チューブ外径0.35mmの極細径品を開発、
40Gbpsの高周波信号伝送も確認済み
ヨコオが新たに開発した「極細径スプリングコネクター」は、チューブの直径は0.35mm、ピンの直径はわずか0.2mmと、肉眼では詳細を確認できないほど小さい。同社の中で最も小さかったチューブ外径0.85mmの製品に比べ、半分以下のサイズを実現した。全高は3.7mm(高さはカスタマイズが可能)で、実装ピッチは0.9mmである。ピン当たりの電流容量は1Aで、ピンを複数使えばより大きな電流の給電にも使える。伝送可能な信号のビットレートは最高40Gbpsと高く、高周波コネクタとしても利用可能だ。
「2024年8月時点で、スプリングコネクターとしては世界最小径クラスであると考えています」と石橋氏は述べる。
開発の狙いは3つあったという。「まずはお客様に対する提案の幅を広げることです。より小型化を必要とされるお客様に対して、新たな選択肢を用意したいと考えました。次に、新しいアプリケーションの発掘。極細径にしたことで初めて実現できるような思いもよらない用途を、お客様と共に発想していきたい考えです。最後が社内の技術力の向上。極細の半導体検査用プローブで培ったノウハウなども活用しながら、民生用として新たな技術の確立を目指しました」(石橋氏)。


図2. ヨコオが開発した世界最小クラスの極細径スプリングコネクター
社内の要素技術を結集して
高精度加工やめっき技術を確立
極細径スプリングコネクターの開発では、様々な課題や苦労があったと開発を担当した杉浦健太氏は語る。「主に加工精度と公差の管理、チューブ内面の金めっき加工、そして精密組み立てに苦労しました」。
最初の加工精度と公差に関しては、外径0.35mmのチューブ内部で0.2mmのピンがスムースに動きながら、両者の電気的な接続が維持される必要があるため、極めて高精度なクリアランスが要求された。そこで、直径0.09mmという極細の半導体検査用プローブを扱っている部門の協力を得て、この課題を克服した。
チューブ内面の金めっき加工については、表面処理を専門とする同社の研究部門が持つ処理技術を活用した。「極細のチューブ内面のめっき加工は極めて難しく、研究部門とめっき工場の両方を持っている強みを生かして、内径0.2mmほどのチューブ内面にサブミクロン厚の金めっきを安定的に掛ける技術を確立しました」(杉浦氏)。
最後の組み立て作業については、チューブ先端をかしめる従来の加工方法が極細径には適用できないため、チューブにピンを圧入する方法を開発した。量産は海外のヨコオマレーシア工場で行う。
「スプリングコネクターは、構造自体は単純ですが、その開発と生産には高度な要素技術が必要です。しかも民生レベルのコストや生産性で実現しなければなりません」と杉浦氏は説明する。同社が持つ様々な要素技術やノウハウを結集して開発された製品が、今回の極細径スプリングコネクターと言えるだろう。
基板間接続の自動化にも最適
カスタマイズで顧客の要望に応える
ヨコオでは顧客のニーズに応じた多様なカスタマイズを請け負っている。チューブの高さ、ピンの押し込み深さ、樹脂ハウジングの形状や配置、メス側に相当するパッドと樹脂ハウジングの形状や配置などがカスタマイズの対象だ。また、防水仕様にも対応する。
新たに開発した極細径スプリングコネクターは、コネクタ全体を小型化したい場合やピン密度を高めたい場合に、選択肢の一つとして提案したい考えだ。「ウエアラブル機器の接続、センサーデバイスの接続、その他の超小型デジタル機器などが候補になるでしょう。また、基板間接続に応用した場合、ケーブルの挿入やコネクタの嵌合を必要としないので、組み立ての自動化が図れるメリットもあります」と杉浦氏は説明する。
最後に石橋氏は、「お客様の課題を解決する “実現力” こそが、ヨコオの絶対的な強みであると考えています。例えばデザインやサイズの問題で既存のコネクタが使えないというときに、ヨコオに相談すれば解決してくれる、何でもつないでくれる存在になりたい。それが我々の思いです」と述べる。
管の精密加工から出発し、2024年で創業102周年を超えたヨコオ。スプリングコネクター製品を通じて、顧客のアイデアを形にしていく。
