応募作品数 538作品

●住宅部門 201作品  ●一般建築部門 221作品
●テーマ部門 116作品(インテリア 32作品/リノベーション・コンバージョン 84作品)

 木質建築空間は、木を一生懸命に使ってデザインするという段階が終わり、多くの人が一般的に利用するようになっています。今回のコンテストでも500点を超える応募作が集まり、全般的に耐久性をはじめとする性能面への配慮が行き届いていました。私は本来、木質建築のデザインは自由で楽しい世界だと思っています。一歩先に足を進めるためには、より型にはまらない発想が必要だと感じています。

 その点、最優秀賞の「椎葉邸」は既存母屋の中央部分を残し、その周囲へ多方向に新築した下屋で支えている事例で、木造の自由さが最も表れていました。

 内藤賞に選んだ「五雨十雨」はかつて棚田だった土地に建てた1棟貸しの旅館で、その抜きん出た設計密度に木質建築の1つの在り方を感じました。

プロフィール/1950年生まれ。1976年:早稲田大学大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン・マドリッド)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年に内藤廣建築設計事務所を設立。2001〜2011年:東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻にて教授、同大学にて副学長を歴任。2011年から同大学名誉教授。主な建築作品に、海の博物館、牧野富太郎記念館、島根県芸術文化センター、富山県美術館など。

 木質建築に関する構造や防耐火の技術が整ってきました。鉄骨造や鉄筋コンクリート造を目標に「木造でもできる」と示すことから、「木造だからこそできること」を考えるフェーズに入ったといえます。例えば、消耗品のように木を使うという選択肢もあるでしょう。傷んだ木を交換しやすくした設計、あるいは経年変化を楽しむ設計などに次の可能性を感じています。

 最優秀賞は、自由に手を加えられる軸組構法の特徴を突き詰めた事例です。腰原賞に選んだ「おひるねハウス」は、式年遷宮のようにほぼ10年ごとに3回建て替えをし、使い終わった材料を燃やしていくという事例です。木を消耗品的に使いつつ、つくり直し続けるこのような取り組みから、木質建築の意義が派生していくことを期待します。

プロフィール/1968年生まれ。1992年:東京大学工学部建築学科卒業、2001年:東京大学大学院博士課程修了。構造設計集団「SDG」、東京大学大学院助手、生産技術研究所准教授を経て、2012年から東京大学生産技術研究所・教授、NPO法人 team Timberize理事。主な構造設計に、下馬の集合住宅、幕張メッセペデストリアンブリッジ、八幡浜市立日土小学校耐震改修、油津運河夢見橋など。

 審査する立場にいると「選ぶことの意味を示す必要がある」と考えがちですが、審査は各案の楽しさや自由さを評価する形で議論が進みました。社会では「できない」理由を求める人が増えていますが、「できる」と考えたものを実現するために存在するのが設計者です。既成概念の枠を外し、やりたいことを目指して設計に向き合う姿勢の大切さを改めて感じました。

 最優秀賞は、普通はあそこまで減築すれば母家まで壊すであろうところであえて踏みとどまり、新しい空間性を生み出した点が重要ではないかと思います。谷尻賞の「神岳テラス」は、真珠やカキを養殖するいかだの廃材をルーバーに利用しています。自然の中で長く使われることを意識した設計において、場所性に対する材料の選定が理にかなっていると評価しました。

プロフィール/1974 年生まれ。1994 年:本兼建築設計事務所、1999 年:HAL 建築工房を経て、2000 年:建築設計事務所suppose design office を設立。 2014 年:SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd.を設立 吉田愛と共同主宰。建築以外にも、社食堂、絶景不動産、tecture、DAICHI、yado、Mietellなど事業と建築をブリッジさせて活動している。

 皆様のご支援により、本コンテストは2003年の第1回に始まり、今回で第8回を迎えることができ、主催者といたしまして厚く御礼申し上げます。今回過去最多の538件の作品が集まり、入賞した作品はもちろんですが、残念ながら入賞を逃した作品も、デザインの独自性や創意工夫が際立つものが沢山ありました。最優秀賞は、優劣がつけにくい作品が多数ある中で、各審査員と共に厳正なる審査により選出しました。また主催者賞に選んだ「国際基督教大学 トロイヤー記念アーツ・サイエンス館」は、木材の自然な風合いを生かしながら、空間的な広がりが感じられる作品でした。

 今後も微力ながら、本コンテスト並びに当社の木材保護塗料が、木質建築物の発展・需要拡大において、お役に立てればと願っております。

プロフィール/1970年 愛知県生まれ。1993年:神戸大学経営学部卒。2001年:神戸大学大学院経営学研究科修了。1993年:大阪ガス株式会社 入社。2013年:企画部 制度企画チームマネジャー。2017年:大阪ガスケミカル株式会社 企画部部長。2021年:大阪ガス株式会社理事 ネットワークカンパニー経営企画部長。2022年:大阪ガスネットワーク株式会社 理事 取締役 経営企画部長。2024年:大阪ガス株式会社 執行役員、大阪ガスケミカル株式会社 代表取締役社長。

木質建築空間デザインコンテスト主催