企業成長に欠かせないEC戦略 - どうする? EC事業のDX 求められるシステムの拡張性と柔軟性

消費スタイルの変化とともに、EC市場は右肩上がりで伸長している。円安や人口減少など、複雑な要因が絡み合う中で、成長著しいECをいかに活用していくかという戦略が、企業の事業成長のカギを握る。そんな中、多くのEC事業者が悩んでいるのがDXの進め方だ。既存の販売の仕組みとECをシームレスに連携させるには、デジタル技術をどのように活用すればいいのか。日本商業学会会長であり、椙山女学園大学 現代マネジメント学部の南 知惠子教授と、世界中の事業者を支えるECプラットフォーム「Shopify」を展開する日本法人、Shopify Japanの岡村純一氏に聞いた。

アフターコロナも成長が続く
国内EC市場

──今、EC市場はかつてないほどの盛り上がりを見せていると聞いています。現在の市場の概況はどのような感じでしょうか。

南氏 コロナ禍の“巣ごもり消費”で、BtoCのECが大きく伸びたのはご存じの通りです。アフターコロナになって勢いが衰えるのではないかという見方もありましたが、経済産業省の最新の市場調査報告によると、令和5年の国内におけるBtoC ECの市場規模は前年比9.2%増の24.8兆円と、むしろ右肩上がりで伸びています。

 BtoB ECの市場規模も同10.7%増の465兆円と、かなりの勢いで成長していますね。

BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)

BtoC-EC市場規模の経年推移
出所)経済産業省『令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書』令和6年9月、図表1-5(https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001-1.pdf)を加工して作成
令和5年の国内BtoC ECの市場規模は、前年比9.2%増の24.8兆円。アフターコロナも右肩上がりの成長が続く。物販のみならず、チケット販売などのサービス分野や、ゲームなどデジタルコンテンツの販売も伸びている

岡村氏 「家にいても買い物ができる」という便利な生活を一度体験してしまうと、なかなか元には戻らないですよね。AIなどの技術の進歩でECはますます便利になっていくので、市場規模は今後も拡大し続けるでしょう。シチュエーションや気分に応じてオンラインとオフラインを使い分ける時代になってきているのではないでしょうか。

──ECの定着によって、消費スタイルにも変化が表れているということですね。

南氏
日本商業学会 会長
椙山女学園大学
現代マネジメント学部 教授
南 知惠子

南氏 特定のものを買いたいという能動的な消費だけでなく、たまたまSNSを見ていたら面白い商品やサービスが紹介されていたので、そのままECサイトに遷移して買ってみるといった消費行動が見られるようになってきました。

 消費者にも「買い物をする」という意識はなく、何となくスマートフォンを眺めていたり、SNSでコミュニケーションを交わしたりする延長線上に、たまたま気になるものがあったので「買ってみようか」という感覚ですね。

──岡村さんが指摘された「オンラインとオフラインの使い分け」というのも、ECの普及がもたらした消費スタイルの大きな変化の一つだと思います。事業者側から見ると、両方のチャネルをどうやってつなぐのかが課題となりそうですね。

岡村氏 従来のオムニチャネルのように、オンラインの購入体験とPOSで管理されている実店舗(オフライン)の購入体験をつなげるだけでなく、それぞれのデータの一元化や、同一のプラットフォームによる一元管理など、より統合(ユニファイド)された仕組みを取り入れることで、シームレスな購入体験の提供や、それを可能にするオペレーション体制の構築が求められているのです。Shopifyでも「ユニファイドコマース(Unified Commerce)」の概念があり、北米では既にプロダクト面でもその実現が進んでいます。

──これまでのように、オンラインとオフラインがバラバラの状態でオペレーションを行っていては、より良い顧客体験は提供できないということですね。

岡村氏 どちらのチャネルからであろうと、常にパーソナライズされた体験が、迅速かつ低コストで顧客に提供できるような仕組みが必要です。