製造業を熟知する強みを生かし
「SuccessChain」を展開
円安による原材料・部品コストの高騰や為替変動リスク、地政学リスクの高まりによる調達先の多角化――。製造業を取り巻く環境が厳しさを増している。足元に目を向ければ、ブラックボックス化したレガシーシステムがデジタル化の大きな足かせとなっている。慢性的な人材不足は製造業も例外ではない。
そうした中、競争力を維持・向上させるにはどうすべきか。優先的に取り組むべきテーマがサプライチェーン改革だ。データを活用したサプライチェーンマネジメントを実現することで、環境変化にも柔軟・迅速に対応できるようになる。これを支援するため、SCSKはデジタルサプライチェーン(以下、DSC)事業を展開している。「基幹システムと周辺システムを包括的につなぎ、サプライチェーン全体のプロセスをデジタルによって見える化します。そこに蓄積されたデータを有効活用することで、データドリブン経営を支援します」とSCSKの山田 栄氏は説明する。

SCSKは約1万社に及ぶ幅広い業界の企業にITサービスを提供している。特に製造業の比率は高く、固有の業務を熟知し、深い理解力とノウハウに基づく課題解決力を有する。DSC事業はこの強みを生かし、サプライチェーンの各工程をカバーする多くのソリューションを提供している。
AIとデータ活用支援をさらに強化するため、2025年4月には新たに「SuccessChain」というサービスブランドを立ち上げた。「製造業は各領域に存在するシステムにデータが分散されている企業が多い。そのためデータ活用が進まず、業務改革につながっていないのです。SuccessChainはそのデータを統合し、業務改革を進めるための仕組みです」と山田氏は語る。その第一弾となるサービスが「SuccessChain for DataPlatform」である(図1)。
図1 SuccessChain for DataPlatformのカバーレッジ
製造業の各工程、各システムに分散しているデータを素早く集約する業務データプラットフォームだ。サプライチェーン上に潜む重要な気付きや隠れた業務課題を発見し、企業の業務改革に寄与する
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ベースとなる統合データ基盤にはインフォマティカのプラットフォームを採用した。これがデータハブとなり、多様なシステムやデータと連携する。運用保守性も高く、データガバナンスも強化できる。
AIおよびデータサイエンスに強みのあるJDSCとも資本業務提携した。SCSKの豊富なシステム構築実績と多様なサービスに、JDSCのAIおよびデータサイエンス技術と事業開発力を組み合わせ、相乗効果を高めるためだ。「分断のない一貫したサービスを提供し、サプライチェーンマネジメントの高度化を支援します」と山田氏は述べる。
4つのサービスで
サプライチェーンのデジタル化を支援
分散するデータを横断的に活用することで、これまで見えなかった課題を発見し、新たな気付きや価値創出が可能になる。これを実現するため、SuccessChain for DataPlatformは4つのサービスを提供する(図2)。
図2 SuccessChain for DataPlatform 4つのサービス
業務課題の明確化から基盤構築、データの連携・可視化・分析、さらにサービス導入後のデータ活用の定着化や業務改革まで伴走支援し、データ活用をトータルサポートする
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1つ目は「コンサルティングサービス」だ。異なる部門や工程間でシステムが多種存在しているため、現在のデータ活用状況や、各部門がデータ活用にどんな課題を持っているのか分からないというケースが多い。「コンサルティングサービスはDX診断シートやヒアリングシートを利用してデータ活用レベルを診断し、全社的な課題を特定します」と山田氏は話す。
2つ目が「クイック基盤サービス」だ。「全社共通のデータ活用基盤を整備するには、多くの労力とコストが必要です。そこで、クイック基盤サービスでは、基盤構築をテンプレート化し、SCSKの豊富な実績に基づく安心・安全な基盤を短期間で構築します。さらに、クラウドサービスを限定せず、マルチクラウドや各クラウド上での構築にも柔軟に対応します」(山田氏)。
3つ目が「クイックコンテンツサービス」だ。膨大なデータからインサイトを得るための手順ややり方が分からないと、思うようにデータ活用が進まない。「クイックコンテンツサービスは業務課題別のシナリオやレポートをテンプレート化したコンテンツを利用し、“クイックに”データの可視化・分析が可能です」と山田氏は説明する。
そして4つ目が「伴走型運用・運営サービス」である。データ活用基盤を構築し、各組織での活用を促進しても思うようにデータ活用が定着化しないことがある。伴走型運用・運営サービスはシステム導入で終わらず、定着化や業務改革を伴走支援する。
4つのサービスはセットではない。課題・検討状況・ニーズに合わせて必要なサービスを選択して利用することが可能だ。
AI×データで
先手を打つビジネス展開も可能
4つの中でもデータ活用の肝になるのが、クイックコンテンツサービスである。「在庫適正化」「最適サプライチェーン構築」「製品の付加価値向上」「品質向上」など典型的な製造業課題に対する可視化・分析コンテンツを用意している。
可視化・分析の手順を定義したシナリオや可視化画面に顧客データを適用することで、短期間での現状把握が可能になる。特定のツールやプロダクトに依存せず、汎用的なメソドロジーとデータモデルに基づいているため、既存のDWHやBIツールを最大限に活用できる。「現在、利用中の環境への柔軟な適用が可能です」と山田氏は強みを述べる。
付加価値を高めるAIオプションを使えば、より深いインサイトが得られる。「例えば、過去の販売実績や外部要因を基に将来の需要を高精度に予測する。あるいは設備や人員の稼働データを基に最適な生産計画を提案する。そんなことも可能です」(山田氏)。
通常、AI分析基盤の構築には、データ整備やモデル構築などを含めると長期間を要す。しかし、SuccessChain for DataPlatformなら、データ整備は不要で、モデルも調整のみで利用可能なため、AI分析基盤を短期間で構築できる。さらに、山田氏は次のように強調する。
「短期間でAI活用を始められるのです。最初はスモールスタートで導入し、業務に合わせて段階的に精度や使い勝手を高めていけるのも大きな特長です」
ある企業では、製品の運転記録とカスタマーサポートの不具合情報を連携させることで、不具合箇所の事前推定を実現した。これにより、顧客から不具合報告を受けた段階で故障箇所を推定し、必要な部品を事前に準備した上でサポートに向かうことが可能になった。結果として、修理対応の迅速化とサポート品質の向上を実現している。
また、大手自動車メーカーは車種や部品との構造的な関係をデータで割り出し、故障率予測を実現。市場不具合の予兆を早期に捉えることが可能になった。
ほかにも商品の共同配送を行っているメーカー2社は、過去の出荷データと在庫の数値を企業間・拠点間で共有。需要予測で必要な出荷量を計算することで、欠品を避けながら輸送量の平準化を実現した。
製造業のシステムは多岐にわたるため、データの散在は宿命とも言える課題だ。「しかし、データを集める“箱”だけをつくってもデータ活用は定着しません。課題を特定し、その課題を起点として必要なデータを特定することが効率的なデータ活用につながります」と山田氏は主張する。
SCSKは分断されたデータを統合し可視化・分析するSuccessChainの提供を通じ、サプライチェーン上に潜む重要な気付きや隠れた業務課題を発見し、製造業の業務改革を支援していく構えだ。








