converged Infrastructure)を活用したハイブリッドIT、生成AIの普及によりGPU搭載型のAIソリューションのニーズも急激に増えてきた。伊達工場ではこれら次世代型サーバも製造しており、ますます需要が高まると予測している。具体的にはHCIはPRIMERGYをベースとした仮想化基盤「PRIMEFLEX for Nutanix」、AIソリューションは「Private AI Platform on PRIMERGY」が該当する。

仮想化基盤「PRIMEFLEX for Nutanix」は、NutanixソフトウェアをPRIMERGYに搭載したHCIで、唯一の国産プラットフォームです。ここでも伊達工場ならではのものづくりの真価が発揮される。業務システムを支える重要基盤となるPRIMEFLEX for NutanixにはOSをプリインストールしてお届けすることで簡単な導入を可能にした。お客様に届けた後、誰でもすぐに仮想化基盤として利用できるのが特徴だという。製造工場でキッティング作業を代行する設定サービスやお客さま環境のネットワークに接続するスタートアップサービスなどのサービスを用意し、Nutanixを初めてご利用になるお客様も安心して導入いただける。

また生成AIの業務利用への進展に伴い、セキュリティリスクの増大やコスト増加に対する懸念の声が聞かれます。特に、機密情報の漏洩リスクや、大規模な計算リソースを必要とする運用コストは、導入における大きな障壁となっている。これらの課題を克服し、生成AIの恩恵を最大限に享受するため、機密情報を安心・安全に扱えるオンプレミス環境での生成AI活用ニーズが高まっている。企業が先を争って取り組んでいるこの領域において、いかに安全かつ効率的に生成AIを活用するかが重要となる。Private AI Platform on PRIMERGYは、PRIMERGYにGPUを搭載し生成AI利用に必要なソフトウェアを構築して出荷。オンプレミスのプライベート環境で、データの機密性を維持しながら、スピーディに生成AIをフル活用できるのがポイントだ。

大規模データセンターを支える水冷技術

生成AIの急速な発展に伴い、サーバの発熱量が急増しています。従来の空冷方式では冷却が追いつかず、サーバの性能維持や安定稼働が困難になってきている。そこで、冷却効率が高く高密度実装に適した水冷サーバが注目されている。データセンターの省エネ化や設置スペース効率の向上にも貢献するため、今後ますます重要性が増すと予測される。

エフサステクノロジーズは、水冷サーバ製品の製造を2015年より開始し、約800台同時稼働可能な設備で大規模データセンターやHPCのニーズに対応。一般的な空冷サーバと同様の全数試験に加え、水冷サーバ特有の冷却機能については冷却水を充填した動作試験や水冷チューブの水漏れ検査を実施するなど、高品質な製品を提供している。「こうした高度な製品は伊達工場でさらに注力していく計画。これからも技術革新の追求、お客さまのニーズの正確な把握、期待を超える価値を提供していきたい」と前田氏は力強く結んだ。伊達工場では2025年から工場見学を本格化する計画だけに、ぜひ現場に足を運んで品質の高さと製品へのこだわりを確認してみてはいかがだろうか。

 

エフサステクノロジーズのx86サーバ「PRIMERGY」やHCI製品「Integrated System PRIMEFLEX」は、インテル社の第 5 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを2個まで搭載可能。最新の第 6 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを2個まで搭載可能なモデルも提供しています。仮想化基盤を始め、昨今のテレワークを実現する仮想デスクトップシステム、高性能が求められるデータベースやAIシステム等、お客様のデジタルイノベーションを支える幅広い用途に最適です。

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