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Jim Coleman レノボ Solutions and Services Group/AI Offerings ディレクター
AIはいま、根本的な転換点を迎えています。これまでAI活用に苦戦してきた企業は、より能動的なアプローチであるAIエージェントの活用に取り組み始めています。これまで主流だったのは、ユーザーがプロンプトを与えることを前提とした「反応型」の対話モデルでした。しかし、人の介入を最小限に抑えながら複雑なタスクを自発的に実行するAIエージェントが登場しました。 AIエージェントは従来のAIシステムとは異なり、働く人を置き換えるのではなく、拡張することにその価値を最大化する本質があります。
AIエージェントは、行動を計画して順序を決め、複数のリソースと連携しながら自律的に目的を達成するように設計されています。例えば、ユーザーの嗜好、財務上の制約、優先順位を学習できる購買エージェントは、それらの情報を基に購入交渉を自律的に進めることが可能です。このようなシナリオはすでに現実のものとなりつつあり、AIエージェントの進化が企業向けAIと消費者向けAIの捉え方を変えつつあります。
しかし、AIエージェントを実用的かつ安全に活用するためには、AIエージェントを支えるワークフローがリアルタイムの情報に基づいている必要があります。そのためには、デバイス、エッジ、クラウドへ戦略的にワークロードを分散し、AI人材が管理する「Hybrid AIアーキテクチャ」が不可欠です。
AIエージェントは、状況や文脈といった「コンテキスト」を理解・活用することで、その価値を最大限に発揮します。しかし、そのコンテキストには個人情報をはじめ、企業にとって機密性の高い情報が含まれる場合が多く、クラウドにすべてを預けるのはリスクが伴います。一方で、Hybrid AIは、データ処理と意思決定を信頼できるローカルデバイス、またはセキュアな環境の中で行います。AIは「データが存在する場所」で動作するため、情報漏えいの可能性を最小限に抑え、データ主権に関する規制にも対応しやすくなります。
個人の嗜好などへのカスタム化(パーソナライゼーション)にも注意する必要があります。これはデータのプライバシーの課題とも密接に関係しています。前述の購買エージェントでは、ユーザーの嗜好や制約条件が重要な判断材料となりますが、こうした情報には個人を特定し得る情報が含まれることが少なくありません。こうしたコンテキストをローカル環境で管理・活用することが、ユーザーのプライバシーを守ることにつながります。
AIエージェントでは、ネットワークを介してデータをやり取りする時間的余裕がなく、リアルタイム処理が必要な場合も少なくありません。取り引きの交渉、センサーデータへの対応、刻々と変化するワークフロー管理などでは、即応性が求められます。遅延や処理の中断が発生すれば、ビジネスや運用に大きな影響を及ぼしかねません。Hybrid AIは低遅延のオンデバイス処理を可能にします。
Hybrid AIは、常時クラウドで処理することによるコスト増やリソース消費を抑える効果もあります。日常的で比較的軽い処理はローカルで処理し、データ取得や計算のみをクラウドに割り当てることで、効率的なワークロード構築できます。
また、Hybrid AIはタスクの部分実行を可能にします。例えばオフラインや通信環境が不安定な状況で、クラウドへのアクセスが一時的に失われた場合にも、AIエージェントができる範囲の処理を継続できます。ローカルの知的資産とクラウドのスケーラビリティを組み合わせることで、AIエージェントを支える実用的で信頼性の高い基盤となります。
AIエージェントが登場する以前から、企業はAI投資における明確なROI(投資利益率)を示すことに課題を抱えてきました。確かにAIエージェントは万能薬ではありませんが、断片的なタスクではなく、業務全体を俯瞰したワークフローに適用することで、説得力をもたせることが可能です。AIエージェントにエンドツーエンドの運用を担わせることで、成果を可視化しやすくなり、インパクトのある価値を生み出します。
とはいえ、経営層を納得させるROIを得るには、いくつかの障壁を乗り越える必要があります。
1点目は予測可能性と倫理性です。AIエージェントにおいて最も重要な要素であり、ガバナンスプラットフォームや「Constitutional AI(憲法型AI)」のような技術の採用が大きく伸びています。これらは、AIの振る舞いを人間の価値観と整合させ、適切な監督を可能にするための仕組みです。
