2025年はAIを実践的に使っていく年となる

マイクロソフト コーポレーション
Asia AI Global Blackbelt
Technology Specialist
大森 彩子氏

「必要なタスクをAIが推測 多様なエージェントが自立的に業務をサポート! Azure AIで構築するAIエージェントによる小売業の業務サポート」というショートセッションを行ったマイクロソフトの大森彩子氏は、「これまでのAIはChatGPTのようにプロンプトを入力して結果を得るという利用方法が主流となっていましたが、2025年からはより業務に即した専門性の高いAIエージェントを作って業務を支援する動きが加速しています」と話す。

マイクロソフト コーポレーション
Asia AI Global Blackbelt
Technology Specialist
大森 彩子氏

例えばコールセンターでの会話を分析するAIエージェントを作成すれば、文字起こしや話者の識別、会話の中で提示した解決策の要約、会話に出てくる個人情報の削除などの個々のタスクをまとめてAIエージェントに任せられる。

他にも最近のトレンドなどの情報をネットから収集して盛り込んだブログ記事を作成し、自社製品のプロモーションを行うAIエージェントを作ることも可能だ。製品分析や年齢別の利用者分析、利用者の声からの店舗改善案なども同様に簡単に行える。

今後のAIの使い方のキーワードは「agentic worldの幕開け」だと話を続ける大森氏は、専門的な知識を持ったAIエージェントが自律的にさまざまな業務を助けてくれるようになると説明する。これまでは、タスク単体で命令を出してコンテンツ生成や情報を得ていたが、今後はAI自体が与えられた課題に対して何をすべきか、どのようなタスクに分割して実行するべきかを考えて実行することが可能になる。タスクに合わせて複数の専門家(AIエージェント)に作業を依頼し、その結果を次のAIエージェントに渡してゆくといった実行管理をもAIエージェントが担うことで、より複雑なタスク、課題が実行可能になる。

例えば各部門でAIエージェントと、依頼の受付となるエージェントプールを作っておけば、依頼を受けたエージェントプール(を管理するAIエージェント)がどの部門にいかなる依頼を行えばよいかを考え、各部門のAIエージェントに情報を渡し、実行を依頼するようにすることも可能だ。例えば、新入社員を受け入れる時に必要な作業を各部門に振り分けて各部門のAIエージェントが自動的に作業を行う業務、新製品のプレスリリースの原稿下書きを行って法務チェックを行うといった業務も自動化できる。

2025年は「特化型AI元年」ともいえる。より具体的な活用シーンが業界ごとに大きく増加しそうだ

「2025年からはAIエージェントと協力しながら人の業務を進めていく世界がやってきます」と話す大森氏。AIエージェントには自律性があり、目標に向かってタスクを考えることができ、複数のAIエージェントが連携しながらタスクを実行できることが特徴だと改めて整理した。

4つのデモで流通・小売業界のAI活用を解説

ブース内ではデモの披露も行われた。「Retail Ready」をベースとして、マイクロソフトのテクノロジーがAIと融合し、いかに流通・小売業界の課題を解決するか、具体例を示して実演。多くの来場者が足を止めていた。各デモの内容は、マイクロソフトの流通・小売業界のビジネス変革支援の4つの柱、「購買ジャーニーの変革」「持続可能なアジャイルサプライチェーンの創出」「未来型の働き方の支援」「データの潜在能力の活用」に結び付いていくことになる。それぞれ見てみよう。

「マーケティングや販促のお仕事を Copilot アシスタントが一括サポート(Microsoft 365 Copilot)」というデモでは、多くの Office 製品からAIを呼び出して使用できることが示された。例えば Teams 会議の議事録の作成・配布、アクションアイテムの整理などをAIに任せられる。

他にも例えばメーカーが新商品を考えるヒントとして、Excel に書かれたアンケートをAIで分析し、複数のグループに分けて代表的な意見を抽出したり、Word でAIにレポートを書かせたり、PowerPoint でAIにプレゼンテーション資料を作成させられることが示された。「データの潜在能力の活用」を実現し、新たなビジネスチャンスにつなげられる。

「Copilot エージェントが様々な店舗業務の負荷を軽減 ひとつの画面で!(Microsoft Copilot Studio)」というデモでは、さまざまな業務改善ソリューションが提示された。Copilot Studio で作ったAIエージェントと Teams を連携させると、従業員はPCでもモバイルデバイスでも1つの画面からAIを使用可能に。在庫状況、注文ステータス、問い合わせ、トラブル対応などの業務をAIが支援できるようになる。これにより専門のシステムや専門端末を使う必要がなくなる。

在庫がなくなったときには商品番号を入れるだけで、他店舗の在庫状況を調べられる。顧客から購入商品に関する問い合わせが来たときにも、注文番号を入力するだけで注文ステータスを確認して対応できる。従業員が分からないことは自然言語で質問すれば、適切なガイダンスを得られる。さらに、トラブル対応やタスク管理も自然言語で入力すれば、AIから適切な回答を得ることが可能だ。入力や登録の手間を削減でき、瞬時に業務に必要な情報を得られることで、少人数でも店舗業務を行える。さらに、適切な商品を適切な場所に適切なタイミングで届けられることで「持続可能なアジャイルサプライチェーンの創出」をもたらしうる。

