地方自治体組織と地域社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて久しい。全国で様々な取り組みが進む中、その成果を最大化するためには今一度、DXの本質を確認することが重要だ。
DXの本質は「課題解決」にある。いきなりデジタルツールを導入してもうまくいかない。まずは現状の課題を正しく把握することが肝心だ。自治体業務や住民サービスの実態を確認し、課題認識をステークホルダー間で共有する。そうすれば、解決の糸口が見えてくるだろう。
課題解決の実践フェーズでは、立場が異なる様々な人との対話が不可欠だ。なぜなら、変革に当たっては従来と違うことに挑戦したり、これまでにないものをつくり上げたりする必要があるからだ。自治体業務の担当者、デジタル技術やデータ分析に詳しい人材などが互いの知見を持ち寄って議論する。初めは理解してもらえなくても、めげずに、くじけずに言語化し続けることで相互理解が生まれる。粘り強いコミュニケーションがDXの前提条件だ。
実際、先行自治体で生まれている新しい制度や住民サービスはいずれも、めげずに対話し続けた成果といえる。取り組みを通じて得られたやりがいや達成感が、次の取り組みへのモチベーションになっていく。
活動を拡大していく上では周囲を巻き込む力や積極性も必要だ。目的達成に必要な知見や技術を持つ人を誘って、対話の機会をつくる。庁内の別部門はもちろんのこと、民間企業や地域住民、あるいはほかの自治体もその対象になるだろう。
DXプロジェクトを持続させるためには投資効果を可視化することも必要である。とはいえ、前例のない取り組みの効果を正しく見据えることは難しい。カギを握るのは、キャッシュアウト削減などの比較的容易な課題にまず取り組み、成果を積み上げるアプローチだ。これが活動のPDCAサイクルを回す下地になるだろう。
そして、あらゆる取り組みのベースになるのが人材である。変革を率いるスペシャリスト人材や周囲を巻き込む人材に加えて、より重要なのは関心のない人をいかに振り向かせるかということである。
自治体職員は、デジタル技術に関するリテラシーだけでなく、世の中の広範な事柄に対する理解や知識を広く習得することが大切だ。また、民間企業や住民など、広く地域社会の人々のDXに対する意識を底上げすることも、長期的に見た変革の成功には不可欠といえる。そのような風土があればこそ、スペシャリスト人材の力はより大きく発揮されるようになるはずだ。