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M&A当該企業の文化や風土はそのままに、
共に成長を目指す

鴨林氏は、Arentのビジネス戦略の根幹には投資家の視点があると解説する。

「私は、米国の投資家であるウォーレン・バフェット氏の考え方に大きな影響を受けています。彼は投資先として、参入障壁が高く持続的な収益を上げられるプロダクトを持つ企業を選ぶべきだと主張しており、バフェット氏がポートフォリオに選ぶ株はバフェット銘柄と呼ばれています。当社がM&Aにおいて重視しているのもこうした投資家視点です」(鴨林氏)

鴨林氏がこうした思想に早くから共感していた背景には、独自のキャリアがある。京都大学卒業後、MUFGでファンドマネージャー、GREEでITエンジニアとして経験を積み、投資と開発の知見を身に付けてからArentを立ち上げた。鴨林氏は「建設業界でIT系のプロダクトを持っている企業はすべて注目しています」と言うが、その中から建設実務に深く根ざした建設業向け業務特化型SaaSに資するプロダクトを的確に目利きできるのは、鴨林氏が歩んできた経歴とも無関係ではないはずだ。

また、同社のM&Aにおけるポリシーもバフェット氏の考えを手本としている。その中でもとくに鴨林氏が重視しているのが、M&A後も当該企業の文化を壊さず育てていくことだという。

「当社がグループに迎えたいと思うのは、参入障壁の高い素晴らしいプロダクトを世に出すことに成功した企業なので、経営者が優秀であることに間違いはありません。そこに外部から口を出したり経営者を送り込んだりする必要はなく、M&A前の体制のままで引き続きお任せするという方針を取っています」(鴨林氏)

同社のプロダクト事業におけるAIブースト戦略やコンサルティング直営業戦略も、こうした考えの下で立案されていると鴨林氏は言う。

「AIの実装も直営業による販売効率化も当社はあくまでも支援するスタンスです。M&Aでグループに迎えた6社は、いずれも業務そのものはこれまでと何も変わりません。ただ、プロダクトにAIが実装されればエンドユーザーである建設業界からも歓迎されますし、直営業により販売が効率化されれば意識することなくリターンが増えますので、当社が後押しすることでより成長を促せると自負しています」(鴨林氏)

こうした各社の独立性を尊重した疎結合型M&Aを志向する一方、各プロダクトの連携については強化が図られている。建設業界で使われるプロダクトは、構造計算や工程管理といったフロント業務に向けたものもあれば、原価管理や維持管理などのようにバックヤードで動くものもある。同社のM&Aもこうした現場と経営の連携を視野に入れて進められている。

これまでのM&Aの推移を見ると、1月には構造計算ソフトや工程管理システムを提供する構造ソフト、3月にはプラント配管自動設計ツールに強みを持つPlantStream、7月には設備申請分野に特化した申請図作成CADソフト「申請くんfシリーズ」を展開するスタッグ、そして11月には原価管理ソフト「どっと原価シリーズ」を中心にバックオフィス領域のDXに高い実績を持つ建設ドットウェブ、さらには同月、勤怠・台帳・見積もり管理などバックオフィス全般をカバーする「使えるくらうどシリーズ」を展開するアサクラソフトを相次いでグループに迎え入れている。加えて12月には、原価管理ソフトを展開するレッツのグループ化を発表した(取得は2026年1月)。

鴨林氏が「フロント領域の情報をバックオフィス領域につなげられるようになったのはインパクトとして大きいと考えています」と言うように、単にニッチなニーズに応えるプロダクトをそろえるだけでなく、それらをどう連携させればより効果的なのかを重視しているのがArentの特徴であり、建設実務に特化した業務ソフトを組み合わせて強力なビジネスモデルを築くこの事業創出力こそが同社の強みだとも言えよう。

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建設業界の建築領域と土木領域の業務を整理し、それぞれに対応するニッチなプロダクト群をそろえるのがArentの戦略。原価管理系プロダクトをグループ化したことでバックオフィス業務との連携も強化されている
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プロダクトの価値を
何倍にも拡張できる体制づくりを推進

わずか1年足らずの間にM&Aによって6社をグループに迎え、建設業向けの業務特化型のプロダクト事業を着々と進めるArent。同社が目指しているのは属人性からの脱却だと鴨林氏は語る。

「重要なのは再現性です。プロダクト事業の3つの戦略をやり切ることができれば、当社グループにジョインした瞬間にプロダクト価値が何倍にもなるという状況がつくれるようになります。グループに入ってもらった企業の成長を促すには営業効率を高められるような規模感も重要なので、M&Aで仲間を増やしていく方針は今後も継続します」(鴨林氏)

DXにしろAIにしろ、大手が先行する中で中小企業も恩恵を受けられるようになり、建設業界全体の生産性が上がることに貢献したいと言う鴨林氏。まさにそれが同社のミッションである暗黙知の民主化に直結する。

「当社は、AIを実装できるエンジニアを社内に抱えているため、使いやすいプロダクト同士を連携させ、コンサルティングも含めた直営業でそれを届けることができます。また、広報や展示会への出展も、専任チームを持てない企業が多く、手が回らない領域です。当社グループとして行えば高い効果が見込めます。建設業界で独自のプロダクトを持つ多くの企業様にArentグループに入りたいと思ってもらえるようになることを目指しています」(鴨林氏)

M&Aの目的は一般的に、自社の規模拡大や他業種進出、継承の手段などがイメージされがちだが、業界に特化したニッチなニーズに応える手段としてM&Aを活用しているという点にArentの独自性がある。1年足らずで6社のM&Aというスピード感で成長を続け、建設業界になくてはならない存在となりつつあるArentの今後に注目したい。

※本記事中の数値・企業情報は、すべて2025年12月5日時点の内容です。

株式会社Arent
東京オフィス(本社)
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