「顧客体験も従業員体験も生成AIを活用し、コンタクトセンターとナレッジ管理の両面から向上!(Microsoft Dynamics 365)」というデモでは、顧客からの問い合わせを受けるコンタクトセンターで生成AIを活用する方法が示された。問い合わせをチャットボットで受けると、データベースからナレッジを検索し、顧客が望む情報を提供できる。チャットボットに生成AIを使うことで、最適な回答をAI側で判断できる。顧客は自然言語で問い合わせを行うことが可能だ。

チャットボットで問題が解決しない場合は有人のオペレーターが対応することになるが、Dynamics 365 では顧客とのチャット画面の隣に顧客の属性情報を表示させて一元的に見ることができる。また、チャットボットから有人のオペレーターに切り替わった際にはそれまでのチャットボットの会話をAIが要約して表示し、問題を瞬時に把握することが可能だ。さらに感情分析によって、顧客のネガポジの感情も把握できる。これらによって顧客の満足度を向上させられる。

チャットは多言語に対応。生成AIがリアルタイムで翻訳する。問い合わせの内容は、AIエージェントが新しいナレッジとして蓄積。ナレッジの内容変更や改善もAIエージェントが提案してくれる。こうして実現するのは「購買ジャーニーの変革」だ。AIによって高度にパーソナライズされたエクスペリエンスの提供が可能になる。

「必要なタスクをAIが推測 多様なエージェントが自律的に業務をサポート!(Microsoft Azure AI)」というデモでは、専門的なAIエージェントに自動的に作業を任せられることが示された。広報、製品、マーケティング各部門に専用のAIエージェントを作り、それぞれ専門的な回答を返すように構築できる。フロントには受付用のAIエージェントを置き、質問内容によってどの部門のAIエージェントに作業を任せるか、自律的にプランニングして実行させる。

例えば新入社員の受け入れ時には、PCの準備やアカウントの発行、歓迎メールの作成やオリエンテーションの開催など、さまざまな業務が発生する。新入社員の入社をフロントのAIエージェントに伝えるだけで、調達部門のAIエージェントがPCを調達申請を行い、システム部門のAIエージェントがメールアドレスや各種アカウントの発行を行い、人事部門のAIエージェントがオリエンテーションのスケジューリングを行うなどのワークフローを自動で実行できる。流通・小売業界の「未来型の働き方の支援」をAIによって実現し、現場の潜在能力を解放しうる。

ヴィンクス、富士ソフトとの協業でAIエージェントを増やしていく

ヴィンクスのブースにはマイクロソフトのアジア太平洋地域担当ゼネラルマネージャー、Damien Veilleroy氏のビデオメッセージも流れていた

富士ソフト
ソリューション事業本部 MS事業部 副事業部長
高野 祐一氏

ここで少しブースを移動してみよう。少し離れた位置にあるヴィンクスのブースでは、マイクロソフトとヴィンクスと富士ソフトが協業して流通・小売業界に提供するクラウドソリューションの紹介が行われていた。

ヴィンクスのブースにはマイクロソフトのアジア太平洋地域担当ゼネラルマネージャー、Damien Veilleroy氏のビデオメッセージも流れていた

富士ソフト
ソリューション事業本部 MS事業部 副事業部長
高野 祐一氏

「このソリューションは、AIエージェントを流通・小売業界に展開していこうとする取り組みです」と話す富士ソフト ソリューション事業本部の高野祐一氏は、ヴィンクスが持つPOSシステム「ANY-CUBE」、MD基幹システム「MDware」、ポイントシステム「Hybrid Satisfa」などのソリューションが持つデータを富士ソフトとヴィンクスが開発した Azure 上のさまざまなAIエージェントと連結させ、利用者は Copilot を通じて必要な情報を引き出せる仕組みであることを明かしてくれた。

例えば、Copilot からAIエージェントを動かしてANY-CUBEから各店舗の売り上げを表にする。その表をグラフ化したり、売上データのインサイトを PowerPoint で示すことなどが簡単にできるようになる。「我々は、マイクロソフトと協力して流通・小売に最適なAIエージェントをどんどん出していき、お客様の課題を解決していきたいと思います」と高野氏は話している。

2025年、流通・小売業界の課題解決にAIを

マイクロソフト
ワールドワイドリテール&コンシューマグッズ
日本担当インダストリーアドバイザー
藤井 創一氏

2025年3月6日にはリテールテックJAPANに合わせて、東京ビッグサイトの会議棟で「スマーター・リテイリング・フォーラム 2025」も開催された。マイクロソフトの藤井創一氏が登壇して「NRF Retail's Big Show 2025」の振り返りや流通・小売業界における最新の取り組み事例の紹介を行ったほか、各社事例セッションが行われるなど、AIと共創する新時代の流通・小売イノベーションを考える貴重なイベントとなっていた。

マイクロソフト
ワールドワイドリテール&コンシューマグッズ
日本担当インダストリーアドバイザー
藤井 創一氏

「Retail Ready」の提案は、2025年は流通・小売業界が業務にAIを活用する時期に来ていることを示している。そのためにマイクロソフトでは、Copilot、Copilot Studio、生成AIやAIエージェントを活用した Dynamics 365、Azure AI などのソリューションを示して、流通・小売業界でどのようにAIを活用していくのかを見せてきた。各ソリューションを適材適所で利用して、AIにいかに業務を任せていくかが、業界の課題を解決する鍵となるのは間違いないだろう。

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