i-KOU!のステップ2では実際の移行を進めていく。SAP ECC 6.0からSAP S/4HANAへの移行には大きく3つの方法がある。SAP S/4HANAをゼロベースで構築するGreenfieldと、データを選択的に移行するとともに機能改修やアドオンの削減を図るBLUEFIELD™。そして、既存プロセスや既存データを生かしたBrownfieldと呼ぶコンバージョンだ。
i-KOU!が主な対象にしているのが、Brownfieldである。SAP S/4HANAのフル機能の活用はコンバージョン後にあらためて実施する必要があるが、ユーザー企業に適したクラウドサービスの活用などを通じて、ビジネスプロセスの最適化やユーザーの利便性向上を実現できる。また、費用と期間の両面で負担を抑えられる。
Brownfieldアプローチを用いて、SAP S/4HANA Cloud Private Editionに移行した場合の費用は、50本のアドオン改修を含み4800万円から。期間は5カ月からとなっている。
「お客様からは、ステップ1を含めて、他のインテグレータと比べて、費用、期間ともにリーズナブル、といったお声を頂戴しています」と西口氏は補足する。
タスク、役割分担が分かりやすく、周辺システムに対しても柔軟に対応している点が顧客に好評だという。とくに長期のSAPユーザーに対しては、利用している機能のみに絞り込むクレンジング作業をi-KOU!の中で実施することもある。これは時間の経過とともに使わなくなる機能が増えていくためで、実際に6000近い機能を約1/4の1400まで整理・削減した事例もあるという。機能の数を減らせればテスト工数も抑えられ、トータルとしてコスト低減と品質の向上を図れる(図3参照)。
図3 利用されている機能だけに絞り込む、クレンジング作業の進め方の事例。不要な機能を各フェーズの中で整理・削除していく。出典:i-KOU!リーフレット
また、SAPが提供するマネージド・クラウドを用いる「RISE with SAP」にも対応する。ユーザー企業はSAP S/4HANAのアップグレードやオペレーティングシステムなどの管理から解放されるとともに、RISE with SAPの一環として提供されるSAP Business Technology Platformなどを使ったアプリケーション開発やデータ活用に注力できる。
なお、移行プロジェクトの工程管理と日次情報の共有には、monday.com社が提供するビジネス管理ツール「monday.com」を採用しており、プロジェクト作業の標準化と合わせ、顧客にも進捗状況の可視化を可能にしている。
i-KOU!は、サービス立ち上げから4年以上が経過し、着実に実績を重ねてきた。その中から、2社の事例を紹介しよう。
最初の事例は、売上高1300億円の製造業系企業である。ITシステムの運用継続を重要課題と捉え、メインストリーム・メンテナンスが終了してしまうSAP ECC 6.0から脱却するために、i-KOU!を利用してSAP S/4HANAに移行した。アセスメント&PoC(ステップ1)、構想策定、導入と移行(ステップ2)を合わせたプロジェクト期間は1年である。
この企業は、SAP S/4HANAへの移行後に、BIツールであるSAP Analytics Cloudとデータ統合基盤のSAP Datasphereを導入した。SAP S/4HANAを含むさまざまなシステムのデータをSAP Datasphereで一元管理し、それらをSAP Analytics Cloudを用いて多軸分析や情報加工を行って、業務や経営の効率化を図る狙いだ。将来は各海外拠点への展開も視野に入れている。
「最初に基幹システムを整備したうえで、第2段階としてデータ活用の実現を目指してITシステムを増強した事例です。DXの進め方としては1つの理想と言えるかもしれません」と片田氏は説明する。なお、NTTデータGSLはSAPのさまざまなソリューションの実績も豊富であり、SAP Analytics CloudやSAP Datasphereの構築も合わせて担当した。
もう1つは、売上高2300億円の中堅商社の事例である。SAP ECC 6.0のインスタンスは1つだが、法人の単位となる会社コードが国内6社と海外2社の計8個で構成されているケースだ。国内と海外の現在の業務を継続できる形で、安全かつ確実にSAP S/4HANAに移行することが求められた。
NTTデータGSLは、従来のSAP ECC 6.0の機能の使用状況や周辺システムへの影響を精査したうえで、RISE with SAPによってマネージド・クラウド環境への移行を実施した。2023年4月にキックオフし、プロジェクトの後半からは移行後の運用に関わるメンバーも参画しながら、2024年8月に移行を完了した。
SAP ECC 6.0のメインストリーム・メンテナンスの終了に際しては、(1) SAP S/4HANAに移行する、(2) SAPと延長保守を契約して使い続ける(ただし2030年末まで)、(3) 第三者によるSAP ECC 6.0の保守に切り替える、(4) 他のERPシステムに切り替える、といった選択肢がある。
このうち(1)は、SAP S/4HANAの特徴であるインメモリ・データベースによる高性能化、データ分析やレポーティング機能、画面のUI設計を支援するSAP Fioriのサポート、クラウド対応、およびRISE with SAPの場合はマネージド・クラウドを利用できるなど、さまざまなメリットを享受できる。また、今回紹介した1つ目の企業事例のように、IT基盤の更新はDXの推進においても重要だ。
NTTデータGSLは、i-KOU!を通じてSAP S/4HANAへの移行を引き続き支援していくとともに、移行中の業務への影響をできるだけ抑えるために、移行プロセスの自動化や効率化にも取り組んでいる。
「2027年末までにはまだ時間があるように思われがちですが、事前検討などを含めプロジェクト全体に要する期間を考えればそれほど余裕は残されていません。NTTデータGSLは、中堅成長企業のお客様のニーズに寄り添いながら、安心・安全な進め方で成功への道筋をご提供していきます。SAP ECC 6.0やSAP S/4HANAに関するお困りごとがあればぜひご相談ください」と片田氏は結ぶ。
2027年問題で悩まないように、また、DXの足掛かりとして、早め早めの検討を進めていただきたい。
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