第2に複雑さの解消と信頼性の向上も求められます。AIエージェントで複数ステップのタスクを管理することは非常に複雑です。しかし、モデル学習の進歩とベストプラクティスの登場により、性能はより安定してきています。こうした開発フレームワークによって、予測可能で堅牢なAIエージェントを構築しやすくなり、導入や運用のハードルも下がります。
3点目はツールおよびAPIとの安全な統合です。AIエージェントは多様なデータソースやアプリケーションにアクセスする必要があります。現在、業界全体で安全な相互連携を実現するためのプロトコルや標準化が進んでおり、加えて機密コンピューティング技術により、実行時における機微なデータの保護をさらに強化しています。
ツールは安全であるだけでなく、信頼性も必要です。AIエージェントは外部ソフトウェアとのリアルタイムな連携を前提としているため、安定した動作が不可欠となります。基盤モデルの高度な関数呼び出し機能や相互運用性を高めるフレームワークの進化により、統合はより簡素化されました。例えば、Model Context Protocol(MCP)は安全で複数ステップのワークフローを支援し、AIエージェントの効果的な運用を可能にします。
AIエージェントは、目標が動的で業務が分散しており、かつ多くのリソースを必要とする領域において真価を発揮し、チームのリソースだけでは対応しきれない処理を実行できます。
サプライチェーンの管理にAIエージェントを活用することで、リアルタイムの在庫・出荷データを分析して物流の混乱を未然に防ぐことが可能です。AIエージェントはエッジデバイス上で動作しつつ、クラウド上のシステムと連携し、ルーティング戦略を随時更新することで、データを常に最新かつ安全に保ちます。
また、産業用ワークステーションに組み込むことでセンサーデータの監視、保守プロトコルの起動、部品の発注の調整などを実施。運用レジリエンスを高め、コストの大きいダウンタイムを削減します。
さらに、オンデバイスのAIエージェントを搭載したAI PCを用いることで、個人のアイデンティティを損なったり、機微データをリスクに晒したりすることなく、個人のワークフローを管理し、会議の要約やコンテンツ草案の作成、エンタープライズシステムとの連携などを、実現できます。
ただし、AIエージェントの有効性を最大化するには、人の知性や判断を組み合わせることが不可欠です。上記のユースケースに共通する重要な軸は、AI人材による適切な監督です。AIエージェントが活用するデータが正確で、信頼でき、整理された状態であることを人が担保することで、初めて安全かつ効果的に機能するのです。
既にAIエージェントを導入し、それを適切に管理・活用するためのスキルを有する人材の育成に投資している企業は、競合に対して優位に立つ基盤を築いていると言えるでしょう。AIエージェントは、将来「AIツイン(自分のAIクローン)」への発展も想定され、未来にとって象徴的な存在ですが、そこにはHybrid AIが必要です。これは、現実世界でも動作できる、真に自律的で有用かつ安全なAIシステムを実現するための第一歩です。
AIエージェントは、企業情報システムの進化形であり、システムを「受動的に指示を待つ存在」から「人と協調しながら自ら考え、先回りして行動する能動的なパートナー」に変えるものです。いまAIエージェントに取り組み、適切なHybrid AI基盤と人材のスキル向上に投資する組織こそが、近未来を牽引することになるでしょう。
AIエージェントの安全かつ効果的な設計・導入・運用を支援するレノボの取り組みについては、「Lenovo Agentic AI」をぜひご覧ください。レノボはAIエージェントを現実のビジネス価値へ変えていく支援を提供しています。
参考リンク
Hybrid AI:https://www.lenovo.com/us/en/servers-storage/solutions/ai/
Lenovo Agentic AI:https://www.lenovo.com/us/en/solutions/ai/agentic-ai/
Constitutional AI(参考:Anthropic):
https://www-cdn.anthropic.com/7512771452629584566b6303311496c262da1006/Anthropic_ConstitutionalAI_v2.pdf
